遠い水平線の果てで天と地が結び付くように、私も貴方と一つになってしまえたら。生と死の境目も、緩やかに飛び越えてしまいたい。身元不明の遺体の正体を追い続けるスピーノの動機は、「彼は死んでいるのに、わたしは生きているからです」。世界の境界線を融解させてしまおうとする彼の振る舞いは正しくスピノザ的汎神論であり、自分自身に対する呼びかけでもある。吐息交じりに紡がれているような柔らかなテンポで記される、須賀敦子さんの訳文がとても心地よい。それは半醒半睡のなかで見る夢のように、この世界に浸っていたいと思わせてくれる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2015年4月1日
- 読了日 : 2015年4月1日
- 本棚登録日 : 2015年4月1日
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