そういうものだろ、仕事っていうのは

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2011年2月1日発売)
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津村さんが読みたくて手にとったのだが、どの作品も良かった。仕事がテーマでありつつ、野中柊さんの「あの日。この日。そして。」が収められてるのが、楽しい。アンソロジーの良さを感じる。仕事と自分の関係性、仕事は単純に人生に占める時間の割合では測れない存在。濃淡とでも言うのか、仕事は常にそこにありながら、自分にとって近くに感じたり遠くに感じたりもするし、時には完全なる支配者でもあったりして、その関わりの度合いは自分が選んだ結果であったり、有無を言わさずそうなってしまった結果だったりする。

自分は、主婦時代がありブランクがあって仕事復帰したのだが(ついでにリストラからの必死の転職活動まで経験)、今では大黒柱として今後も定年まで(或いはそれより長く)働き続ける事前提の身。
主婦時代は、会社仕事をしてないことへの引け目も若干ありつつ、仕事するって大変だよね、の価値観が見え隠れしてたようで、そんな私に学生時代からの友達が、呼吸と一緒だよ、と言って(慰めて?)くれたのを思い出す。呼吸と一緒かぁ…呼吸に関して文学することはあまり想像できないけど、人生について文学することは無限に可能だと感じる。仕事って人生と重なったり、重ならなかったりしながら、そこにあるものなのかもしれない。仕事と自分(の人生)の関係性に着目すると、より仕事を(言ってしまえば)愛せるようになるのかもしれない。だって、自分や自分の人生、自分が愛さなくて誰が愛してくれんねん!笑
愛するが言い過ぎなら、大切にする、とか、自分の一部と思うって言い方だろうか。

働くって悪くないな、と思える一冊。オススメ。

ところで、最後にある津村さんの「小規模なパンデミック」は、コロナ前に書かれたものなのだが、今読むと、(津村さんの他作品のいくつかで感じる)ありそうでない、現実に根差したフィクションを小気味よく楽しむという感じにならず、この話にはリアリティを感じるし(現実の職場状況は作品よりも更に変化が大きく大規模なパンデミックなのだが)ソワソワしちゃった。コロナ禍の職場を舞台にした津村さんの作品プリーズ!!って思っちゃう。あるのかな?

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年3月9日
本棚登録日 : 2023年3月4日

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