女性労働と企業社会 (岩波新書 新赤版 694)

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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306948

感想・レビュー・書評

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  • 企業社会において、女性の労働はどのような位置づけか?男女平等なんてありえるのか??


    細かい事例もときたま紹介しているけど、どっちかっていうとマクロの一般論って感じ。
    事例ばっかり集めて感情的になるのではなく、いろんな角度から分析していて冷静な視点で描かれていて、面白かったー。


     
    昔は女は結婚退職までの「腰かけ」の仕事で数年勤めればよかった。性別によって採用区分が違っていて、男の仕事を女が補佐する形だったこと。では今は??

    今も男の仕事を女が補佐する形はあまり変わっていない。建前上は性別によって、採用・昇進に差をつけてはならない。
    だが「能力主義・結果主義」の名のもとに、結局女性のほうが昇進しにくいのだ。
    それは男は結果が見えやすい仕事を割り振られるのに対して、女は「必要だけど数値化しづらい」、結果が見えにくい仕事にばかりつかされているから。

    そしてそれは仕事にも性別(?)が割り振られているのではないかと。
    「きつい」「闘争的」「汚れ仕事」などなど、「前線」で働くのは男の仕事。
    後者は「気配りが要求される」、「細かい仕事」などのいわゆる「女性ならでは」の仕事。つまり補佐的業務を「女性に向いている」としておしつけている。

    結局「性別で差別してはいけません」⇒「性別じゃないよ、『能力』に応じた仕事を割り振って、それに見合った処遇を行っているんだよ」って理屈が通っちゃうのかぁ・・・


    あと「能力主義」社会における「能力」=夜中も土日も働ける能力をさすらしい。
    すなわち女性は家庭のこともやらなければならない=どうしても勤務時間に制約が出る=就かせる仕事にも制約が出る=昇進が遅いのは仕方ない。
    という論法。


    でもこれってさ、「仕事と家庭の両立」なんて女にだけ押し付けられているってことじゃん。男も女も働くなら、男も同等に家事やれって思うww
    二人とも忙しくてやり切れないなら、外部に委託するって選択肢もありだよね。
    女が働くには「家事と育児に支障をきたさない範囲で」旦那の許可をもらってから、なんて話も当然のようにあるしね。


    そして今も女性を看板としかみていない企業がたくさんあるんだよね。銀行は美人=受付、ブス=金庫番…と客から隠すらしい。
    不動産会社もあまり女を採用しない。ただ会社側の事情からすると、土地の利権が絡んで、ヤクザが乗り込んでくるために、仕事によってはやはり強面の男に任せたいらしい。(土地の下見をしていたらヤクザに追っかけられたりとか!!)
    これは単純に女性差別だとはいえないよなー、でもなんだか腑に落ちないんだよなー・・・。


    だけど女の人皆がバリバリ働くのを望んでいるわけではないし、難しいなぁ。

  • 少々古いデータであることは否めず、今現在の数値が気になった。
    働きたい女性側と、それに対する社会体制/企業側の不備への対抗を示す論としては良書だろう。
    ただ、なぜ女性の職業カーブがM字型カーブを描くか。
    これについては、企業側、社会側に対する問題視的では足らず、女性が「自立し働くこと」を当たり前としない「社会」について明かすこともまた別に必要だろう。
    これは経済学的視点に立ったときの職業カーブの問題指摘。

  • 三十代でこの本に出会えて本当に良かった。とんがってた若い頃には理解できなかったと思う。
    社会に対して、また自分自身に対してモヤモヤわだかまっていたものが、解きほぐされ、考え続けるための手がかりを与えられた。労働問題に関してだけでなく、生き方に関しても目が開かれた気がする。

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著者プロフィール

1938年三重県四日市市生まれ。1961年京都大学経済学部卒業(1969年経済学博士)。1996年社会政策学会学術賞受賞。甲南大学名誉教授。著書に、『国家のなかの国家──労働党政権下の労働組合・1964-70』(日本評論社、1976年)、『新編 日本の労働者像』(ちくま学芸文庫、1993年)、『能力主義と企業社会』(岩波新書、1997年)、『女性労働と企業社会』(岩波新書、2000年)、『リストラとワークシェアリング』(岩波新書、2003年)、『格差社会ニッポンで働くということ』(岩波書店、2007年)、『労働組合運動とはなにか──絆のある働き方をもとめて』(岩波書店、2013年)、『私の労働研究』(堀之内出版、2015年)、『過労死・過労自殺の現代史──働きすぎに斃れる人たち』(岩波現代文庫、2018年)など多数。長年の映画ファンとして、その分野のエッセイストとしても知られる。

「2022年 『スクリーンに息づく愛しき人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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