日本人の美意識 (中公文庫 キ 3-10)

  • 中央公論新社 (1999年4月18日発売)
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日本文化についての小論やエッセイが9篇収載されている。もともと古本屋で興味を惹かれたのは「一休頂相」だったが、読んでいくうちにその他の小論も面白いことに気づいた。タイトルにもなっている「日本人の美意識」「アーサー・ウェイレー」などなど。9篇の中で一番ページ数のある「日清戦争と日本文化」は読みきっていないが、読了扱い。

「一休頂相」
(昔の)日本画は花鳥風月の描写には写実的なものも多いのに、人物の描写は源氏絵巻風や浮世絵風の記号的なものが多い。ただこれにも例外があって、戦国武将と禅僧の肖像は、記号ではなくて写実的に描写されている。この禅僧の肖像のことを頂相(ちんぞう)というが、なぜ頂相はその他の人物画と違って写実的に描かれるのか、ここ数年不思議に思っていた。ここで取り上げられている一休の頂相は、忌野清志郎そっくりのあれだが、数年来の謎へのくヒントをもらえたのが嬉しかった。

「日本人の美意識」
これも、何故日本人(我々)は修復され造像当時の姿に近いものより古びた仏像のほうに美しさを感じるのかという、見仏人にとっての一大テーマを考える上で参考となる視点を与えてくれる。

「アーサー・ウェイレー」
ドナルド・キーンにとって日本文学を学ぶきっかけになり、学問上のアイドルだったイギリス人東洋文学者アーサー・ウェイレーの思い出を綴ったエッセイ。ウェイレーの半分を目指すしかなかったという言葉が先輩学者への尊敬を深さを表している。ウェイレー晩年の朗読のエピソードは泣かせる。

(mixiソーシャルライブラリーを転記・修正)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年3月9日
読了日 : 2009年10月30日
本棚登録日 : 2013年3月9日

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