(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314301

感想・レビュー・書評

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  • 米国の動きを分かっておけば、少し先の日本社会の様子も分かるだろうと思って手に取った。政府から配られるクーポンで、低価格高カロリーの食品を買い、食いつなぐ低所得者層。クーポンが使えるスーパーは売り上げをのばす。やがて、体調不良となると、医薬品業界がこれを支える。大規模経営でないと、採算が合わない農業や酪農で、地域のつながりが破壊されていく。便利になる一方で、壊れていくもの、失っていくものもある。地域や文化の支えとなっている日本の農業は守っていきたいと、切に思います。

  • 今回は特にアグリビジネスを通して、世界覇権、支配を現実の物にする多国籍企業のやり口におぞましさを感じた。地雷禁止キャンペーンの時の各国に対するアメリカの妨害行動を想い出した。

    また、一度二極化すると「公共性」自体が危機に瀕するという実例を「サンディスプリング」に見た。まさか完全に民営化された自治体がすでに存在していたなんて。

    食の安全性が担保されない、したくない経営が、あのアメリカでこの時代にあるなんて。高度経済成長期の日本ならいざしらず。それもテレビしか見ないアメリカ人のライフスタイルに帰着し、マスメディアもその役割を放棄させられ、資本主義の論理、株主最優先の論理に翻弄させられているとは。

    エピローグでかすかな方向性が示された。分断された99%が団結する、という。1%が変わると言うことはやはりないのだろう。

    ・反内部告発法
    ・ALECという州議員と企業の蜜月体制
    ・ケンタッキーフライドチキンは26ドル買うと、21ドルが同社に、4ドルが加工業者、養鶏場には30セントしか入らない。
    ・モンサント社のライセンス契約のえげつなさ
    ・アメリカよりもひどいインドの格差
    ・食料はアメリカがもつ外交上の強力な手段
    ・多国籍企業の農業支配はイラクにも
    ・危機管理人という超法規的存在
    ・大統領討論委員会の2大政党以外の締め出し方針

  • 貧困大国アメリカ3冊シリーズの3冊目。これもすごーく面白かった。テーマとしては1冊目とも共通してるけど、この本はオバマ政権以降の話、特に遺伝子組み換え食品にまつわる構造についてなど。
    立法過程、とりわけ州法に大企業の力が働く構造や、法改正の裏の意図(そんな意図はないとは言っても実際に否定のしようのない解釈)を紐解く話を読むと、もはや恐ろし。自分もせっかく法律が専門なのだから、報道のサマリーだけに頼らず原情報にあたるべし、と思いました。
    農業や養鶏業が大資本に絡め取られていく構造も何とも言えない。資本経済を突きつめるとこうなってしまうのか。正確な情報へのフリーアクセスと意見発信という砦は守りたいもの。。
    さしあたり、食べ物買う際にはなるべく安いものをとの考えは改め、なぜ安いのか分からないものは、やめ、フツーの製法のものを求めたい、との思いを強くしました。

  • アメリカに住んでいなくてよかった……としみじみ思ってしまう。いやでも、日本もそうなってしまうのかも、TPPの締結で。読んだ後、背筋も凍る真夏の怖い読み物でした。

  • アメリカの政治が大企業に牛耳られ、さらに世界中に輸出されている現況が理解できた。恐ろしいことだ。日本でも貧困ビジネスといって、生活保護費をだまし取ったりする商売がはやっているようだが、アメリカでは堂々と政府を巻き込んでやっているのである。豊かな者は、ますます豊かに、貧しい者は、ますます貧しくなっていくのである。

  • 食の安全について考えさせられました。貧困ゆえ、安い食品を買わざるを得ないとはいえ、全く安全性が保証されない食品が出回っていることに恐ろしさを感じました。先進国アメリカの裏にある企業の癒着ー格差がこれ以上広がらない社会になってほしいです。

  • ええっ、本当か!と思うことばかりでした。
    アメリカの政治は、こんなに大企業に影響されてしまっているんだ。

  • 前作が面白かったため早速読みました。今回は主に食がテーマでした。あまりニュースとかで表に出ないジャンルでしたが、その影響力、破壊力の大きさに愕然としました。3作品を読んでみて、このようなアメリカ(に限らず多国籍企業)のシステムや考え方はやはり日本には馴染まないし、馴染ませたくないと思う。現在TPPの協議の最中ですが、いい勉強の機会になりました。最後に救いの兆しが見れたのはよかったです。201308

  • 多国籍企業のあまりの傍若無人さに怒る。
    1%と99%の対決。

  • もう、怖くて先を読み進めるのが嫌になるくらい。アメリカ論を読んでいるはずなのに、「アメリカ」を「日本」に置き換えてもそのまま通用しそうだから…。
    デトロイト市の破綻で本書が話題になっていたので手に取ってみたけれど、アメリカの破綻寸前の自治体がやっている政策は、今日本で徐々に徐々に進んでることそのもの。公務員批判、公務員の解雇(どこかの党が、国家公務員5万人削減を公約にしてましたね)、公共施設の廃止・民営化…。
    なんでもかんでもお金の話に還元して解決しても、得をするのは「1%の富裕層」だけなんだってことを、たくさんの例を挙げて解説してくれる本です。ホントに他人事じゃない!

    ページの多くを割いているアメリカの農業の劣化については、アンドリュー・キンブレル『それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?』(http://booklog.jp/users/junjinnyan/archives/1/448087805X)で読んでいて十分に分かっていたつもりだったけど、この状況がアメリカを超えて全世界に広がりつつあるという事実は怖ろしかった。人道支援と称してアメリカの種苗会社から提供された作物を育てると、その後は特許料を取られ、種を取れば訴えられ…。それまでその国で育てられてきた伝統的な作物は、アメリカの大企業の特許作物に取って代わられてしまうという。単一の遺伝子の作物ばかりが広がれば、地球の気候が変わったらひとたまりもないな。コワイコワイ。

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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