ルドルフといくねこ くるねこ (児童文学創作シリーズ)

著者 :
  • 講談社 (2002年2月27日発売)
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今回のプラスキーワード、それは“大事なのは自分は自分だということ”。
人間のエゴをまざまざと見せつけられた末、読み手の胸に宿る思いとは…

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ひょんなことから、岐阜からトラックに乗って東京にきてしまったルドルフ。
あれから2年。
ルドルフは今でも、イッパイアッテナやブッチーたち仲間に囲まれて、日々暮らしている。

ある日、川向こうからねこのドラゴンズ京大がやってくる。
なにやら川向こうでは、恐ろしい犬が、ある共通点をもった猫や犬を襲っているようで…

そしてブッチーもまた、ある変化に直面していて…

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ルドルフとイッパイアッテナシリーズ第3作。
今回の“肝”は、ブッチーによるこの言葉、「(中略)おれは、飼いねこでもないし、ノラねこでもない。おれはねこだ。」
(151ページ)に尽きるでしょう。

ブッチーによると、ルドルフはもう自然に“自分は自分”という生き方をしているそうで、そんなルドルフを見てブッチーは、どこにいてもなにをしていても自分は自分だということが大事なのだ、と気づきます。
自分自身がそんな生き方をしているという自覚のなかったルドルフでしたが、ブッチーの考えを聞いて、ルドルフ自身もだいじなのは「(中略)ぼくがぼくだということだ。」(156ページ)と心に刻むのでした。

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それにしても、なぜ恐ろしい犬は、とある共通点をもった犬や猫を襲っているのでしょうか?
その理由を作り出してしまったのは、実は人間のエゴなのです。
それがわかったときの、読み手が抱く、何とも言えない気持ち…
人間同士のみならず、犬や猫にまで迷惑をかけているんじゃ、人間という生き物はどうしようもない存在じゃないか、と思ってしまうのです。

人間とか、猫とか、犬とか、そういうことじゃなくて、大事なのは「自分が自分」だと言うこと。
その言葉が唯一、この“恐ろしい犬”のエピソードから、心を包んでくれました。

いろんな人間もいるこの社会だけれど、その中で便宜上、どのくくりに所属するとしても「自分は自分」です。
“恐ろしい犬”を生み出してしまう人間もいれば、イッパイアッテナの飼い主だった日野さんや、可愛がってくれるおばあさんのような人間もいる。
いろんな人間のなかで、自分がどう生きたいのか、自分のままで生きるというのは、どういう道なのか、それを見失わずに考えていくことが大事なんだよと、ルドルフたちの生き方から学ばせてもらいました。



読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本・児童書
感想投稿日 : 2021年6月21日
読了日 : 2021年6月14日
本棚登録日 : 2021年6月12日

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