フォト・ドキュメンタリー 人間の尊厳――いま、この世界の片隅で (岩波新書)
- 岩波書店 (2014年2月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004314714
感想・レビュー・書評
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硫酸に焼かれた女たち パキスタン、誘拐結婚 キルギス、震災と原発 日本など直視するべき世界各地での現実を伝える。目を覆いたくなる写真、信じられない物事、すべて現実とは思えない。平和で豊かな国にいる身には痛々しすぎる。
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ジャーナリスト・・・と自称されるのかどうかわかりませんが、すばらしいジャーナリストだと思います。
新書で発表される意義は大きいと思う。
まだまだ世界の知らない、知らされていない部分を報告してくれるとうれしい。 -
916||Ha
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とても衝撃的な本だった。
著者は1983年生まれ。
これまでに岩波新書から本を出した人の中でもしかしたら一番若いのではないだろうか。
彼女の仕事はフリーのフォトジャーナリスト。8年前にアフリカのガンビア共和国の新聞社で写真を撮り始めたのがフォトジャーナリストとしてのスタートだった。昨年には世界的な報道写真祭で日本人初の最高賞を受賞している。
本書では6つの国が紹介されている。
せっかくなので各章のタイトルともに。
第1章 報道の自由がない国で-ガンビア
第2章 難民と内戦の爪痕-リベリア
第3章 HIVと共に生きる-カンボジア
第4章 硫酸に焼かれた女性たち-パキスタン
第5章 震災と原発-日本
第6章 誘拐結婚-キルギス
どの話もとても印象に残ったけれど特に4、5、6章が印象に残った。
4章で紹介される写真たちはこの本の中で最も衝撃的だった。写されているのは硫酸や塩酸で顔を焼かれた女性たち。彼女たちはDVを振るう夫のところから逃げ出したとか、愛人になるよう強要してきた知人の男に歯向かったとかを理由に、夫や知人の男に薬をかけられたのだ。強酸に溶かされて崩れた顔は痛々しく、何度整形手術をしても元には戻らない。そうやって長く続く苦しみこそが加害者の目的でもある。女性の地位の低さが感じられる出来事だと強く思った。
第5章は3.11後の日本。
「無事です」、「連絡ください」。避難所となった学校の廊下に設置された伝言板には無数のメッセージが貼られている。そこで懐中電灯を照らし、行方不明になった家族の安否情報を探す年配女性の写真は光と闇のコントラストが素晴らしく、見た瞬間に泣いてしまった。
第6章のキルギスの誘拐結婚は林さんを一躍有名にした写真たち。昨年7月の「ナショナルジオグラフィック」でもこの誘拐結婚は取り上げられた。
キルギスのある地域では男性が女性を誘拐し、無理やり妻にしてしまう悪しき習慣がある。誘拐された女性は男性の家に連れて行かれ、男性の親族から説得され、結婚させられる。誘拐された次の日には望まない結婚式。彼女は誘拐する男性側、誘拐された女性側どちらの視点からも取材を試み、写真を撮っている。この風習は伝統なのか、ただの流行なのか。揺れ動きながら彼女はシャッターを押し続けた。
この本の副題は「いま、この世界の片隅で」。そのタイトルが表すように世界ではたくさんのことが起こっている。それを少しでも知っていきたいと改めて思った。