鬼譚草紙 (朝日文庫 ゆ 3-3)

  • 朝日新聞出版
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022643759

感想・レビュー・書評

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  • 手に取ったときは結構な厚みを感じましたが、サクっと読めました。イメージとしては…ご存知の方は「陰陽師」を想像して貰えたら。その外伝と言うか、系譜に連なると言うか、そんなイメージです。そこにエロスが少々。微エロ。天野氏の絵が好きな方なら美エロ、かな。
    主として描かれる紀長谷雄、小野篁ともに、非常にいいバランスで描かれていると思います。描き過ぎず、描き足ら過ぎず。「行間を読む」と言うのは、非常に愉快で、贅沢な営みですね。
    絵巻、とはまた違う感じがしますが、天野氏の挿絵が沢山盛り込まれていて。夢枕・天野両氏がお好きだったり、「陰陽師」(夢枕獏・文春文庫)がお好きなら一読して損はしないと思います。

  •  以前読んだ「おにのさうし」に挿絵付のもあると紹介されていたため、折角なので探してみた。
     「エッチな譚」というコンセプトがあったようで、鬼と美女の話が艶っぽいシーンと供に描写されたはなし集。
     決してエッチな挿絵目的じゃないけどな…。
     実際、天野喜孝の画風で描かれた女体は艶めかしさは溢れているが、エロいというベクトルではないかな。
     AVではなくヌードモデルのヌードグラビア的な。
     やらしさより美しさが前に出る。
     内容については「おにのさうし」で語っているので割愛。
     「桃色ももたろう」も読みたい。

  • 教科書に載っている以外の古典は18禁説を見かけて再読。『篁物語』は絶対に載らない気がする。とはいってもこの本所収の夢枕版しか読んだことがないので、そろそろ原典を当たってみたい。
    ふんだんな挿絵、特徴的なフォントとレイアウトで、文庫本ながら非常に個性的な1冊。素晴らしい試み。
    「染殿の后鬼のため嬈乱せらるる物語」「紀長谷雄朱雀門にて女を争い鬼と双六をする話」「篁物語」を収録。

    『陰陽師』シリーズ同様、古典を下敷きにした幻想絵巻。本題のほかにも、話の枕や挿話として、どこかで見知った色々な物語の姿が見える。明快で簡潔、サクサク読める文体で古典の影に触れられるのはとてもいい。そこへもって天野喜孝の妖しい挿画という贅沢さ。もともとエロティックな話をやろうとのことで、そういう絵だからいやます魅力。しかし文のエロスは少々俗というか、苦笑してしまう趣もある。
    鬼と芸術家の関係のくだりが印象的。本題の鬼は詩の出来を競うばかりか、多くの屍から一部を集めて理想の女を造り出すというマッドアーティストだからふるってる。これも原典を読んでみたいかも。
    「篁物語」はやはり気になる。しかし、逢瀬を妨害したいのであれば、閉じ込めるべきは通ってくる男のほうだよね。
    谷崎潤一郎も『篁物語』を下敷きに小説を書いているらしい。これも読んでみたい。

  • 駄作。

  • 天野喜孝のイラストが雰囲気満点でいい感じ。王朝時代物や今昔物語はそれ自体が面白い。

  • 図書館で。久々に夢枕氏の本を読もうかと借りてみました。
    天野さんの挿絵も付いていてお得感がありました。

    鬼と美女と言うのはなかなか確かにえろえろムード感が漂いますね。お話的に何でもアリな時代と言うこともあっておとぎ話を読んだ感じでした。個人的には鬼になった男は自分が満足したら成仏しちゃうとか自分勝手なもんだと思いました。まあ良いけど。

  • 人と鬼、血縁関係、此の世と黄泉。
    大きな隔たりを越えるのは、それぞれの強く、一途な想いのみ。
    そのきっかけとなるのもまた、几帳や御簾などの物理的な隔たり。

    一途であることは、時に辛く、苦しい。
    それ故に、人は鬼にもなれ、鬼をも受け入れることができるのではないか。

    染殿の后物語の、語り手の美しい言葉。
    紀長谷雄物語の、喪失感の中で哀しく溢れる才能。
    篁物語の、距離を計る歌のやり取り。

    繊細で上品な描写に、妖艶さが相まって、それぞれの物語がもつ魅力に強く惹きつけられる。

  • 夢枕獏著「鬼譚草紙」を読み終わりました。

     天野喜孝とのコラボレーションということで、幻想的な挿絵が話の合間に見事に描かれています。

     内容は、平安時代の鬼の話で、おどろおどろしく、エロティシズムにあふれた物語絵巻です。

     といっても、あの安倍晴明はまったく出てきません。

     そのかわり新しいキャラクターとして、歌人でも有名な小野篁(おののたかむら)が登場し、異世界へと関わりをもってしまう姿が描かれており、今後彼を主人公にした作品が出てくるのか、ちょっと楽しみです。

     平安時代は本当に鬼が存在していたような時代だと感じられますが、21世紀の今日も、もがき苦しみながら、心の闇に鬼を潜ませている人が少なからずいるような気がします。

     21世紀にも安倍晴明や小野篁がいてくれたらなあ。

  • 執拗なまでの情念・エロティシズムに溢れる内容でした。
    天野さんの絵もとても妖艶で相乗効果でエッチに感じました。

  • エロスと妖を文と絵にした最強のタッグ。

    血腥さも含んだ獏さんのエロスを天野さんの絵が人外の世界に昇華させていると思う。

    小野篁の禁断の愛は美しくて哀しくて儚くて。
    天野さんの書く姫の美しい肢体に篁ならずとも惚れた。

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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