アリス=児童向け幻想文学というイメージは強いが、それはあくまで一側面。巧みな言葉遊びと明晰な論理性を反転させたナンセンスな会話、ヴィクトリア朝の文化やマザー・グースといった大衆文化を換骨奪胎してパロディ化する諧謔精神もまた、アリスらしさの一部なのだ。本作はファンタジー要素が控えめな分、知性的なのに痴呆的な、多数の引用や論理性、己の抒情性すらも木端微塵に笑い飛ばしてしまうノンセンス―無意味さに溢れている。遊び心と詩的さを巧みに日本語に置き換えた翻訳が素晴らしい。一期は夢よ、ただ狂える(cruel)のみ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2014年10月6日
- 読了日 : 2014年10月6日
- 本棚登録日 : 2014年10月6日
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