私に似た人

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.43
  • (35)
  • (121)
  • (152)
  • (34)
  • (4)
本棚登録 : 756
感想 : 130
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022511713

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本の貧困層の割合の増加は、最近よく取り沙汰されるようになった。そこに目をつけたのはよいけれど、そこに虚構を混ぜることで、なんだかお話し自体はとっても薄っぺらいモノになってしまった。
    時代設定の曖昧さが功を奏することもあるけれど今回は完全に失敗と言っていいだろう。

    貧困層を描く場面では、まるでNHKの番組を見てそのまま書いたような境遇や心理描写で、切迫感など一ミリもない。こんな距離感で人の生死や殺人を描くなんて愚の骨頂だ。
    以前のこの作者は本当に丁寧に(時に辟易するほど粘着質に)心理描写をした。そういう路線に戻ってくれることを切に願う。

    ちょうど私個人、貧富の差についていろいろと考えていたときであったので、思考の材料としては面白く読んだので☆3つで。

  • 何か納得いかないような感じがしてしまいます。

  • 前の章にでてきたひとが次の主人公(語り手?)になっていく連作短編集。名前は出ているものの一部を除いて誰なのかわからず話が進むので興味をひかれました。
    たくさんの視点を盛り込んでいるためひとりひとりの語りは短く物足りなかったけれど少しずつ明かされていく展開に期待して読み進めて、ラストでどうくる!?と思ったのですが、そのラストがいまいち。張りっぱなしで放置された伏線と突然の真相にただただ驚いて、それはずるい!と叫びたくなりました。騙すために無理矢理作った感じがどうにも納得いきません。こうだと断言してないんだからこれもありだろ!みたいなせこいトリックです。ミステリとしては汚いと思いました。
    文章の読みやすさとか時代背景とかいいところがいっぱいあっただけに残念。無理にミステリにしないほうがいい気がしました。

  • 樋口達郎・・・元恋人を小口テロで奪われた青年。元恋人は経済的不安から樋口と距離をおいた。
    小村・・・樋口の恋人を殺害したテロの首謀者。ワーキングプアで、唯一の希望だった野良猫が死んだことでキレてトベにそそのかされ、事件を起こす。
    二宮麻衣子・・・トラックが突っ込む事故にたまたま遭遇し、そこで同じ会社の変わり者 ヘイトさんと仲良くなる。しかし、ヘイトさんが亡くなったことで、トベになり、日本転覆をはかり本人はマレーへ。。
    北島和歌子・・・専業主婦のバブル女。旧来の考え方を崩そうとしない。
    猪原公平・・・公安の刑事。娘がトベと接点があると気が付き、トベを逮捕する。トベは、前トベから増殖していくと知る。
    伊藤圭輔・・・トベの一人。
    川渕(妻)・・・夫はトベ一味ではないかと怯える。夫のフェイクにひっかかりただの浮気と知って、安心するも泣き崩れる。
    川渕(夫)・・・トベに誘われるが、従来のテロを呼び掛け失敗。
    奈良坂・・・息子がトベに唆され、小口テロを起こし自殺し、トベを見つけだし殺害するが空しさを覚える。
    片倉・・・マレーで二宮麻衣子と知り合う。両親を小口テロで失ったことを話し、麻衣子は自分がトベだと告白。片倉は復讐は選ばず、麻衣子は生き続けることを贖罪とすると決意。あ、動機は喘息で倒れたヘイトを無視した日本人が許せない!でした。。

  • 知ってる人には親切だけど、知らない人には冷たい
    というのは、私にも当てはまる、かも。

  • 10人の登場人物が都会で起き始めた「小口テロ」と呼ばれる自爆テロのような行動に翻弄される。すべての話が結びついているけど、誰とどのようにというのは読み進めないと分からなくなっているので、どんどん読まされました。ラストが尻切れトンボっぽい感じで残念でしたが、社会派の作品といえるのでは。貧困層に焦点を当てて掘り下げているところがドキュメンタリーとは別の小説にしかかけない良さだったと思います。

  • タイトルはこれでいいの?と思うけど、かなりの面白さ。あの「乱反射」の発展系ともいえる、様々なつながりの物語。まさに「小市民の観察者」(と僕が勝手に名づけている)たる貫井さんらしい繊細な心理の積み重ねで形作られた、パズル的要素も楽しめる一級品な小説です。
    社会派とも思えるテーマが続いてますが、たぶん貫井さんの興味は人の心理と小説的な技巧にあるような気がします。無差別殺人=「小口テロ」という捉え方とその名称に違和感が拭えなかったことだけが惜しまれます。
    殺伐としたお話ですが、ラストは希望をつなぐ苦肉の策か。いや、でも大満足の一冊でした。

  • ワーキングプアとかバブル世代とか。なんでも時代の、世の中のせいにするのは、どうなの?と思っているけど。
    歴史の教科書なんかを振り返れば、そう言えないこともないのかしら、と。
    なんとも歯切れの悪い、後味の悪い、もやっとした闇。

  • 貫井さん初読み。小規模のテロが頻発するようになった日本を舞台に、様々な人間模様を描いた10編の連作短編集。テロの黒幕に迫っていくミステリーの部分にやや物足りなさを感じるけれど、社会的・経済的弱者が抱える不安や社会の問題点をうまく描き出している。テロという殺戮行為にはもちろん共感できないけれど、利己的で冷淡な社会を変えたいという気持ちには共感を覚えるところもある。明日からもっと他人に優しくしてみようか。

  • 読んだ後味がどうも悪くて・・
    もっと前の作品の話しは、犯罪を犯したとしても“犯人“と呼んでしまうには忍びない様な、切ない様な感情を抱いたけれど、最近の話しにはそれがない。
    でもそこが大事なんでは・・?

    内容(「BOOK」データベースより)
    小規模なテロが頻発するようになった日本。ひとつひとつの事件は単なる無差別殺人のようだが、実行犯たちは一様に、自らの命をなげうって冷たい社会に抵抗する“レジスタント”と称していた。彼らはいわゆる貧困層に属しており、職場や地域に居場所を見つけられないという共通点が見出せるものの、実生活における接点はなく、特定の組織が関与している形跡もなかった。いつしか人々は、犯行の方法が稚拙で計画性もなく、その規模も小さいことから、一連の事件を“小口テロ”と呼びはじめる―。テロに走る者、テロリストを追う者、実行犯を見下す者、テロリストを憎悪する者…彼らの心象と日常のドラマを精巧に描いた、前人未到のエンターテインメント。

全130件中 71 - 80件を表示

著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

貫井徳郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×