- Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004120957
作品紹介・あらすじ
日本語の表記にとって漢字は不可欠の文字である。にもかかわらず、文字としての漢字がどのようにして生まれ、本来どのような意味を持つものであったかを知る人は少ない。中国古代人の生活や文化を背景に、甲骨文や金文、および漢字が形づくられるまでの過程をたずね、文字の生い立ちとその意味を興味深く述べる。
感想・レビュー・書評
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昨年から外国人や日本・ヨーロッパミックスの子供たちに日本語を教え始めた。漢字が苦手という14歳の子に漢字を教えるための準備運動のつもりで購入した白川静先生の本だが、恥ずかしながら、日本語を教える機会がなければ手にとって読むことはなかったと思う。漢字はけっこう面白いんだなと思い始めたのが漢和辞典を引っ張り出して読むようになってから。漢字を学ぶのも教えるのも、反復よりほかに方法がないのでは・・・と思っていたが、なんと狭量で浅はかな考えだったのか。私が受けてきた国語教育、適当に参加して適当にやってきたのは間違いだった!と40代半ばをすぎで気がついた。というか、漢字を学ぶ楽しみがあったはずの小学生から中学生までの学習時間を惜しいと思った。
右と左が、祝詞を入れる箱と呪術に使う道具からきているとか、「白」が髑髏の白だったとか、目と耳は神を見て、聞くという大切な器官だったとか。私の名前は聡子だけど、素晴らしい字じゃないかと感動した。漢字が古代の人々の生き方、神との向き合い方を表しているなんて、中学生の私だったら絶対夢中になったと思う。もしかして国語便覧には書いていたんだろうか。見逃していたのか。
漢字が語りかけてくる。その声を聞くために、「彼らの正しい形を知らなければならない」。だから、甲骨文や金文を仔細に調べ、整理し、体系的に組織していく。そこに一定の法則を見つけ出すことで、そこから生まれてきた字をさらに知ることができる。また、当時の文化や風俗習慣がその文字一つ一つに現れ出ていくる。「文字は、その成立の当初においては、神とともにあり、神と交通するためのものであった」という言葉には感動した。文字は人間の理性を表現するためではなく、神の言葉を記すために生み出された。人間の王は神のことばの代弁者として、その権威を記述できる文字を通じて確立した。歴史の始まりがそこにある。漢字は当時の文化、歴史自体が文字に現れているため、文化財ともいえるのである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/702129 -
さまざまな漢字の成り立ちについて、著者自身の解釈が紹介されている本です。
白川漢字学の全体像は、『字統』『字通』『字訓』(いずれも平凡社)の三部作にまとめられていますが、本書では著者の研究成果の一端が語られており、白川漢字学とはどのようなものなのかということをうかがい知ることができる内容になっています。古代中国の神話や呪術と、それらに根ざした古代中国人の生活や思考をもとに、漢字の成り立ちについて大胆にも思われる解釈が示されており、おもしろく読みました。
本書が岩波新書として刊行されたことに対して、漢字学の権威である藤堂明保が不満を表明していたことが、高島俊男のエッセイで語られていたのを記憶していますが、著者の解釈はかならずしも研究者からの同意を得ているものではないのかもしれません。まったく素人のわたくしには、著者の解釈が漢字の成り立ちについて考えるうえで、興味深い視点を著者が提示しているように思えるのですが、「あとがき」で「文字は当時の思惟のしかたに従って、厳密に一定の原理によって構成されている」と書かれているように、体系化への強烈な志向が、ときに大胆にすぎると感じられる側面をもたらしているのではないかという気もしています。 -
文字は神であった。
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ムズいよ‼️
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漢字と呪術のつながりを論じた本だが、まるでパズルのように作られた漢字を、呪術の視点から解いていくところは爽快で、読んでいて快楽さえもたらされる。
伏せるという字は、人の前で犬がふせてうかがっていると言われているが、犬を埋めて呪いを防ぐための字であると論じられるところなど、古代エンターテイメント世界の広がりを感じられて、大興奮する。
天災ばかり起こる時、呪術の長でもあった王が最終的に殺されてしまうなど、「呪」をテーマとして、古代社会を浮かび上がらせる筆致は見事だし、万葉集との関連性もちょくちょくと書かれていて、面白い。
【ここに歌われている客神は、おそらく殷の祖神であろう。古代にあっては、国を滅ぼすことは、その民人を滅ぼすことではなかった。その奉ずる神を支配し、その祖霊を支配することであった。神霊は滅ぼしうるものではない。それで滅亡した国の子孫を残し、その聖処の社には光をおおい、先祖の祭礼はつづけさせた。王朝のまつりのときには、その神霊にもまつりに参加させて、その威霊を新しい王朝のためにささげさせるのである。それで異族神は、王朝の祭祀に招かれ、舞楽などを献ずるのであった】P69 とあるのは、白川は日本のこともきっとイメージしていただろうと思う。 -
1 象形文字の論理
2 神話と呪術
3 神聖王朝の構造
4 秩序の原理
5 社会と生活
6 人の一生
著者:白川静(1910-2006、福井市、中国文学) -
新 書 IS||821.2||Shi
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漢字の話をごりごりするのではなく、歴史を主軸に置いた展開にちょっと面食らった。
勝手に、漢字の成立過程からその意味を改めて捉え無おす、的な展開を期待していたので。
その肩透かし感がずっと消えなくて、集中して読めなかった。先入観って怖ろしい。
日を改めて再読したいと思う。