創世記(旧約聖書) (岩波文庫 青 801-1)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003380116

感想・レビュー・書評

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  • 岩波文庫から出ている日本語訳(所謂「関根訳」)旧約聖書の『創世記』。ビブリア・ヘブライカ(1937年版)を底本としており、詳細な注釈を施している。
    本書の特徴は、高等批評に基づく聖書本文の詳細な注である。訳者は文章仮説に基づいて、本文の各節がおおよそどの資料に由来しているのか(或いはそう考えられるのか)を注で事細かに解説している。またそれに合わせて、文意が通るように一部節を入れ替えている箇所がある。無論本文の単語や語句、その背景にある思想についても説明がされており、学問的にもまた文学的にも読みやすいものとなっている。
    本書が訳されたのが1956年ということもあり、現代の聖書研究と比べ古い説を採用している可能性があるが(特に文章仮説の問題)、それでも手軽に本格的な聖書読解ができる書として有用だろう。

  • 原罪とは自己意識のことだ。分裂してしまった自己意識を備えた人間が宿命的に負わされることとなった苦悩、それが楽園追放という物語として表現されているように思う。神に意識の分裂は無い、神は自己反省しないだろう、自己超越する動機も無いだろう。ロゴス(論理/言語/理性/自己意識)の自己関係的機制の中に放り込まれて生きるのが人間だ。神は、自己関係的な在り方をしていない。

    ロゴスは神に由来すると云うが、ロゴスは、必然的に自己超越的・自己否定的な機制として在るのであり且つ同時に自己完結的である、という矛盾の中に在る。そして外部が存在しない。人間が生きているロゴスを投影し、同時にそこに孕まれている自己矛盾を抹消したものが――勿論それは本質的に不可能であるが――、神と云う観念か。

  • 序盤は、天地創造、エデンの園、ノアの方舟、バベルの塔、ソドムとゴモラなど寓意性に満ちている。
    神が人間を創ったことを悔いて悲しむという表現に、神学によって全知全能が強調される前の人間味のある神の姿を見ることができる。

    中盤以降は、アブラハム以下4代の民族創建の物語だ。
    しばしばヤハウェの基準の不明瞭な態度のせいで、ときに兄弟で出し抜き合い命を狙い合う、血なまぐさい話が散見される。
    それは勧善懲悪的な通俗的道徳を示す説話的なものではない。
    むしろ、神のきまぐれこそが道徳であるというかのような、恐ろしくも絶対的な神の観念の称揚といえる。
    カインとアベルにしても、エサウとヤコブにしても、長子優先の秩序が、神の介入でいともたやすく転倒させられるのが興味深い。(「長子権」という概念はあり、本家の長子が一切を相続し領導するという観念自体はあるようだ。)
    古代社会において、明確で堅固な一族内の地位の序列が定めっていたほうが、社会は安定しただろう。そのような安定性を差し置いてまで、神に気に入られた者、ないし神にとって有能な者が、一切を相続するという思想には興味を引かれる。

    また、神のみならず、人の「祝福」という儀礼が非常に重視されていたことが分かる。

  • 諸宗教の源流となっている旧約聖書。これを読まずして今の世界を見ることはできない!ということで、まずは創世記から。

    まず思ったのは、これは今(ユダヤ教成立時)に至るまでに何が起きたのかを記す、歴史書のような構成になっていること。新約聖書のような"教え"の要素はかなり少ない。

    また、これも切に感じたのは、神はなかなかに気ままであるということ。「カインとアベル」「イサクの献供」など、人間の尺度ではあまり理にかなっていないと感じる場面が多くある。これは、努力した分だけ絶対に報われる、というわけではない世界の理不尽や不条理を表しているのだろうか?次に読む「ヨブ記」もその要素が強いはずなので、とても楽しみだ。

    「葡萄つくりのノア」には、黒人差別の正当化に使われているのでは!?と驚いた一説もあった。(本当の意味としてはおそらく、カナン人が神の民であるイスラエル人に滅ぼされることを示唆?)

  • ソドムの滅亡など神話として有名なシーンが盛り沢山。

  • ゲーム『ゼノサーガ』の考察のために購入。

    E.S.の名前の由来が、ヤコブの子の名であることが分かった。

    神がアブラハムにカナンの地を約束の地として、与えた。

  • 識字率も高くなかった、かつて、必ずしも教育程度の高くない人も知っていただけあって、非常に読みやすい。
    神話的要素が強い。

  • 2019.4.9
    非常に読みにくいと思っていたが、巻末の解説を読んで腑に落ちた。
    乱暴に言えば素材が同じでありながらも、成立の異なる資料を合体して1つに編纂した、という事なんだろう。
    そう考えると非常に面白い

  • "旧約聖書の創世記。
    地球上の多くの人が何かしら信じて信仰している宗教。
    その文化的背景を知る上でも読んでおくべき書。
    次は、出エジプト記"

  • 「終わりのセラフ」最終回を見て塩の柱のエピソードが気になったので読んだ。思えば聖書のきちんとしたものを読んだことはこれまでなくて,というかきちんとしたものは読んでいてもたぶん新約聖書だけだったので,なかなか興味深いものだなと思いながら読んでいた。と言っても,注釈との行き来があまりにもストレスフルだったので,本文だけ。解説はこれから読もうか読むまいか,というところ。
    昔はカトリックの幼稚園に通っていたし,旧約聖書・新約聖書(といっても分かりやすく書き下したもの)ともに何度か読んでいたし,そこまで抵抗無く読めると思っていたのだけれども,いつの間にかカタカナの名前がたくさん登場してくるとなかなか読めなくなってしまっていて,読み進めるのがなかなか困難だった。出てきた人たちのなかにも「どうしてそうなる! 納得いかぬ!」という感じの人が多かったけれども,読んでいても「なるほどわからん」がそれなりにあって,なんとも言えない気持ちに。あと,聖書と古事記ってそれぞれの性格が全く異なるものだなというのがよくわかった。
    なお,気になっていた塩の柱のエピソードは,気づけばあっさりと通り過ぎてしまっていて,全編読み終わってから改めて検索をかけて場所を確認するような体たらくだった。

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