ビリー・ビルグリムは時の流れを行ったり来たりし、ランダムに自分の人生のある時を体験し続ける不思議な男だった。
カート・ヴォネガットが自ら体験したドレスデン爆撃を絡めて贈る不条理SF。
ドレスデン爆撃のことを軸に書くのではなく、トラルファマドール星人的な感覚がストーリーの軸となっている。確かに永遠に人生のある瞬間を体験し続け、自分や世界にこれから何が起こるか分かっていれば、こういう冷めた感覚になってしまうのは理解できる。だが、この感覚は私達一般人から見れば狂人でしかない。
ここで疑問がわく。不条理なこの世界ではこの冷めた感覚を持った狂人こそが実は正しいのではないか。不条理な死がそこらしかにあることは”そういうものだ”の一言で片づけるのが正解かもしれない。だが、私はトラルファマドール星人的な感覚機能を持っていない。狂人にはなれない。であるならば私はどうするべきか、とヴォネガットは投げかけているように思えた。
過去のヴォネガット作品の登場人物が多数出演するヴォネガットの集大成とも言える一冊。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学(小説)
- 感想投稿日 : 2013年10月20日
- 読了日 : 2013年10月15日
- 本棚登録日 : 2013年10月9日
みんなの感想をみる