私に似た人

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022511713

感想・レビュー・書評

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  • うっ屈した気持ちが、ある人の言葉に押されて「小口テロ」となる。
    人々の不満をうまく掬いあげて「テロ」へ気持ちを向けるように仕向ける人物。自分は手を汚さずに言葉だけであやつる。
    「小口テロ」を唆された人たちを章立てにした短編連作。

  • 社会って何だろう?
    社会ってものが責任を負う必要があるのだろうか?
    社会というもののあやふやさに気づかせてくれた気がする。
    世の中にはいろんな人がいるのにね。

  • 世相を反映した、ある意味社会派のミステリ。話のリンクのさせ方が最初はあまり見えてこなかったのが、読み進めるうちに分かってくるのも面白い仕掛け。このひとのは連作短編が面白い気がする。

  • 日本の貧困と政治などの社会問題を折り込みながら進む物語。
    「トベ」というハンドルの人物が小テロを起こすように人を操って行く。こんなに上手くテロが起こせるとは思えないので少しばかり退屈に思いつつ完読。
    ラストも物足りない。

    でも、いかようにも表現できそうだから映像化は向いてるように思う。

  • 登場する人物に起こった出来事が一見、脈絡なく語られているかのような10の話で構成されている。しかしそれは同じ現象を扱っており、密接に関係している。
    「小口テロ」。大規模なテロ事件でなくトラック一台がビルにぶつかる程度の局地的なテロが頻繁に日本のあちこちで発生する。日本人の気質が現代社会において変化してきた。隣近所のつきあいがあり、親切心が溢れていた和やかな日本人だったのに。路上で人が倒れていても見て見ぬ振りをする人々。助けを求め泣き叫ぶ人を遠巻きに見る人々。中にはスマホで写真を撮る者まで出る始末。
    派遣社員や契約社員、正社員であっても奴隷のようにこき使われるブラック企業の社員。エリート社員のはずがいつの間にか転げ落ちていく一寸先は闇の構造。そんな落ちこぼれとなった人々を小口テロへと教唆する「トベ」と呼ばれる黒幕。
    おそろしい世の中になったものだ。この希望のないような日本が、最後の章で少しは救われるのだろうか?

  • 真に、現代日本の病巣を衝いた問題作と言える。
    どこででも、自分の周りででも起こりうる、個別テロ。
    しかし、様々な人物を取り上げる関係からか、並列的になり、貫井徳郎的小説の面白さに、ちょっと欠けたのは残念かな。
    最後の「・・・の場合」も、時系列的な意外感から、三人目の「・・・の場合」を思わず読み返してしまった。

  • 人々の小さな不満がどんどん溜まってきている国、日本。これほどまでに閉塞感が溢れ、口だけ勇ましく耳障りの良い人気のある総理がいる国。そんな国には大規模テロではない「小口テロ」(自動車やナイフ等を使い被害も数人だ)という行為が頻発するようになる。それを複数の様々な立場にいる一般市民からの視点で表現している。こんな時代には誰もがこの本の登場人物となりうると感じた。現代における日本人の嫌な所を強調する小説。さすがこの著者ならではの、もはや他人事とは思えなくなる小説だ。小口テロにはネットの中に黒幕が存在した。子黒幕は次々と見つかり逮捕されたり、殺害されたりするが、親黒幕は意外な人物であり、最後は小口テロの被害者遺族と合うことになる。著者の時間軸を混乱させるトリックに引っかかって判らなかったが、良い形でエンディングを迎えることが出来てよかった。

    2014/06/30
    日常の小さなイライラから解放される「箱」の法則
    イライラすることは本当に多い。しかしそれは全て100%が自分が引き起こしているのである。イライラを発生させる原因人物も人間であり、イライラはその原因人を見下して、上から目線で見ているから発生する。相手も自分と同様の人間であり、人格があること。イライラするなら思い出したい。なかなか困難ではあるが・・・

    2014/07/07
    検察側の罪人 雫井脩介
    傑作である。最上は東京地検刑事部本部係の検事であり、副部長の椅子が見えている。部下の沖野もあこがれている。最上は学生時代法学部の仲間と根津の寮に入っていた。その寮の管理人の当時中学生の娘は寮に独りでいるところを乱暴され殺害されたが、犯人は捕まらず時効を迎えていた。そんな中蒲田でちょっとした小金持ち老夫婦が殺害される事件が発生し、その周辺人物の一人が根津女子中学生殺害事件の筆頭重要参考人であった松倉であることは最上には無念を晴らす機会であった。捜査側の管理官田名部は根津事件の捜査担当者だったこともあり、事件は松倉を中心に捜査される。状況証拠は出るがなかなか決め手が無く、松倉への厳しい追求も功を奏しない。ところが捜査線上に弓岡なる人物が浮上し最上はこれが真犯人だと気付く。ついに最上は弓岡と接触し、凶器を入手。それを松倉が捨てたように工作し公判を進める決意をする。蒲田事件の主任検事を任されていた沖野は松倉犯人説に与せず最上と対立し検察を去り、松倉の支援をする。結局最上の企みは頓挫してしまうのだが、本当の正義とは何か考えさせられる話だ。ラストの沖野は悲しみを引き立たせる。

  • 毎度のことだけど貫井さんの本は読んでて苦しい。
    無関心、想像力の欠如、身内には親切でも赤の他人には驚くほど冷淡になる…
    トベはそういう日本社会を憎悪していたけど、読んでいてまさに自分だと思った。タイトルはそういう意味か。身に覚えがありすぎて色々と考え込んでしまう。。

    小口テロを巡ってばらばらな短編が続くが、なんとなく絡め方が薄く、それがまた関係のない人たちが次々とテロを起こしている空恐ろしさを表しているようで怖かった。

    潔癖で思い詰めた人たちの憎しみは強いけど、憎しみの連鎖を止める強さを持った人もいる。闇だけじゃなくてかすかな光も描いてくれていて良かった。
    真犯人が誰かとか、そこは主題ではない気がする。
    装丁も印象的。

  • 途中まではひとつの事件をいろんな方向で見てるのかと思って面白く読んでたけど・・・前後の関係がよくわからなくなって、最後は???
    一人一人の話しの終わりが中途半端な感じも、残念。

  • 今の旬な時事問題で、有りそうな事件に、有りそうな人物描写。そこが面白みに欠ける。もっと深かったり、多面的な人物描写や意外性が欲しかった。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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