ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)

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著者 : 広井良典
  • 岩波書店 (2015年6月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315506

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ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

  • 世の中が変わる中、生き方をどう変えるかを考えるための本

  • ドラッカーの専門であるマネジメント分野よりも経済学に近い2016年の今であればコトラーのマーケティング3.0などを読んだ方がリアルに感じられる気がする。何にせよテーマが広すぎるので、ここから「一番重要」と思ったことを記載するのは非常に難しい。そこで「一番重要」ではなく「一番興味ある」ことを記載する。それは「教育」だ。
     超高齢化社会を迎える日本において重要なテーマはいくつかある。定年の延長。労働市場の柔軟性。それらを乗り越えるために成人後の教育の重要性が謳われている。「人は、その人生のいかなる段階にいようとも、正規の教育を受け、知識労働への資格を得ることが出来なければならない(11章より抜粋)」この点で最も進んでいるがのアメリカのようだが、それでも若いうちに基礎資格を取得していないものを知識労働に受け入れることに躊躇している。日本でも近年は定年後に資格を取得する人は増えている。事実、中小企業診断試験では定年を迎えたであろう人々が多数受験している。だが勉強には高い講義費用を払わなければ独学するしかなく、ハードルは高い。少子化が進む中、学校というシステムを改めて見直す必要性があるように思えた。
     また社会セクターについても興味深い。家族だけではコミュニティとして不十分。また職場コミュニティも労働市場の柔軟性が進むと消えていくだろう。膨張する巨大都市に対して非営利組織などのコミュニティの重要性が語られていた。余談だが、先日のTVで経済学者ミルトン・フリードマンの孫(彼はGoogle技術者)が多様な社会システム、政治体制、法制度を持つ海上コミュニティの設立を進めていることを知った。今後はそういった様々なコミュニティがたちあがるのだろうか

  • 人間の長年にわたる営みを資本主義、科学、宗教、などなど、色んな角度で分析しながら、人間社会が目指す望ましい姿を提案している。
    序章 人類史における拡大・成長と定常化
       —ポスト資本主義をめぐる座標軸
    第1部 資本主義の進化
     第1章 資本主義の意味
     第2章 科学と資本主義
     第3章 電脳資本主義と超(スーパー)資本主義
         vsポスト資本主義

    第Ⅱ部 科学・情報・生命
     第4章 社会的関係性
     第5章 自然の内発性
    第Ⅲ部 緑の福祉国家/持続可能な福祉社会
     第6章 資本主義の現在
     第7章 資本主義の社会化またはソーシャルな
         資本主義
     第8章 コミュニティ経済
    終章 地球倫理の可能性
       —ポスト資本主義における科学と価値
    人類の歴史、採集狩猟社会から農耕社会、そして産業革命以来の高度情報化、人工頭脳・・・
    瞬時に情報が地球を駆け巡る時代だからこそ、人間本来の顔と顔の見えるコミュニティの原点に回帰する。
    そこから、ガラガラポンでどういう価値観・思想を打ち立てれるのか、今後の人類に課せられたすごい課題です。

  • 【簡易目次】
    はじめに――「ポスト・ヒューマン」と電脳資本主義 [i-vi]
    目次 [vii-viii]

    序章 人類史における拡大・成長と定常化――ポスト資本主義をめぐる座標軸 001

    第I部 資本主義の進化 
    第1章 資本主義の意味 022
    第2章 科学と資本主義 038
    第3章 電脳資本主義と超〔スーパー〕資本主義 vs ポスト資本主義 059

    第II部 科学・情報・生命 
    第4章 社会的関係性 084
    第5章 自然の内発性 103

    第III部 緑の福祉国家/持続可能な福祉社会 
    第6章 資本主義の現在 126
    第7章 資本主義の社会化またはソーシャルな資本主義 151
    第8章 コミュニティ経済 177

    終章 地球倫理の可能性――ポスト資本主義における科学と価値 217

    参考文献 [245-254]
    あとがき(二〇一五年 桜の季節に 広井良典) [255-260]

  • 《教員オススメ本》
    通常の配架場所:教員おすすめ図書コーナー(1階)
    請求記号 332.06//H71
    【選書理由・おすすめコメント】
    著者は科学史・科学哲学専攻です。近年の宇宙論は『複数の“宇宙環境”の中で、いわば人間の存在を可能とする環境的条件を探る学問という性格を帯びてきている。』しかし、『近代科学においては、生命や自然を含む世界は“機械論的”に、つまり受動的な存在として理解され、・・・“一本道の科学”であり、対象や地域や空間の「多様性」ということへの関心は背景的なものだった。』さらに、『鎮守の森』や『アインシュタインの宇宙的宗教感情』も登場し、最後に、『個別分野の縦割りを超えた超長期の時間軸で物事をとらえ考えなければ、現に起こっている事態の意味や今後の展望が見えてこないような、大きな時代の分岐点に私たちは立っているのではないか。世界の持続可能性や人々の幸福という価値を基準にとった場合、定常化あるいは「持続可能な福祉社会」への道こそが、私たちが実現していくべき方向ではないか。』と結論しています。(化学科 竹村哲雄先生)

  • 評するに難しい本。資本主義が拡大・成長するという動因から、定常化へ舵を取るべき時に来た。それがポスト資本主義だという。ただ、波長が合わなかったな。

    このタイトルをつけるに当たって、ドラッカーの『ポスト資本主義社会』という書籍の存在を知らなかったという。それはどうかなと思う。

  • 2016.2 課題図書

    ■■2/10@わん■■
    文明論的人口政策/腐る貨幣/ディープラーニング/こんまりメソッド

  • 社会政策を専門とし、これまでにも新書版を含めて多数の著書を持つ広井良典氏が、産業革命以降200年以上に亘り続いてきた資本主義社会に綻びが見える現在、資本主義の後に来る社会を予想・提言したものである。
    テーマは壮大で、各学術分野に跨る分野横断的な内容となっているが、広井氏は他の著書と同様に丁寧に論考を進めている。
    主旨は概ね以下である。
    ◆人類の歴史には、人口や経済の「拡大・成長」と「定常化」を繰り返す3回の大きなサイクルがあった。第1は、約20万年前に現生人類が登場し狩猟採集が始まった段階、第2は、約1万年前に農耕社会に移った段階、第3は、18世紀の産業革命以降である。また、過去2回の定常期は、いずれも、「心のビッグバン」(=芸術作品のようなものが現れた)、「枢軸時代(精神革命)」(=仏教、儒教、ギリシャ哲学、旧約思想のような普遍的な思想が生まれた)と言われる、文化的創造の時代であった。我々は現在、第3の「定常化」の時代、即ち何らかの新しい価値原理や思想が要請される時代の入り口にいる。第4の「拡大・成長」に向かうという議論も勿論あるが、地球資源の制約を考えると、著者は懐疑的である。
    ◆資本主義=「市場経済」+「拡大・成長」を志向するシステムである。「市場経済」は「個人の共同体からの独立」に基づき、「拡大・成長」は「自然からの人間の独立(自然支配)」に基づくものである。しかし、「自然支配」に基づく「拡大・成長」は、今や自然環境の有限性により“外的な限界”にぶつかり、同時に、人々の需要の飽和という“内的な限界”にも直面している。また、「個人の独立」は今や様々な矛盾を呈しており、個人からコミュニティへの回帰が求められている。
    ◆資本主義と両輪で近代化を支えてきた近代科学の特徴は、「法則の追求」(=「自然支配(人間と自然の切断)」)、「帰納的な合理性」(=「共同体からの個人の独立」)の2点であり、資本主義と同様の構造を持っている。
    ◆現在の資本主義の現象面をみると、様々なレベルの格差拡大と過剰という構造的な問題があり、それへの対応として、1.過剰の抑制(需要の飽和を解消するための、労働生産性から環境効率性への生産性の概念の転換)、2.再配分の強化・再編、3.コミュニティ経済の展開が必要である。そのような社会を「緑の福祉国家」、「持続可能な福祉社会」、「定常化社会」として推進するべきである。
    そして、著者は最後に、「ポスト資本主義への移行は、ここ数百年続いた「限りない拡大・成長」への志向から「定常化」への“静かな革命”であり、今後21世紀を通じて人々の意識や行動様式を変えていく ― 同時にその過程で様々な葛藤や対立や衝突も生じうる ― 真にラディカルな変化であるだろう。・・・同時にそれは、・・・もっともシンプルに言えば「歩くスピードを今よりゆっくりさせ、他者や風景などに多少の配慮を行うこと」といった、ごく日常的な意識や行動に根差すものだ」と結んでいる。
    本書の中でも、ドイツやデンマークのような国々が既にそうした社会の実現に向けて舵を切っていることが紹介されているが、我々も一度立ち止まって目指すべき方向について議論する必要があることを強く認識させる良書である。
    (2015年12月了)

  • 資本主義の拡大の限界に触れ、再分配による福祉社会を提言する内容。均一な指標による競争に代わり、コミュニティに着目して多様性を持ちつつ特に若年層に対する福祉に力を入れるという考え方には魅力を感じる。
    だが、その主体が誰なのかというのが明確でないため、現実への適応に疑問符がつく。世界全体に敷衍するなら、有限な資源の中でどうやるのかが見えないし、一部でやるならばその結果必然的に起きる「負け」の状況が何をもたらすのかについての検証が欠かせない。(好むと好まずにかかわらず)
    理想は理想として、結局はバランスと力点の問題で、結局資本主義の原理からは逃れられず、その矛盾をいかにしてカパーしていくかがポイントではないだろうか。

  • 昨年は、水野和夫の「資本主義の終焉と歴史の危機」や、ハーマン・デイリーの「定常経済は可能だ!」などで、機能不全に陥った資本主義の現在を学んだが、今回読んだ、「ポスト資本主義社会」は、これらの現実を踏まえつつ、資本主義を支えてきた思想の意味の分析と、それらの反省に立って、次なる社会の在り方を、既にヨーロッパで実現している事例も紹介しつつ、具体的なイメージを喚起させるといった意味で、非常にスリリングで、ユニークな1冊であった。
    歴史的に見て、自然という資源を利用・搾取する、技術革命的なブレーク・スルーと、その方法での限界を迎えての「定常状態」は交互に発生しており、現在もそうした飽和、成熟、定常状態に入ってきているのだという。
    これを克服するのは、さらなる「成長戦略」なのかといえば、利用・搾取する資源の状況を考えると、必ずしもそうではなく、やはりいかに「持続可能」な社会やそれを支えるシステムを構築するかが重要である。成長神話は、資本主義の呪縛であり、著者はブローデルを引用し、資本主義と市場経済を区別しつつ、資本主義の本質として、「拡大・成長」を志向するシステムであり、資本としての貨幣の流通が自己目的的で、グローバル経済が地球を埋め尽くした現在、利用・搾取するパイの総体自体が頭打ちした中で、社会の総体が豊かになるような、明るい未来がないことを示唆している。
    ポスト資本主義社会を乗り越えるにあたって、成長がない定常化した経済・社会=フローが少なく、蓄積したストックがものをいう社会で、いかに富の分配を行い、スタート時点での平等を確保するかということと、持続可能性のために、いかにエコで、自然共生的な社会・経済システムを確立するか、といったことが課題とされる。
    日本は、アメリカと並んで、経済成長信仰の著しい国であるが、ヨーロッパでは、環境や福祉をベースにした、ローカル経済を確立しつつあるとのこと。これには、それこそブータンではないが、なにを「豊かさ」を図る指標にするか、といった意識改革も必要となってくるので、一朝一夕にはいかないが、真剣な検討が必要なところであろうと思われる。
    最終章は、「地球倫理の可能性」について触れられているが、いわゆる過去の定常状態を受けて生まれたとされる「普遍宗教」に対して、それらが「普遍」を標榜するがゆえに対立することを受けて、それらを超える思想や価値観の形成を提起している。昨今の、とりわけ日本人には理解しがたい、宗教に端を発する争いが絶えないことも踏まえて、社会の在り方とともに、あらたな世界観や価値の確立が必要な時代に差し掛かっていると感じた。

  • 驚いた。
    広範な思考。これまで見聞き、学んだことがつながった気がする。
    「なつかしい未来」としてのポスト資本主義。

    要再読。

    ・定常期をむしろ文化的創造期としてとらえる

    ・無限に拡大・成長する資本主義
    ≠市場経済(開かれた交換)

    ・人間と自然、生命と非生命の理解の深化

    ・ストック経済の比重の拡大

    ・「時間環境政策」という概念
    ・労働生産性から資源生産性
    ・コミュニティー経済と福祉
    ・鎮守の杜、学校、集える場所と自然エネルギー
    ・歩ける中心市街地

  • 「毎日新聞」(2015年08月16日付朝刊)に、著者へのインタビューが載っています。
    (2015年08月18日)

  • 基本的に今まで読んできた同じ著者の本と変わりがなかった。と思う。新しいことを何か期待しながら読むけれど、そう大きく変わることはない。その中では、自然エネルギーとか鎮守の森を活用したローカルな地域コミュニティの動きに興味がわいた。前にもどこかで読んでいたけれど、神社や寺の数の方が、コンビニよりも多い(この前テレビで、クリーニング屋も多いと言っていた)というから、そこを利用するのは一考に値するのだろう。もっとも、昔から祭りなどで地域をつなぐ拠点だったのだろうが。養老先生と宮崎駿さんの本は私も読んでいて、そこで考えられているいわば老人ホームと幼稚園をくっつけたようなものを中心に街をつくるという発想はとても興味深い。20年ほど前にドイツを訪れたけれど、街中には車の通らない道が至る所にあって、うらやましく感じた。日本では数年前、松本に行ったときに同じような感覚になった記憶がある。四条通なんか歩道を広くする工事などせずに、いっそのこと車は追い出して、車道の真ん中に街路樹を立てたり、椅子をたくさん置いて、のんびり過ごせるようにすればいいのに。と思ってしまう。鉾が通れるようにだけはしておかないといけないけれどね。

  • 資本主義の限界と今後への提案が書かれた本。
    非常にわかりやすく鋭い指摘が多く、話題のピケティ氏の議論にも通じるところがあると思います。

    資本主義とはそもそも何なのか、ということの解説がとても面白かったです。そのうえで、市場主義と資本主義とは最終的には矛盾するという解説がとても新鮮でした。

    今後を考えるうえで、人間が生きている地球や環境という生に基礎を置いて経済をとらえ、国家やコミュニティや国際経済を論じています。
    最終的には、経済を地域に着地させ、定常型社会つまり持続可能な社会を実現させるべきという意見になっています。

    このまま資本主義を突き詰めると21世紀はどうなっていくのか不安が募ります。そんな中で、明るい未来のための選択肢として、定常型社会というのは最も優れた姿だと思います。資本主義って人間の欲望がどんどん加速させていくものなので、実際にそれを実現させることは、非常に困難であると思いますが・・・

  • 「わかりやすくの話し言葉」が裏目に出ていないか。
    「・・・言ったように」「・・・で述べるように」とまえがきが多すぎてぼやけてしまう。
    映画の話や音楽の話も庶民迎合なのか知らないが、鑑賞していないものにとっては目くらましにすぎない。
    文献の引用も必要ない。
    新書版なのだから、剽窃を恐れず、自分の言葉だけで述べたいことを述べる必要がある。

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ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)の作品紹介

富の偏在、環境・資源の限界など、なおいっそう深刻化する課題に、「成長」は解答たりうるか。近代科学とも通底する人間観・生命観にまで遡りつつ、人類史的なスケールで資本主義の歩みと現在を吟味。定常化時代に求められる新たな価値とともに、資本主義・社会主義・エコロジーが交差する先に現れる社会像を、鮮明に描く。

ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)はこんな本です

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