悪魔の涎/追い求める男: 他八篇 (岩波文庫 赤 790-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003279014

感想・レビュー・書評

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  • ①文体★★★☆☆
    ②読後余韻★★★★★

  • 筒井康隆とか星新一とかの少し不思議系サイエンスフィクションを徹底的に濃縮したらこうなる。
    南米文学的な匂いもあるのだが、ブエノスアイレス育ちでフランスに留学している彼の扱う素材は都会的である。
    普段ジャズはあまり聞かないのだけど、チャーリーパーカーの曲を聴きながら「追い求める男」を読んでいると、酩酊してくるような感じがして良かった。
    口からうさぎの出てしまう男の話も好き

  • 3.89/763
    『夕暮れの公園で何気なく撮った一枚の写真から,現実と非現実の交錯する不可思議な世界が生まれる「悪魔の涎」.薬物への耽溺とジャズの即興演奏のなかに彼岸を垣間見るサックス奏者を描いた「追い求める男」.斬新な実験性と幻想的な作風でラテンアメリカ文学界に独自の位置を占めるコルサタル(一九一四―八四)の代表作十篇を収録.』(「岩波書店」サイトより▽)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b248474.html

    目次
    続いている公園/パリにいる若い女性に宛てた手紙/占拠された屋敷/夜、あおむけにされて/悪魔の涎/追い求める男/南部高速道路/正午の島/ジョン・ハウエルへの指示/すべての火は火

    著者:フリオ・コルタサル (Julio Cortázar)
    訳者:木村 栄一
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎301ページ

  • 君は口から兎を出したことがあるか?
    岩波文庫のコルタサル短編集の中から「パリに住む若い女性に宛てた手紙」(たぶんこんなタイトル)を読みました。この不在の若い女性の家に住むことになった(という理由には触れられていないのは、こういう短編の定石でしょうか?)男…この男の特技というか癖というかなんというか…が、口から兎を出す、ということなのです。なんだか繊細な女性の部屋を少しでもかき乱すのはいやだ…なんて書き出しているくせに、そのかたわらではタンスに兎を飼っていたり、その兎が本をかじってたりする。 んで、十羽まではなんとか隠していたけれど、十一羽になったら、男は我慢できなくなって兎達とともに飛び降り自殺してしまう。 うーん、やっぱり兎は性欲の象徴ということらしいのですが、でもなんで十一羽なんでしょうね? コルタサルは凝る他猿?
    (2010 05/12)

    「占拠された屋敷」の別解?
    昨夜寝がけに少しだけ読もう、と読み始めた「コルタサル短篇集」から「占拠された屋敷」なのですが、解説によると「占拠」の持つ意味はここでも?近親相姦とかいうような性欲関係らしいです。確かにそんな臭いしてますが(笑)、ここではあえて(自分なりに)別の読み方を。例えば最初の「占拠」(といってもただ屋敷の半分から物音がし始めたということだけなのですが)は右脳を、次の「占拠」は左脳を意味している(順番には特にとらわれず)・・・あるいは、近代社会になるにつれて多くのものが視野から消え去って削れていった、と言う意味での「占拠」された場所、ということかな? まだまだ他の読み方もできると思いますです。
    (2010 05/18)

    もうお腹いっぱい(笑)
    「夜、あおむけにされて」と「悪魔の涎」。キーワードは「メビウスの輪」。こちらから読んでいたのが、気付かぬ間にあちら側に取り残される。そんな2編。
    メビウスの輪の「完成度」は「夜…」の方が高く、最初のさりげないほのめしから、2つの世界を行ったりきたり。アステカ族の世界で捕虜となって処刑される段になり必死に眠って現代の病院の世界に戻ろうとするが、もはや輪は閉じられてしまっていた…あーあ、こわ…
    んで、「悪魔の涎」は写真のこちら側とあちら側なんだけど、ところどころに輪の破れがあって、それはそれで恐いんだわ(笑)。 というわけで、こんな2編、朝から読むと、もうさすがにお腹いっぱい(笑)。 とりあえず、交通安全と、知らない人を写真に撮る時は一声断ってからにしましょう(笑)。異次元に行かない為にも… 「悪魔の涎」にこんな文章がある。
     まず、この建物の階段を降りて、一カ月前の十一月七日の日曜日まで戻ることにする。六階から階段を降りると、そこは日曜日で、いかにも十一月のパリらしい太陽が輝いている。
    (p59)
    位置表現と時間表現との交錯ですが、先に述べた「輪の破れ」の一例ともなっている。結果は写真によって切り取られた過去とそれから現在が、写真の面を媒介にして行き来可能になるということ。写真の現代性と、上の分の「階段降りた所にある十一月のパリというのは位置情報であるけれど、2つの異なる時間現象を結びつけてしまうものでもある。えーっと、他にこのようなところにでてきそうなモノはないかな?
    (2010 05/26)

    エレベータと地下鉄の時間的つながり
    今日はコルタサル短編集から「追い求める男」。ジャズサックス奏者の話なのですが、なんだかこの男、時間に関する考えにとりつかれている感じ。エスカレータでも地下鉄でもその乗っている時間以上の過剰な映像等が流れる。そんな「自己の中の時間」でみんな生きられればいいな。というのが、このジョニーという男の考え。 (そういう体験って、プルーストの水中花や、キリーロフの癲癇体験などと共通するのかな?)
     つまり、スーツケースの中にもう一度詰めようとすると、今度は店一軒分に相当する何百着という服がそっくり入るんだ。
    (p93)
    前ページのエレベータの例や地下鉄の例をわかりやすく短文で言い表したもの。
     ・・・あらゆるものに穴があいていることは分かるはずだ。ドアやベッドはもちろん、手や新聞、時間、空気、あらゆるものが穴だらけなんだ。すべてがスポンジか、自分を濾過する濾過器みたいなものなんだ・・・。
    (p128)
    穴があいているから伸縮自在に時間を想起を収納できるのかな、you know? では、ジョニーが一分を十五分に感じている間、ジョニーの他の何かが身体から出て行ってるのかな?濾過されて。
    (2010 05/27)

    追い詰められたら追い求める男に
    コルタサルの「追い求める男」の続きですが、追い詰められた男が、逆に追い求める男になったという表現がありました。うーむ、ここでも輪が…
    (2010 05/28)

  • 知人にお勧めされた本。
    国連加盟193か国の本を可能な限り読んでみたいというのが最近私が抱いている夢で、本書はアルゼンチンの作家の本。
    一昔前にラテンアメリカ文学のブームがあったらしく、そのときに注目された作品だそう。
    特にラテンアメリカ文学に注目して読んだことはなかったが、『百年の孤独』が私の読みたい本リストにあって、著者のガルシア・マルケスもその分類に属するという。


    「続いている公園」☆☆☆
    「世にも奇妙な物語」にありそうと言ってしまったらレビューとして負けな気がするけれど、実際そうだから仕方ない。


    「パリにいる若い女性に宛てた手紙」☆☆☆
    口からウサギを生み出してしまう男の話。
    最後は自分の中で納得していたものの許容範囲を超えてしまったのか。
    解説によれば、いろいろとモチーフとして受け取れる小道具があったようだが、文学的な教養に乏しい私にはそこまで読み取ることができなかった。


    「占拠された屋敷」☆☆☆
    兄妹で暮らしている屋敷が何者かに少しずつ占拠されていってしまう。
    それがどういう存在なのかはわからず、兄妹も確かめようとしない奇妙な話。
    兄妹の距離がなんとなく近いなくらいには思っていたが、解説を読んで少し納得。


    「夜、あおむけにされて」☆☆☆
    夢の世界と現実の行き来を繰り返して、どちらが現実かわからなくなってしまう男の話。
    似たコンセプトの話としては最近読んだエドモンド・ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』に収録されている短編「夢見る者の世界」の方が面白かったかな。
    ただ、コルタサルの方は改行や段落の変更がかなり少ないので、同じ段落中で場面転換が発生する。
    そのせいで、知らぬ間に夢の世界に入ってしまった(あるいは現実に戻ってきた)ような錯覚を覚えるのが面白い。


    「悪魔の涎」(原題"Las babas del diablo")☆☆☆
    コルタサルの作品の中で1、2を争う有名な作品で、イタリアの映画監督ミケランジェロ・アントニオーニによって『欲望』のタイトルで映画化されている。
    男が公園でのふとした光景を写真に撮り、それを家に帰って眺めていると写真が動き出し……という話。
    評価が高いようだが、コルタサルは個人の内面について描く作品が多い中で、本作ではあまり触れられず、私はあまり好みではなかった。
    空中に浮遊する蜘蛛の糸のことを悪魔の涎と呼ぶということがためになったくらいか。


    「追い求める男」☆☆
    天才的なサックスの才能を持ちながら精神を患い薬物に溺れてしまう男と、彼に振り回される人々の話。
    改行と段落変更のない構成と、詩的にかつ断片的に語られるサックスマンの内面を読むのがひたすらに辛かった。
    本書の複数の短編を読めば、コルタサルがかなり個人の内面の描写に寄せている作家だということはよくわかるが、この作品はその傾向がかなり強い。
    周囲の世界との関わり方から個人を描くのではなく、ただただ個人の内面を語る本作はコルタサルらしいとも言えるのかもしれない。
    しかし、薬物に侵され前後不覚の男の非現実的な話を続けられると気が滅入ってくる。
    人によって好みが極端に分かれそうだ。


    「南部高速道路」(原題"La autopista del sur")☆☆☆☆
    フランスの高速道路で深刻な渋滞が発生した。
    すぐに解消するかに思われた渋滞は長引き、日をまたぎ季節をまたいでいく。
    いつしか人々はグループを作り、役割を決め、水や食料を集め、路上でサバイバルをする。
    本書を勧めてくれた知人が一番推しており、私も最も気に入った作品。
    とんでもない奇想小説だが、グループの形成・運営などがリアル(現実でこうなるわけはないのだが)で、かつ文体が他の作品よりも読みやすいので万人がとっつきやすいと思う。
    ラストも皮肉っぽくて面白い。


    「正午の島」☆☆
    飛行機の中で働く男はいつも窓から見える島に行くことにあこがれており、とうとうその島に行くことを決意する。
    正直何を描きたいのかよくわからなかった。


    「ジョン・ハウエルへの指示」☆☆
    演劇を鑑賞しに来た男が突然舞台裏に呼ばれ、主人公役を演じることになってしまう話。
    演劇に口を挟む素人に対する皮肉だろうか。


    「すべての火は火」☆☆
    コロシアムが行われる古代と現代の話とが混ざりリンクする。
    夢と現実を行き来する「夜、あおむけにされて」を読んでいるので真新しさを感じられず。

  • これは友人のおすすめ本。ラテンアメリカ文学は初体験だと思う。小説や写真と現実、劇の出演者と観客、歴史上の出来事と現在などが行ったり来たりする。また、タブーとそれを犯すことが暗喩されていたり、循環があったりと、様々な斬新な工夫に満ちた短編集。こういう不条理・不自然な前提で進行する小説は最近流行っているが、南米の作家による、古い時代からあったとは新鮮な驚き。

  • 書店員波山個間子さんつながりで、「パリにいる若い女性に宛てた手紙」のみ読了。/今はパリに住む女性から部屋を借りている男が、口から次から次へと子ウサギを吐き出し続ける。最初は飼いならせていたウサギたちも12羽を超えると制御が効かなくなり、部屋をめちゃめちゃにしてしまう。男はなんとか修繕しようと努力するがーもっともそれは、無駄なあがきに見えるがー努力はしたんだ、自分のせいではないんだ、と言い訳して手紙を終える。最後に飛び降りた死体を残して。奇想ものにも、単に部屋をめちゃめちゃにしちゃったのをありえない言い訳してるだけともとれるし、最後も語りてなのか全く別のひとのものか、どちらともとれて/池澤夏樹の個人世界文学全集の短編集で「南部高速道路」を知り、もっと読んでみたくて買ったのに、挫折してころがしてあったコルタサルから一編読了できて吉。

  • 悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)

  • こんなバカみたいな本、よく出版できたな

    お尻と口にするだけで笑える小学生なら喜んでくれるだろうが、あまりそんな大人はいないんじゃないかな。

    どこかのえらい先生が「VRより、小説こそ脳内ジャック」などといきまいたご様子でお勧めしておられたので読んでみたが、先生は最近の外の世界(といってもここ40年くらい)がどうなっているのかをご存知ないのだろう。
    ライトノベルなんかを読んでみればいいのではないだろうか。(或いはこれはライトノベルを読んで、いじけをこじらせた症状である可能性もある)

    しかしながら皆が皆、同じ時代を生きているとは限らないわけである。そもそも生きているとも限らない。というか私たちは間違いなく生きていない寄りの生きていないであろう。だからそれもこれも全部致し方ない。どこかの神様も「そんなんだから君たちは何百回もやりなおしなんだよ」と言っていた

    数日毎に、読んだことを忘れてはページを開いてしまい、うっかり3話も読んでしまった

    追記:カバーを外したら表題が見えたのでいちおう代表作(?)だけでも読んでおくことにした。
    なるほど、ほかを書かなければ辛うじてバレなかったかもしれない。
    なにがやりたかったのかが不明という理由で。

    たぶんお尻と口にするだけで楽しいお年頃なのだろう。

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