こんなベケット知らない。一人称のセンチメンタルがかつてなく直接的な初恋も良いけど、『ゴドーを待ちながら』の習作でもあるメルシエとカミエがすっごい好きだ。時に噛みあい、支え合いながらも会話はすれ違い、思いは仲たがい、互いにガタのきたふたりのどこにも進めないやり取りはとてもコミカルだし、後半で突如語りを取り戻す三人称の例えようのない肯定感は『ゴド待ち』では見られなかった一面だ。強さも弱さも、美しさも醜さも不条理の前ではいつだって平等だ。解説にもある通り、気軽に楽しめる風通しの良さが何よりいとおしい。惜しい?
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2014年6月11日
- 読了日 : 2014年6月11日
- 本棚登録日 : 2014年6月11日
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