読書力 (岩波新書 新赤版 801)

著者 :
  • 岩波書店
3.73
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本棚登録 : 5796
感想 : 800
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308010

作品紹介・あらすじ

本を読むことの意味は何?案外答えにくい問いに、「読書によって…の力がつく」という形で考え、コミュニケーションの力、人間を理解する力との関わりを示します。自分をつくり、鍛え、広げることが、読書とどう結びついているかを述べて、あらためて読書の本質を見つめます。心に残るフレーズ、工夫の手がかりも満載です。

感想・レビュー・書評

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  • 私が求めていた読書力とは大きくかけはなれていたので。
    読書を楽しむために意識すべきこと、というより賢くなるためのツールとして読書をどう扱うか、が書かれていた感じ。こんな読み方をしても楽しくない!と思ってしまったけれど書いてある内容に沿っていれば差はあれど語彙力は抜群に伸びると思う。

  • 教養があると言う事は、幅広い読書をし、総合的な判断を下す事が出来ると言う事
    本を著者そのものだと思う気持ちはその本の効果を格段に高める
    その著者と一対一で過ごした時間は自分の人生にとって貴重なものとなっている。
    読書は人間の幅を広げ、器を大きくする。

  • 読む、書く、話すことにおいて読書がいかに重要か学べ、本を見たくなった。

  • 読書のモチベーションがますます高まりました。

    読書はする、しないかは自由ではなく、
    「読書はしろ‼️」と言い切るところが、著者の読書に対する重要性をぐっと感じた。

    文庫100冊をまず目標にして、著者のおすすめのリストから読み始めたいと思います。

  • 読書をすることで何が得られるかがわかる本。本をたくさん読んだ人は文章にも重みがあると感じた。本を読むことで、教養を深めたいと思った。おすすめの本も多く紹介されていた!

  • 中学生の頃に出会いたかった本。読書力の低下を危機として捉えている著者が、独自の経験から本の大切さを説いている。

  • 読書のことについての文章を読むと、読書がしたい!と思う。(本を読みながら)
    今まであまり偏らない読書をしてきたつもりが、それは極々狭い世界でのことだった。こういう本は苦手だ、この作者は合わない、とそもそも選ばないことの方が多い。少し昔に書かれた、外国の作者だ、というだけでアレルギー反応を起こし、難しいから無理と思ってしまう。そういった読書では読書力があるとはいえない。食わず嫌いをして成長していない、ということをひしひしと感じた。この本を読むだけで普段読んでない本を読んでみようという気持ちにさせてくれる。文庫100冊新書50冊!
    2022/09/03 00:59

  • 齋藤孝さんの本は本当に読みやすい。
    生理食塩水を体に入れるみたいに、なんのひっかかりもなく読めてしまう。

    読んだのは数年前なので、内容はだいぶ忘れてしまったけれど、「おもしろかった」と当時感想を抱いたのは覚えている。

  • 日本には海外の聖書のようなtheBookがないからBooksが必要だったという言葉に凄く得心させられた。(皆で教会などで読み聞かせされることで共有される倫理等が日本人には無いため様々な本を通して自ら形成していかなくてはならない)
    今年は様々な思考の知識人の考えを本を通して触れ、学び、自己形成に繋げて行きたい。

  • この書籍では、「読書力があるか」の判断基準として「文庫100冊、新書50冊を読んだ」を挙げている。この基準が正しいかどうかはともかく、明確な目標を提示してくれている点と、読書は「してもしなくてもよい」ではなく「しなければならない」と言い切る点など読書欲を駆き立てる内容が書かれています。

  • 読書のススメ。筆者の読書熱が強すぎて、読書至上主義・読書万能主義になってしまっている気がするが。。。まあ、読書を通して自分の間口を広げ、成長の糧とすべしという筆者の意見には同意するけれど。本書を含めすべては他山の石とね。
    読書をスポーツととらえて訓練の有効性を説いたり、線引き、音読、読書会に内容をマップ化するなど、読書のテクニックもいろいろ紹介されており、参考になる。

    巻末には筆者が選ぶ入門百冊があるけれど、既読は一割強だった(笑)残りもそのうち参考に読んでみるかな。

  • 読書欲がかなり掻き立てられた。
    筆者の読書好き、読書を普及させたいという情熱がひしひしと伝わってくる。
    読書習慣を身に付けたいと思っている人はまずこの本を読んでみては。

  • まだまだ読むべき本があるんだなと思った。あと音読がなぜいいかが理解できた。

  • ちょっと、強引に勧める感、説教感があるものの、著者の読書愛は伝わってきた。
    必ずしも著者の勧める方法で読書はできないなとも思った。
    読書は自分の好きな方法で一生続けていきたいなと思う。それが一番楽しいはず。

  • 自己形成の王道読書
    精神の緊張を伴うどくしょ
    新書50さつ
    要点をつかむのが早い
    文庫系100わざか、よねん
    150以上は教養でてる
    長距離ランニング、継続は力なり
    まんがすなっくがし、アニメはスープ

    児童文学は離乳食
    入試レベル推理とか
    永久歯ヘッセ太宰治
    はがハエ変わる読書
    境界線の本
    狭き門ジード
    BOOKS
    自分を作る最良の方法
    教養があるのは幅広い知識を持ちそうごうてきなはんだんができる
    思考停止していた
    複雑さの共存
    ビルドゥんぐ
    教養主義、三太郎の日記
    一人で読書を楽しむ時間
    自分自身と向き合う時間
    単独者として門を叩く
    身銭を切る、語り描けてくれるいちいち勝負 
    出会いが人を作る
    他社といい関係を築く
    よこ一段たて6だん
    自己肯定感
    本は複数

    著者の人格

    本の網の目世界観
    本は背表紙が大事
    本はかって読むもの
    ゲーテとしみず

    ゆんぐとふろいと

    系譜の意識、スタイルがにてる

    本は世界観

    図書館はマップっくりのばしょ
    インド放浪ふじはら

    暗黙知やしんたいち

    じぶんひとりのけいけんではなかったのか肯定してくれる

    共感をもって読める本

    ほめられる



    こうしめいいきることのいみ
    とるにたらないこと
    わがいのちげつめいにもゆ、きけわだつみのこけ

    じぶんとことなるものつきあい

    人間劇場、このよをぶたいとみ世の人々を役者とみる

    ジャン・クリストフ ベッドで
    カラマーゾフ

    ちょうへんが習慣としてしみこむ

    ばしょを変えて本を読む

    金沢室生犀星
    山形県藤沢修平

    生活とオーバーラップ

    風の歌を聞け村上春樹
    ベートーベンの障害ロマン・ロラン、大9ばん
    読書が体験になる

    あこがれ
    倫理観を持たせるのが難しい

    倫理観を養う読書

    ためらうことためること
    人間は努力する旅に迷うものゲーテ

    すすみつつもためらうをわざかする

    傾倒すればするほど開かれていく

    摩擦を力に変える

    わからなさをためておく
    反復練習スポーツ部活、

    ここは部活だから

    くしゅら障がい者、よみきかせ
    心のなかに豊かの世界

    ぎるがめしゅのものがたり三部作
    世界最古の神話
    イマジネーションをそだてる
    イメージか能力


    いのちとはなにか
    たしゃのためにどういきたらいいのか
    音読した方がのうかっせいか

    あおからあか

    主観と客観の切り替え
    本の趣旨
    本のなかでじぶんが重要とピント来るところに線を引く
    思考の技

    読書ギアチェンジ

    ローギア哲学
    大切なとこがどこか判断する
    緩急つけて読む

    斜め読み

    広く深くは可能

    本江とに部屋割り、ふくせんろ

    会話を受け止め応答する
    コミュニケーションの質

     会話に脈絡があるかどうかという違い

    親しい友人と話すとき

    脈絡のある話し方、相手の話の要点をつかみその要点を引き受けてじぶんの角度で切り返すことによって

    相手のいってることの幹をおさえてそれをよりのばすように話をするのが会話の王道

    この幹を捕まえる力は読書を通じてようやく力を鍛えることによって格段に向上する

    じぶんの言葉で言い換えるレスポンス応答

    言い換え力、ごい

    論旨が具体例と一緒に

    じぶんのいったキーワードが入り込んでいるか

    5ふんまえに話された相手の言葉を引用して会話に組み込める技において
    現在の文脈そのものちおいてはでてこない
    言わばすでに地下にもぐってしまった水脈をもう一度掘り起こす

    もっとも気が利いてるのは、話している相手が繋がっていないものをつなげてあげる
    めもをとる習慣

    会話をクリエイティブにするためにはじぶんの思考と相手の思考を混ぜ合わせる

    あ、ここはあとだだいじになりそうだなというところ

    常に脈絡を考えながら読書をし会話をするとちうこと

    すとらいくがくるばってぃんぐせんたー


    ピンポンと卓球
    話し言葉はピンポン
    卓球は書き言葉

    読書たくさんすると卓球部にはいる
    ふぉあは話し言葉は
    書き言葉はバックハンド、意識的な練習
    描くことは人工的
    おんぐ
    冷静な知性が漂う
    意味の含有率
    切れのよい話し方
    読書は自分を客観的にとらえる支店の獲得につながっている
    コミュニケーションはちかづくこととはなれること両方ができることで円滑にできる
    ペダンティっく
    ブックリストの交換
    読書会
    マッピングコミュニケーション

    ちしきがほっとなときにひとにはなす
    さんよにんに同じ内容を話す
    具体的な言葉を引用しながら話す
    好きな分を写して作文にする
    三色作文
    他の本からのいんよう
    描き写すことで定着
    読書トレーナー、
    本棚をみせる
    本を紹介する
    粋の構造 九鬼周造
    凄みのある作品
    ワンポイントアドバイス
    図書館の支所
    授業の最初にじぶんの読んでる本の話をしろ
    本の紹介
    てんぴょうのいらか
    うめはら十字架
    本のプレゼント
    好きなこに刺繍をプレゼント
    どれでもいいからもっていっていいよ
    おかきよし、しんしょうじゅうわ
    こばやしひでおとの対話 人間の建設
    印象に残る一文を見いだすと言う意識
    気に入ってる一文にふせんをつけてだれかにプレゼント、手元に置いてもらう
    精神のレベルの高い交流
    たかせぶね、参照だ由宇
    おーへんりおおくぼやすお
    はつかねずみと人間
    最高の上達論
    忘れられた日本人
    ゲーテの対話
    ゴッホ的版画家
    ロマン・ロランベートーベンの
    ゴッホの手紙
    せみしぐれ
    眞の山
    ヘッセでミアン
    山月記
    歎異抄
    ものくうひとびと
    はかい


    しおかりとうげ
    サクリファイス
    沈黙


    すなのおんな
    ゆめじゅうやなつめ

    聞くと刀

    夫婦どっちもどっち
    ドストエフスキー

    ちぇーざれぼるじあ

    生き方の美学

    午後の最後の芝生
    どろのかわ

  • 丁度自分の読書スタイルに疑問を感じていた折、小泉信三著「読書論」などと共に購入。年代の違いもあるがこちらはより平易な表現で具体例を交えつつ著者の読書に対する態度が記されている。新書だが自己啓発本と似たような軽薄さは感じるものの、既知のものばかりだと吐き捨てられるほど含蓄が深くない故、そこそこ身になる内容ではあったように思う。根拠が弱いとの誹りは否定しかねるが、新書50冊文庫100冊というのは良い指標ではあると感じたためひとまずそれらをこなしてから改めて評価を下したい。

  • 齊藤先生の読書愛に溢れた1冊。
    本を読むことが自己形成につながり、人生の豊かさにつながることを述べている。本の様々な読み方や、楽しみ方についても触れているほか、おすすめ文庫も巻末に載っている。読んでいたら読書熱が高まった。

    ただ、うまく言語化できないんだけど、著者が「読書の幅が狭いと、一つのものを絶対視するようになる。」と言いつつ読書に対して絶対視しているような文体がどうにもちょっと引いてしまったので星3。
    読書が自己形成に大きな役割を果たすことや、人生において豊かさをもたらすこととか、大まかな内容については同意。

  • 感想
    難書を噛み砕く。ただひたすらに読み続け筆者と対話を試みる。もしできないなら周り道が必要。自分を高めるための読書に近道はない。

  •  岩波新書のおすすめコーナーにあり、以前からよく見かける筆者だったので読んでみた。

     本書の感想を結論から言えば、読まなければよかったと思った。現時点でこの筆者の本はもう読むつもりはない。なぜ筆者の本が平積みされるほど売れているのかも疑問だ。目新しいことも特になく、「序」において筆者の愚痴のような読書論が語られるが、啓蒙的で本当にイライラし同意できなかったことが主な理由だ。

     古典的な名作などは手放しで賞賛し、読めばレベルが上がるなどと主張する一方で、推理小説やSFなどを小馬鹿にしている。そうやってSFを乳歯の読書とバカににしておきながら最後の100選でオーウェルの『1984年』を選出するのは滑稽で仕方ないし、許せなかった。星新一が小学生でも読めるから読書力が上がらないといったくだりも同様に思った。

     上記をはじめとし、筆者は読者について大層なことを偉そうに語る。それにもかかわらず、読書力の基準として、いわゆる「文学」の文庫本100冊、新書50冊を読むことを提示してきたことには落胆した。大層なことを書く割に根拠が弱く偉そうに語ることかと思った。

     これ以上批判をするのもファンから怒られそうだしやめておく。ただ、自分と異なる主張を読むことができたのは良い読書体験だったと思う。

     


     

  • 昨年も読んでいましたが、レビューを書くために改めて再読しました。
    そもそもこの本を手に取ったきっかけは、

    ・効果的な読書方法があれば知りたい
    ・おすすめの本・読むべき名著を知りたい
    ・読書によってどんなことが得になるか知りたい

    という点を知りたいと思ったからです。

    最も知りたかった効果的な読書方法については、「3色ボールペンで線を引きながら読む」ことで自分と本の内容の距離感を詰めることができる点を知りました。
    やり方として、

    ・赤:本の趣旨としてすごく大事だと考えるところに
    ・青:まあ大事と考えるところに
    ・緑:主観的に面白いと思ったところに

    という説明がされています。
    ただ、自分はそれに加えて「この本から取り入れたい」という点に対しても線を引きながら読みたいと考えています。

    それ以外にも以下の気づきを得ることができました。

    ・読書は知能指数でするものではない。読んだ蓄積によってできるようになる
    →「継続は力なり」という言葉の重要性を改めて感じました。

    ・大量の読書がいわば宗教による倫理教育のかわりをなしていたのではないか
    →聖書のような絶対的な1冊がない日本だからこそ、多くの本を読んで様々な考え方があることを学ぶ必要があるのはその通りと感じました。

    ・読書を通じて自分の体験の意味が確認されたり、自分ではぼんやりとしか分からなかった自分の体験の意味が読書によってはっきりすることがある
    →このことをまさにこの本を読んで気づきました(笑)

    ・読書をするとコミュニケーション力が格段にアップする
    →話すときの議論の組み立て方や、相手の話を理解するときの「言い換え力」、メモをする力などは必要だと仕事をしているとすごく感じます。

    ・本を読んで知識がホットなうちにとにかくその内容をすぐ人に話すことで知識が定着する。
    →やはりアウトプットが大事ということで「アウトプット大全」に記載されていることと同じ。これは引き続き継続したいです。

    巻末にはおすすめの文庫100選も掲載されていますので、自分の本棚のラインナップにも加えていきたいです。

  • 792

    本当に、「本を読む読まないは自由」なのだろうか。 私はまったくそうは思わない。少なくとも大学生に関しては、百パーセント読書をしなければ駄日だと考えてい る。こんなことは大学ではかつては当たり前のことであった。しかし現在は、「なんで読書しなくちゃいけない の?」という問いに答えなければならない時代になっている。「なぜ人を殺してはいけないか」について、まじめな 議論がなされる時代なのだから、読書の必要性について疑問が出されるのも無理のないことなのかもしれない。

    経済活動にせよ、詰まるところ思考力である。日本経済の危機が叫ばれているが、読書力の復活こそが、 日本経済の地力を上げるための最良の方法だと私は考えている。

    さて、私が設定する「読書力がある」ラインとは、「文庫百冊・新書五十冊を読んだ」というものだ。「力」を「経験」という観点から捉えた規準だ。

    新書は文庫と判型が違うだけでなく、従来は内容上の一定の性格を持っていた。岩波新書と中公 新書が、新書の伝統を日本においてはつくった。学問の大家が一般の人にもわかりやすい形で、しかも内容の質を落 とさず書く、というのがこの二つの新書のスタイルであった。講談社現代新書は、これらより読みやすい文体で気楽 に読めるスタイルを取っていた。

    文庫系をひと通りこなした後に、新書系の読書が折り重なってくるということになる。時期的に言うと、中学高校で 文庫本に馴染み、高校の終わりから大学二年くらいまでが新書時代となる。これがかつての新書との出会いの基本的 イメージだ。 現在は、新書は学生が読むものではなく、三十代から五十代までの男性が中心に読むことが主となっている。つま学生に新書を読む習慣がなくなったということだ。学生は、新書の主たる購買層ではない。これは重大な変化だ。学問をコンパクトにまとめたものは、学問の入門書として最適だ。学問をし始めるはずの大学生がそれを読むこ とは自然であるのに、新書を読む読書習慣が大学生にないとすれば、それはむしろ不自然なことだ。 私の考えるところでは、新書を読むことが、読書力の重要なラインだ。

    新書は、より大きな知識体系への入り口になっている。1冊を読めば、よりレベルの高いものを二冊、三冊と読みたくなる。そうした吸引力がある。「知識欲」というのは刺激されれば、誰にでも本当に生まれてくる。新書という読書文化のスタイルは、まさにこの知識欲をかき立て、促進する最良の糧だ。

    新書五十冊をこなしたかどうかは、私の経験から言えば大きな違いとなっている。五十冊というのは、およそ月二 冊で二年、月一冊で四年といった現実的な量だ。十冊程度ではまだ「技」として不安定だが、五十冊になると新書系の読書に確実に慣れてくる。

    私は大学の教師をやっていて、大学生が新書を読む習慣がもはやないことを知っている。これを私はあまりにもっ たいないと思うので、学生には新書読書をひたすら勧めている。というのは、新書は書かれてある内容に比して値段 が安く手軽だからだ。

    新書のイメージとして、知識を要領よくまとめているというイメージもあるだろうが、私にとっての新書は、もっ と著者の息づかいや志が感じられるものだ。優れた人物と二人きりで話が聞ける喜びを、私は新書から感じ続けてき た。読書力の基準として、新書を文庫とは別に立てたい思いが、私にはどうしてもある。

    私は入社試験や大学入試などで、この方式が採用されることを望んでいる。大学入試では、社会科などでは些末と も思える知識が相変わらず問われている。「受験勉強をするために本を読めない」というのは、本末転倒でばかげて いる。大学に入ってからの勉強は、文系はとりわけ本を読むことが中心のはずだ。理系でも論理的思考を鍛えるのに 読書は必須だ。多数の論文を的確に読まなければならない。その大学に入学後に本当に必要とされる力を問うシステムが、入試の理想型である。

    私は、読書力の成を学校教育の最大の課題だと考えているので、自分が主催している教師の研究会の参加者たち に、中間や期末試験に読書力を養成する問題を組み入れてほしいと提言した。

    人間の総合的な成長は、優れた人間との対話を通じて育まれる。身の回りに優れた人がいるとは限らない。しかし、本ならば、現在生きていない人でも、優れた人との話を聞くことができる。優れた人との出会いが、向上心を刺激し、人間性を高める。 読書力さえあれば、あらゆる分野の優れた人の話を落ち着いて聞くことができる。実際に面と向かって話を聞く場合よりも、集中力が必要だ。言葉の理解がすべてになるので、緊張感を保たなければ読書は続けられない。自分から 積極的に意味を理解しようとする姿勢がなければ、読書にはならない。読書の習慣は、人に対して積極的に向かう構 えを培うものだ。読書はコミュニケーション力を育てる。これは、第血章の主題だが、人間の極端なスタイルをあれこれと読書をして知っておくことは、コミュニケーションの幅を広げてくれる。日常ではどうしても自分と同レベルや同種類の人間とつき合いがちだ。その方が負担が少ないからだ。しかし、人生の醍醐味は、自分と異なる者とのつき合いからも豊かに生まれる。現実の人間とのつき合いの世界だけでは味わうことのできない、強烈な人間とのつき合いが本の世界ではできる。

    本の著者は、それぞれ自分の主張やペースを持っている。そうした複数の著者と付き合うことで、聞く力が練れて くる。本によっては、非常にわがままな著者もいる。それに著者はたいてい個性的だ。様々なタイプの著者に数多く 付き合うことで、いわば人間が練れてくる。人の話をきちんと聞き続けることができるだけでも、相当社会性は高い と言える。

    気に入った文章をノートに書き写すのでももちろんいい。 私の場合は、自分の文章の中に引用として、感銘を受けた文章を組み込む形で書き記すことの方が多い。これは作文 のコツでもある。まったく何もないところから、自分の内面からのみ言葉を総ぎ出すのは意外に難しい。現実に起 こった出来事を言葉にするのもなかなか大変だ。しかし、書かれた文章を引用しながら文章を書くのは、それよりは 難しくはない。書き写したいと思うほどの文章であれば、なぜそれに感銘を受けたのかを書き綴ることはできやす い

    私は中学高校の教師になる人を育てる仕事をしている。学生には、もし教師になったら、授業の最初の三分ほどは 必ず、自分が読んでいる本の話をするようにしろ、と言っている。常に現在進行形で読んでいる本を紹介し続ける。 これは教師自身にとっても刺激になるし、今読んでいるという臨場感があるので、相手にも伝わりやすい。

    私がそのとき選んだのは、世界的数学者の岡潔のの『春宵十話』(角川文庫という本だった。岡潔は関数論において世 界的な業績を成した数学者だが、文学、哲学の造詣も非常に深い。天才的な直感力を生かした鋭い批評が特長だ。小 林秀雄との対談『人間の建設』(新潮社という本もある。その本は内容のレベルが高く、私には非常に刺激的だった。 その機会なくしては出会うことのない本であった。今でも私の日の前の本棚にはその本がある。その本を見るたび に、高校時代のその本のプレゼントの授業のことを思い出す。これも、私の読書を加速させてくれた一つの大切な きっかけだった。

    本は必ずしも全部読まなければいけないというものではない。ほんの一行でも一生の宝物になることもある。全部 読み切らなければいけないと思うから、読書が進まなくなる。印象に残る一文を見出すという意識で読むのも、読書 を進みやすくするコツだ

  • The bookがないからBooksが必要だったという部分で、お〜〜となった。
    読書をするの者は孤独で、しないで済むのならそれに越したことはない…というような言葉をどこかで読んで、ずっとそれが頭のどこかに残っていた。
    しかし、読書という行為、好きでいること、それらを肯定してもらえているようで嬉しかった。

  • 本は読みたい人だけ読んだらいいじゃないか、強制するものではないと思っていたが、筆者は学者、教育者として、読書しなくてもよいと言う人を舌鋒鋭く批判する。本を読むことの大切さを熱く説いている。2002年に初版された本書。筆者のメッセージは届いたのだろうか。

  • 図書館に行った時、普段読んでいる小説というジャンルが数ある本の分類の一つに過ぎないと気づき、もっとたくさんの本を読んでみたい、と思ったのがこの本を読んだきっかけです。

    読書は単に楽しめるだけでなく、さまざまな力が身につくことをわかりやすく記しており、今後の読書意欲を掻き立てられました。

    著者のいう読書は、「多少とも精神の緊張が伴う読書」であるため、普段読んでいる大衆小説を否定されたような気分になる方がいるかもしれません。しかしあくまで読者を自己形成の教材と捉えているだけだあり、楽しむことを悪としているわけではないと思ったので、自分は納得して読めました。

  • 心地の良い難しさ 
    文庫100冊新書50冊
    文学に目を通してみようと思った

  • 読書を始めるならまずこれを読むべき。
    本嫌いには本に興味を持ってもらう力があるし、本好きには更に読みたくさせる力があると思ってる

  • 読書はしなければならないもの。
    読書は人を作るから。

    めちゃくちゃ共感!
    友達や信頼できる人が周りにいなくても本があれば助けてくれる。

    今の自分は本に形成された部分が5割を占めてるかもしれない。

    1対1の会話。じっくり読んで楽しむ

  • 3.72/5457
    内容(「BOOK」データベースより)
    『本を読むことの意味は何?案外答えにくい問いに、「読書によって…の力がつく」という形で考え、コミュニケーションの力、人間を理解する力との関わりを示します。自分をつくり、鍛え、広げることが、読書とどう結びついているかを述べて、あらためて読書の本質を見つめます。心に残るフレーズ、工夫の手がかりも満載です。』


    まえがき
    (冒頭)
    『日本ではいつのまにか、本は、「当然読むべき」ものから「別に読まなくてもいい」ものへと変化してしまった。』


    『読書力』
    著者:齋藤 孝
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    新書 ‏: ‎210ページ

  • 今年も読書頑張る。

  • 読書欲が落ちてきたら読み直す本。
    著者の斉藤さんがいかに読書が素晴らしいかを熱弁している。読書に対しての理論立てて説明する部分と感情で説明する部分があるところが良い。

    結局のところ読み方は自由であり自分の人生にどう活かすかも自由であるところに読書の良さがあると思う。

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著者プロフィール

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。教育学、身体論、コミュニケーション論を専門とする。2001年刊行の『声に出して読みたい日本語』が、シリーズ260万部のベストセラーとなる。その他著書に、『質問力』『段取り力』『コメント力』『齋藤孝の速読塾』『齋藤孝の企画塾』『やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法』『恥をかかないスピーチ力』『思考を鍛えるメモ力』『超速読力』『頭がよくなる! 要約力』『新聞力』『こども「学問のすすめ」』『定義』等がある。

齋藤孝の作品

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