Jポップとは何か: 巨大化する音楽産業 (岩波新書 新赤版 945)

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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309451

感想・レビュー・書評

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  • 気が滅入る話続出。

  • 『Jポップの定義』という意味ではなく、日本の音楽は日本のビジネス界、産業にどれだけ影響を与えたか。という事が大体のメイン。
    例としては、マスメディアと音楽(邦楽)の関係、アナログからデジタルへの移行と邦楽の関係、そういった事を詳しく書かれてある。そしておおよその他からの文献などか資料である。
    にもかかわらず、筆者はあとがきに「日本のポピュラー音楽産業の全体像を分析的にとらえ、正確に記述した本や資料が見当たらない。」と書いてある。
    しかし、たった3ページからでもこの本から与えられた情報量というのは、とかく濃いものがあった。
    たったひとつ”カラオケ”や”CD”というものを語るだけでも、その歴史的背景、経緯などの資料や記事を持って来、そこで筆者が分析していた。その情報量には目を見張るものがあった。
     
    我々、日本人が今の音楽に対して求めているもの(筆者は「ファンタジー」や「ナルシズム」などと述べている)への文献も深く頷けるものがあった。
    この本を通して、音楽を商品として見ている。という日本のマーケティング状況を更に垣間見れた気がする。
     
    個人的に「Jポップとは何か」という疑問を自分に投げかけた時、「Jポップ」というのは、需要の為に作られた音楽でしかなく、自然的にそれはマスメディアに影響された大半のリスナーにはウケがよい、そんな存在なのだと思っていた。
    というのは元々「ポピュラー」を和訳すると「民衆的な、人気のある」という意味になるからだ。そういえば、Bjorkがいつかインタビューで答えたコメントに「子供でも大人でも聞けるようなポピュラー音楽でなければいけない」と言った事がある。
    そうなると、国民的アイドル達がポピュラーか。というのが浮かび上がる。例として、モー娘。や浜崎あゆみやSMAPをあげよう。これらのグループ(または個人)は小学生も知っていて、更に主婦の方や、ご年配の方まで知れ渡っている。というのは、やはりレコード会社・事務所含め、圧倒的にマスメディアが大々的に宣伝している力の影響が多く、その威力はTVやタイアップ、つまり日本広告産業と深く関わってくる。それは内容の善し悪しは関係なく、「どれだけ民衆に浸透させて、音楽を買わせるか」というJポップの販売手法になってくるような気がしてならない。
    そういう販売の仕方や、内容の良し悪しを一部のリスナー(自分含め)が評価した結果、「煙たがれてしまうJポップ像」が出来上がってしまっていた。
     
    結局「Jポップとは何か」という疑問に対して答えうる返答というものは、とても漠然としており、筆者が言うように「ローカルである日本文化に生きる日本人とは何か」という新たな疑問の入り口になるのかもしれない。
    「産業界でのJポップ」として言える事も筆者の文献の通り、そろそろ製品内競争が始まってもいいのだと思う。
    インターネットやパソコンを通し誰でも音楽が作れ、自己主張の民衆化になった今の時代。Jポップをとりまくマスメディア達のイメージを覆し、もっともっと純粋に楽しく、ステキな音楽達が日本の中で溢れて欲しいものだ。

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著者プロフィール

1963年1月京都市生まれ。
1986年、京都大学経済学部を卒業し朝日新聞社に入社。名古屋本社社会部などを経て1991年からニュース週刊誌「アエラ」編集部員。
1992~94年に米国コロンビア大学国際公共政策大学院に自費留学し、軍事・安全保障論で修士号を取得。
1998~99年にアエラ記者としてニューヨークに駐在。
2003年に早期退職。
以後フリーランスの報道記者・写真家として活動している。
主な著書に『ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅』(ビジネス社 2013)、『フェイクニュースの見分け方』(新潮社 2017)、『福島第1原発事故10年の現実』(悠人書院 2022年)、『ウクライナ戦争 フェイクニュースを突破する』(ビジネス社 2023)などがある。

「2023年 『ALPS水・海洋排水の12のウソ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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