Yの悲劇 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2010年9月25日発売)
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本棚登録 : 1208
感想 : 88
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なるほどなぁ……!
ミステリーはあれこれ読んでいたつもりだけど、こうした展開はお目にかかったことがない。そしてこんなプロットが1930年代に生まれていたことが驚きです。
『Yの悲劇』が映像化されたとしたら、きっとエンドロールは早送りで流れる演出になるでしょうね。

前作はなかなか物語に入り込めなかったものの、今作は序盤から不穏な空気なのでとても面白く感じました。ミステリーは早めに殺人事件が起きてほしい派です。笑
「犯人の頬がすべすべして柔らかかった」という証言が出た時点で、最近スキンケアにお熱な私としては「犯人は子供では?」と思ったものの、まったく容疑者候補には上がってきませんでした。
X,Yと読んで感じるのは、真剣に犯人当てをしようと熱心に読んでいた読者ほど痛快に思うのではということ。根っからの文系の私には、少々目が滑る場面もありました。。
それにしても、捜査上の行き詰まりとなる数々の矛盾点を、「犯行計画を理解していない者がなぞっているだけだから」という点で決着させるのはなんともお見事。そんな行動に走ってしまう環境上の要因を描くのも忘れません。今読むと「偏見が過ぎるのでは?」と感じる部分もなくはないですが、まあずいぶん昔のお話ですからね。
そしてあれこれ飲み込んだうえで、苦いラストを締めるブルーノのセリフが沁みます。
「行こう、警視。レーンさんはお疲れだ。そろそろニューヨークへもどったほうがいい」

ミステリー好きを語るなら、一度は読まねばと思っていたエラリー・クイーン。
やっぱり私はアガサ・クリスティーが好きだと再認識することになりましたが、精巧な謎解きの世界を味わうことができてよかった。いつか「探偵エラリー・クイーン」の方も読んでみたいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年2月3日
読了日 : 2024年2月3日
本棚登録日 : 2024年2月3日

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