カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社 (2012年2月10日発売)
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5

『カラマーゾフ』を読み出した。
高校生の時実存主義というものを知って
その時何かの拍子に『カラマーゾフ』知った。
その後いつかは読みたいと漠然と
思ってはいたが機会は訪れなかった。
思えばゴダールの映画『いとこ同士』で
書店の主が「一生かかっても名書を
読み切れない」と語った時
頭に浮かんだのは『カラマーゾフ』だった。
施川ゆうきの漫画『バーナード嬢曰く。』では
「一度も読んでないけど私の中ではすでに
読破したっぽいフンイキになっている‼」
本として『カラマーゾフ』が描かれる。
読書好きあるあるなのだろう。
『そうか、君はカラマーゾフを読んだのか。』
という本もある。よく見たら著者は本書の訳者
亀山郁夫だった。
2021年11月11日はドストエフスキー生誕
200年にあたった。その日の天声人語には
村上春樹の「世の中には二種類の人間がいる。
『カラマーゾフの兄弟』を読破したこと
のある人と、読破したことのない人だ。」
という言葉を紹介している。
そして何より印象に残っているのは
富士正晴だ。最近彼に興味を持ち全集をかじったら
そこに「いま『カラマーゾフ』を読み終えた」
の文が見つけた。富士正晴も読んだのか…。
今回読み出した一番の理由は
条件が揃ったことだろう。
システム的に読む段になったってこと。
時間的な余裕、年齢、心づもり。
自然な流れと言っていい。
何年もかかって本を読む段取りが整う。
こういうこともあるってこと。
そう言えば確かに映画とか旅行とかでも
そういうのってある。

プルーストの『失われた時を求めて』
もそうだが、先入観としては
「退屈な話なんだろうな」と思っていた。
鹿爪らしい話なんだろうと。
ところがびっくり。1冊目を読み出して
その面白さに引き込まれた。
面白さと人や世の中に対する
鋭い洞察に感嘆した。
村上春樹が言っていたのは
義務的な教条的な話ではなく
「この本の面白さを知らないで
一生を終えたら勿体ない」という
意味だったんだと悟った。
父親フョードルの滑稽さは笑える
(不謹慎だが現在ウクライナに侵攻している
プーチンの妄想が頭に浮かんだ)。
「おれは女遊びが好きだったし、
女遊びの、なにか恥っさらしなところが
すごく好きだった」(P289)
個人的には長男のドミートリーの
フィアンセ・カテリーナとの話が面白かった。
「ある種、感動の極みでも人は自殺できる」
そして深いのだ。
確かにこの面白さを知らない人は人生を損している。

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感想投稿日 : 2022年3月11日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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