- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003279014
感想・レビュー・書評
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特に「南部高速道路」が面白かった。現実がすっと非現実に移り変わる壁ののなさが特徴。隔離された非現実の中で共同体が生まれここで主体がイキイキと描写される。ラスト当然のようにあっけなく共同体は解体されるわけだが残滓のような寂寥感がたまらない。全編ともショートカットの繋ぎと切り替えが見事。
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アルゼンチン出身の作家、コルタサル著。短編が10篇収録。
どの話も怪奇譚や幻想小説の雰囲気を帯びている。謎を解決するのではなく、むしろ読者を謎に突き落とすことでその謎を浮き彫りにしている。後書きによると著者にとって短編小説は一枚の写真、一種の導入口らしい。なるほど確かにどの話もそのポリシーを体現している。
特に好きだった話は以下の三つ。
「パリにいる若い女性に宛てた手紙」:口からウサギを吐く奇病?に侵された男と同居している女性の関係を描く。暗喩的な設定とラストの落とし方が非常に怪奇。
「悪魔の涎」:カメラで撮った写真が物語の主観と客観を逆転させ、夢のような不可思議な結末に落ち込んでいく。
「南部高速道路」:未曽有の長期間渋滞によって高速道路に発生したコミュニティーの動態を描く。この話を読むだけでもこの短編集を買う価値があると思う。初めは見知らぬ人とかかわることに違和感を抱いていたはずなのに、渋滞が解消された時には、なぜ見知らぬ人ばかりが周囲にいるのかと疑問に思う。ラストシーンにおけるこの感覚の逆転が言い知れぬ寂しさを心に残す。 -
寝る前にゆっくりちょっとずつ読む方向で。そのせいか判らないけど立て続けに変な夢を見てしまった。。 夢と現実が地続きにあるような、クラインの壺みたいに表の世界と裏の世界がひとつに繋がっているような、だんだん何処に立ってるのか判らなくなる感覚が気持ちよい。特に好きなのは「夜、あおむけにされて」「南部高速道路」。夜、あおむけに…は二度目だけれど、改めて読むと結構こわい。 個人的には半生をパリで過ごしたというあとがきに、え、という驚きが。アルゼンチンは。
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訳も良く面白く読めた。ラテンアメリカ文学に今さらながらどっぷり漬かりたくなってきた。でも今では絶版が多くヤフオクとかトライしがいがありそう^^;
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三越前タロー書房、¥756.
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普段、外国文学をほとんど読まないので、読み進めるのに苦労したのですが、不思議と他の作品も読みたくなりました。
昔のフランスならではの背景が印象的。 -
「追い求める男」が長い!
現実感の無い内容といいPKDの長編を読んでいる気分だった
悪魔の涎をはじめ、描写が細かい。
悪魔の涎は終盤が物足りない。それともこの作品は前半の公園を楽しむ作品なのだろうか。
高速道路の話は読みやすいし、共感できる
全ての火は火は、構造重視
全体的に、やや冗長な印象 -
舞台「南部高速道路」を観たのがきっかけで読んだのだけれど、とても面白く、好みにぴったりだったので思わぬ収穫でした。こういう本、もっと読みたい!
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読もう読もうと思いつつあんまり読んでなかったラテンアメリカ文学。読んでみたら面白かった。
「追い求める男」だけ趣が違ったが、他はみな非現実的なストーリー展開が繰り広げられる短編となっている。
夢と現実が地続きになっている物語にも惹き付けられたが、それ以上に、そんな夢のような状況に直面しても、その状況をありのままに受け入れる登場人物たちのたたずまいが良かった。
そのようなたたずまいこそが、夢を見ているみたいだと思いました。