- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005007974
作品紹介・あらすじ
犬は教えてくれた、人は生き直せることを…。日本で初めて、刑務所で盲導犬候補の子犬を育てる試みが始まった。犬との日々は人々をどのように変えていったのか。動物との絆に秘められた可能性とは。この試みの立ち上げから7年以上にわたって取材を重ねてきた著者が綴る、希望の書。
感想・レビュー・書評
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島根県にある刑務所"島根あさひ社会復帰促進センター"は、一般の刑務所とは異なり、受刑者の出所後の社会復帰に力を入れるため、教育プログラムと職業訓練プログラムが充実している。
そのプログラムの1つが、"盲導犬パピー育成プログラム"。盲導犬候補として生まれた子犬たちを、受刑者(訓練生と呼ばれる)たちに託して育ててもらうというものだ。
この本は、2009年4月から始まったこのプログラムの1期生の訓練生たちの変化や成長、3匹のパピーたちとの絆を描いたものである。
一般家庭が引き受けるパピーウォーカーの存在は知っていたが、"刑務所で盲導犬を育てる"ということが興味深かった。読む前にちょっと疑問に感じた、「刑務所で子犬が育ったら、車に乗ったり公共交通機関に乗ったり、普通の社会生活が体験できたりしないんじゃ?」ということも、週末だけ子犬たちを一般家庭が預かる"ウィークエンド・パピーウォーカー"というシステムでカバーできるそうだ。
子犬たちが訓練生たちやウィークエンド・パピーウォーカーの二重の親たちの愛情を一身に受けて育つこと、訓練生たちも子犬からの愛情を感じてこれまでの生き方や姿勢から少しずつ変わっていくこと。"子犬が刑務所で育つ"ということが、子犬にとっても訓練生にとってもウィークエンド・パピーウォーカーにとっても、誰にとってもプラスの側面が見られて良かった。
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東2法経図・6F開架 369.27A/O88k//K
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PFIで、このような取り組みがもっとなされたら良いのに。
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大塚さんの保温、動物のもつ可能性を感じさせてくれる。
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島根県にある「島根あさひ社会復帰促進センター」は日本で4番目のPFI刑務所です。PFI刑務所とは民間の資金とノウハウを活用して施設の建設や、維持管理、運営などを行う刑務所のこと。「刑罰の執行」以外の部分を民間が担当しており、教育プログラムや職業訓練プログラムも民間が企画立案し、実施しています。
そんな刑務所が取り入れたのが、「盲導犬候補の子犬(パピー)を育てる」という教育プログラム。欧米の刑務所ではすでに30年以上のあるプログラムですが、日本では初めての試み。本書はその初年度の様子を中心にまとめています。
動物、しかも「人の役に立つため」という明確な役目を帯びた動物を育てるということが受刑者たちにどのような影響を与えたのかが、とても丁寧に描かれています。また、受刑者が自分の罪を反省して再び社会で暮らし、二度と刑務所に戻ってこないようにするために何が必要なのか、刑務所は何を「教育」すべきなのかということに対しても一つの答えを提示している作品だと感じました。岩波ジュニア新書なのでとても読みやすかったです。
このパピープログラム以外にも地域の人と受刑者が文通をする取り組みを行っていたり、地域の人が受刑者に農業の職業訓練を行っていたりとこの「島根あさひ社会復帰促進センター」自体にもとても興味が湧きました。関連本を探してぜひ読みたい。 -
犬が人を育てる
犬が人の善を引き出していく
犬が人を導いていく
刑務所
盲導犬
生き直し
これほど極上の三題噺はないでしょう
と 思われるのですが
見事な「事実」に引き込まれていきました
この「パピー・プログラム」は
アメリカが発祥の地であるらしい
のですが
これを提唱し
これを実践して行かれた
原初の風景が
この一冊にも垣間見られるような
気がします