ソクラテスの弁明・クリトン(プラトン) (岩波文庫 青 601-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (135ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003360118

感想・レビュー・書評

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  • 文章が難解でところどころ消化不良。

  • 読んだのは『ソクラテスの弁明』のみ。『クリトン』は読まなかった。
    前半はソクラテスの言う「アテナイ人諸君」の愚かさを責めている感じで正直あまりおもしろくなかった。
    むしろ有罪が決定した後のほうが読みやすかった。
    ソクラテスの自信と、自らが窮地に立たされても神を信じて嘆くことのない姿勢は羨ましい。見習えたらいいと思うけど、難しいなあ。
    ところで読み終わったのが2011年4月27日。
    ソクラテスの死刑執行が紀元前399年4月27日。
    何か運命的なものを感じました。

  • 私たちは常に迷っている。

    就職で、試験で、恋愛で、昼ごはんのメニューで。
    迷い立ち止まることは若さの特権であり、未熟の証明でもある両刃の剣だ。
    そこへ来て、ソクラテスである。
    「無知の知」だの「弁証」だのを抜きにしてこの親父のあまりの迷いのなさには驚かされる。
    俺は正しい。何故お前達はそれを理解しない?

    そこには賢人のソクラテスではなく自信満々の親父がいるだけだ。
    教科書に出てくるソクラテスより、ずっと面白い。
    確かにこんな親父にいきなりとっ捕まったら人生観が変わるだろう。

    ひょっとしたら若さ故の迷いも解決するかもしれない。


    …という感想を、昔読書マラソンで書いたなあ。

  • 西洋哲学は彼から始まったと言っても過言ではない、倫理の授業でも最初に学んだソクラテス。
    ソクラテスがどういう人で、何を言って、どう亡くなったのかは知っていたが、原書を当たったことがなかったので今回読んでみた。

    本書はソクラテスが裁判で、自分に求刑するアテナイの人々や告発者に対して弁明(釈明、弁論、反論のようなもの)をする『ソクラテスの弁明』と、
    死刑が決まってから執行までの間に彼を訪ねてきた弟子クリトンとの対話『クリトン』の2編を収録している。

    新仮名遣いに直したり日本語の表現を改めたりはしているものの、1964年改版の本書なのでボキャブラリーや字体がやや難しい。
    とはいえ慣れてしまえば問題ないし、「けだし(=思うに)」、「なんとなれば(=なぜかと言えば)」のように頻出する古い言い回しを最初に覚えてしまえば難なく読めるだろう。

    句読点や改行のようなものが生まれたのは中世の頃だったはずなので、古来の情報源、原初の原書からすれば格段に読みやすかろう。
    写本や改定、翻訳、改版を経て現代にまで本書を繋いでくれた数多の先人達に感謝である。

    ソクラテスと言えば「無知の知」であるが、その言い回しは直接は登場しない。
    ただ、「私は自分が知らないということを知っているが、彼はそれを知らないことを知っていないため、いくらか自分の方が賢い」という旨を、直接相対する人に告げていたことを自白している。
    なるほど、それを率直に他人から言われたら印象悪い。

    本書を読んでも、ソクラテスの言い分は尤もで、理に適っている。
    この弁明を経れば、実刑はまず免れるだろうと率直に思ったが、なぜか結果は初審で拮抗、再審で有罪多数になってしまった。
    それが余りに不思議だったが、そのあたりの答えは巻末の解説にあった。

    以前から古代のリベラルアーツの中に「修辞学(弁論術)」が含まれていたのをとても疑問に感じていたが、本書を読んで合点がいった。
    なるほど、政治、裁判など、社会を大きく変化させるには大衆の同意を得たり、大衆を扇動したりする必要があった。
    そのため、いかに大勢の人を納得させるか、という技法として修辞学・弁論術があったのだろう。

    論理が整っているか、自分の意志が人の心を動かせるかどうか、積極的に発言できるかどうかといったことが自分の生死、果ては国会や社会の生死にまで関わっていたのが背景から読み取れる。

    ソクラテスはその論理や弁論といったことにまさに秀でていたがために、プラトンのような優秀な後人がつき、そして現代にいたるまでその存在を知らしめたのだろう。

    なんとも心苦しいことだが、結果、論理だけではソクラテスは自分の命は救えなかった。
    しかし、自らの信念を通すがために、あえて自ら死を選んだその思考の経緯と胆力、さらにそれを明快に説明する論理の技術的な部分に含む点それぞれから、「偉人」の称号を得るにこれほど相応しい人はいないと感じた。

    ソクラテスの、神への信仰や自分の信念をもとにして大衆を論理で納得させる姿。これは徳を含むし尊敬すべきことだ。
    しかし現代主流の民主主義のような、多数の意見を聞きいれて多数決を取る、という考え方とは相いれない。
    これは一長一短。
    きっと後世の賢人、哲学者たちがこの問題に向き合っていったことだろう。
    中には、自らの信念を押し通し、大勢を虐殺に追いやったヒトラーのようなものにもこういった考え方を植え付けた。
    ヒトラーが実際にソクラテスの教えを受けたかどうかまでは知らないが、本書、ないしソクラテスの意志を継いだその後の哲学者や思想家の書物を読んだのは想像に難くない。

    民主主義が機能不全になっている現代、改めて振り返ってみても、今の自分の生き方や社会の在り方は本当にベストなのか、もっと磨けるところはないかを見据える上で、本書を読む意義はあると思う。

    続いてプラトンの他の書籍へと読書を進める。

  • 難しかったが、ソクラテスの細かいほどまでに公平さ求める姿があったからこそ、死刑となっても語り継がれるのだろうな。いや、死刑になったから余計語り継がれたのか?ソクラテスとクリトンのように、私も問答してみたかった

  • 国家を読んで鬱陶しいなあと思ったソクラテスの印象はそこまで変わらないが、正義や徳を追い求めようとする姿には哲学者としてのイデアが垣間見えたような気がした。

  • 本が薄く対話形式で書かれていて、哲学初心者の私にとっても読みやすかった。同じく哲学の入門書として同列に勝たられる「方法序説」より何倍も。

    1人の知者と他集の素人のどちらに従うのが良いか
    についての話のオチが何度読んでも良く分からなかった。1人の知者に従うのが従前という文書は具体的に何を指し示しめしてるの?国家と法?それともクリトンへの皮肉?

    とにかくソクラテスの生き方や考え方はかっこよく、こんな大人になりたいと思った。哲学マスターになれたらもう一度挑戦したい作品です。

  • ソクラテスは非常に信仰心の強い人物であり、そんな彼の精神に従うことを諦めなかった結果として彼は死刑に処せられた。これは単純に彼の精神が死刑を定めている法律つまりは国家の意向にそわなかったというわけではない。当時の国家を先導していたのがいわゆるソフィストと呼ばれる人々であり、彼らの精神とソクラテスの精神とが合致しなかったという意味である。だからこそソクラテス自身は国家に対しての忠誠心をも持っており、その国家が定めるルールである死刑でさえも受け入れる選択をした。


    正直なところ、物語として読んでみるととてもこんな人いないだろうという感想が1番に出てきました。私自身の日本人として信仰心の浅さからでしょうか。でもソクラテスは実在している。これはきっと対話篇という形で仕上げた詩人のプラトンの力ゆえなのでしょう。これほど熱量のある人物を目の前に不正のもとに彼が裁かれその極刑すらも受け入れてしまう場面は、かなりの臨場感を持って読む人の前に現れてきます。


    気楽に読むには難しいため、信仰心のすごく強い人が自分の正義を持って不正と戦う物語くらいに読めればいいんじゃないでしょうか。多くの方がソクラテスの熱い気持ちを感じられるといいですね。

  • 文章としては難しく理解しずらいが、内容は非常に面白い。2500年も前に、自分や人にとって正しいと思うことを死刑という判決が下っても貫こうとする姿勢に心を打たれた。「最も立派で最も容易なのは、他を圧迫する事ではなく、出来る限り善くなるように自ら心掛けること」この言葉は今の時代にも全く色褪せていないと感じる。

  • 善く生きる、正しく生きることとは…と考えさせられる古典の名作
    読んでて面白かったのだが、個人的にはやはり国家と個人の関係が今ひとつ共感できない…
    アンダーソンの『想像の共同体』を読んでみたい

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著者プロフィール

山口大学教授
1961年 大阪府生まれ
1991年 京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学
2010年 山口大学講師、助教授を経て現職

主な著訳書
『イリソスのほとり──藤澤令夫先生献呈論文集』(共著、世界思想社)
マーク・L・マックフェラン『ソクラテスの宗教』(共訳、法政大学出版局)
アルビノス他『プラトン哲学入門』(共訳、京都大学学術出版会)

「2018年 『パイドロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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