ソクラテスの弁明・クリトン(プラトン) (岩波文庫 青 601-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (135ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003360118

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  • 善く生きるとはどういうことか。ソクラテスの死生観がよくわかる名著です。

    ◆ソクラテスについて

    古代ギリシアの哲学者。哲学の父や哲学の祖と呼ばれ、「無知の知」の概念や「問答法」という思考法を残した事で有名。

    ◆ソクラテスの弁明のストーリー

    ソクラテスは「国家の信仰と異なるものを信じ、若者に悪い影響を与えている」という罪で裁判にかけられ、陪審員たちの多数決により、死刑を求刑された。

    友人クリトンから逃亡を持ちかけられるが、ソクラテスは自分の信念を貫き通し、死を受け入れた。

    ◆ソクラテスの死生観について

    ◇読書前の疑問
    なぜソクラテスは死を選んだのだろうか?
    若い人へ大切なことを伝え、良い方向に導いていきたいと考えるのであれば、「生きる」という選択肢もあったのではないか。急場をしのぎ、生きながらえていたならば、時間をかけてより多くの人へ伝えることができたかもしれない。他人から根拠のない批判を受けたとしても、じっと耐え、また次の機会を待つ。そのような生き方を「潔くない」と言う人もいるかも知れないが、時には不遇にじっと耐え、細々とでも生涯をかけて本職をまっとうする姿が、残った人への良い手本になったのではないか。命はひとつしかないのだから。

    ◇ソクラテスが死を受け入れた理由

    「人は自ら最良と信じたものを危険を冒してでも固守すべきである。信念を曲げる恥に比べたら、死は念頭にすら置くべきものではない。」

    「死が人間にとって悪いものなのか、または至福のものであるのか。それは誰も知らない。」

    「つまり死を恐れることは、“知らないものを知っている”と信じることであり、“賢人ならずして賢人を気取る”ことに他ならない。」

     「一方で、不正(信念に背くこと)が悪であることを私は知っている。だから不正を行うことを恐れるが、死を恐れることはない。」

    クリトンとの対話から
    当時の国の状況として、逃亡した場合、残された家族や知人までが罪に問われたり財産を没収されるなど酷い目にあう可能性が高かった。逆にここで潔く死を選べば、信念を貫き正しく生をまっとうすることができる上に、家族友人の生活も守られ、残る子供たちについてもクリトンら友人たちに良く養育されるであろうと信じていた。また死後の世界ハデスは、至福の場所であるかもしれないし、もし不正を行ったならば結局はハデスの法で裁かれることになるだろうと考えた。

    ◇読後の感想
    後半のクリトンと対話から、死を選んだ理由が、自分の信念を貫きたいだけでなく、家族や友人を思いやっての判断であったことがわかった。当時の状況を考えれば、自分であっても死を選ぶのかもしれない。人が人を裁くというのはとても難しいことで、様々な失敗と改善を繰り返した結果今の法律や裁判制度が出来上がっているのだと思うと、現代の日本も悪くない、幸せなことだと思った。

  • ソクラテスの弁明

    あたかも神を斥けるような言葉で若者を惑わし、知ったかぶりしてるやつをとことん論破した、かどでで訴えられたソクラテス爺さんは、顰蹙をかって死刑にされました。

    罰金くらいなら払うけど、哀訴はしない。
    なぜなら信念に基づいたものだから。

    わしゃこれで本望じゃといったか言わないか。知らんけど。

    たしかにやりすぎなんかもな、でもこの人がおらんかったらその後の脈々たる哲人の系譜は全然ちゃうことになったんやろうな。

    クリトン

    祖国は私を産み、育てた環境を整えたというのに、その祖国の国法に、逆らうということはできない。
    衆人の意見はどうあろうと信念に基づいて判断することは一切揺るがない。
    ・・・と以外にもというか、わりかし、封建的とも取れる意見やなぁとおもた。

    解釈を間違うと全体主義に陥りそうで、ちと怖い。

  • ・ソクラテスの弁明
    裁判という場面上、法に関する話題が多く興味深かった。
    三段論法(15章)や場合分け(32章)といった現代にも通じる論証法が既に使われていたことや、故意と過失で違法性の程度の区別がなされていたことなど、これらがソクラテスに固有の知見かはともかくとして新鮮だった。

    ・クリトン
    「弁明」も含めて、ソクラテスは自身が傲慢でないことを繰り返し述べてきたが、一方で非常に高潔な人間であることがこちらの篇では強調された。
    最終盤では「国法」が人格を得たかのようにソクラテスに語りかけるが、ここでのリヴァイアサン的国家観は、現代の目から見れば不十分ではあるものの、時代を考慮すれば十分に先進的と言うべきものであり、また居住移転の自由により国法への服従を裏面から根拠づけているのは興味深かった。

    両篇を通じて、神霊についての記述は時代背景もあり理解しきれないところが多かった。他方、解説にもあった精神の高潔>国法>物質的財の構造は比較的読み取りやすく、また一般に知られるソクラテス哲学のイメージにも適合的であって、原典からみずから探り出す歓びを与えてくれた。 

  • 私には、よくわからない
    思い出しのは
    肥った豚になるよりは痩せたソクラテスに〜
    そして、カルロス・ゴーン

  • 無知をまなんだ

  • ・読んだ理由
    何でもいいから古典を読んでみたかった。
    哲学者として有名なソクラテスの本を選んだ。

    ・感想
    馴染みのない熟語、漢字、接続詞を多用しており、調べながら読むのが大変である。
    また、一文が長いため、主張を整理しながら読む必要があるが、理解できないところも多々あった。
    何となく、昔の超絶賢かった人、というイメージしか無かったソクラテスだが、僕の読解力では、紀元前のひろゆき的人物に映った。
    主張が常に一貫しており、圧倒的語彙力で相手を説き伏せる様は、意外にも笑える。

  • ソクラテスの正義、理性に基づく持論の展開に中毒性があり時間をおいて読みたくなる。対話形式と言うには相手が弱いが、ソクラテス理論をスムーズに展開させるための役回りなのでちょうどいいのだろう。
    一冊の本としては続き物といえる二作をまとめて読めるのが嬉しい。また、訳者注が当時の社会的背景を理解するのに非常に役に立った。

  • 哲学の入門で読み始める原著としては一番最初に読み始める本。

    しかしまぁ、現代人の感覚で読んでみるとソクラテスが屁理屈を捏ねているだけにしか読めないのはご愛敬。

    古典というのは名著ではなくて多くの学者が参考文献に選び、後世に強い影響を与えた本であると理解しておく必要があるだろう。

    この本プラス何かしらの解説本を読んだうえで自分の頭で徳や真理について考えてみる本だと思った。

  • 自分の考えを貫くソクラテスと、彼を慕うプラトン。

  • ・ソクラテスが若者たちを堕落させたとして告発され、501人の陪審員を前に弁明する対話形式の構成
    ・陪審員は裁判官ではなく一般人から選出されているため、あえて」アテナイ人諸君」ソクラテスはそう陪審員に呼びかけている。
    ・自分が知らないことを知ってつもりにならないことが賢明である→ 無知の知
    ・死を恐れるという事は、死を知らないのに、死を悪の最大であることを知り尽くしているかのようである。→ 知っていないことを、知っていると思い込む無知。
    ・死生観 死が悪とは限らない

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著者プロフィール

山口大学教授
1961年 大阪府生まれ
1991年 京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学
2010年 山口大学講師、助教授を経て現職

主な著訳書
『イリソスのほとり──藤澤令夫先生献呈論文集』(共著、世界思想社)
マーク・L・マックフェラン『ソクラテスの宗教』(共訳、法政大学出版局)
アルビノス他『プラトン哲学入門』(共訳、京都大学学術出版会)

「2018年 『パイドロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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