異端の人間学 (幻冬舎新書)

  • 幻冬舎 (2015年8月6日発売)
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感想 : 28
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ロシアという国を正確に理解できる人が世の中にどれほどいるだろうか。勿論私にとってもロシアはよくわからない国の一つだ。プーチン大統領の目つきや喋り方をニュース映像から見ていると、鋭く威圧的な雰囲気が漂ってくる一方で、帯を締めて柔道で技を決めたり、乗馬する姿などは少年の様な純粋さを感じたりする。ウクライナへ侵攻して随分と日が経つが、大規模反転攻勢に出てから既に3ヶ月経過し、未だウクライナはロシアを追い出して領土奪還まで到達できていない。開戦当初経済封鎖などで早々に疲弊するだろうと思われたロシアも、ルーブルの急激な下げを一時的に受けただけで、現状でもまだまだ戦う力を失っていない。寧ろロシアに進出していた諸外国の拠点や製品を奪取できた分、中長期的に見ればロシアに益があった様にさえ見える。
ロシアの内情がどうなっているのか、真の姿が中々見えてこないのは、プーチンという人間自体が前述した様に。掴みどころがなく謎めいているせいだろうか。
本書は元外交官の佐藤優氏と「大河の一滴」で知られる作家の五木寛之氏との対談形式で、テーマは正に「ロシア」である。前者は外交官時代はロシア駐在官として、後者は著作に多くのロシア物を書いており、ロシア文学にも文化にも、社会にも人にも充分に触れてきた二人が、ロシア人の思考方法について考える。同国民が触れてきた文学や歴史文化、周辺諸国との関係性などから現代ロシア人がどの様に考えているか。
正にウクライナとの戦争中であり、その終結には独裁者プーチン大統領の意思・判断が重要な鍵を握る。現時点で70歳に満たない氏が当面ロシアおよび周辺国の行く末を決めるのは間違いない。本書でロシア人の文学的背景を学びつつ、日本国内でもどの様な人々がロシアについて語ってきたかを知る機会になるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月29日
読了日 : 2023年10月29日
本棚登録日 : 2023年10月29日

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