悪人(下) (朝日文庫 よ 16-2)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645241

感想・レビュー・書評

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  • ラストの十数ページ、涙が止まりませんでした。

    単なるミステリーかと思って読み始めましたが、犯人探しや謎解きの類ではなく、いかにも技巧を凝らしましたというような文章でもないのに、何とも表現できない寂しさ、心の空白、まっすぐな気持ちなどを感じさせる作品。

    誰もが悪人になりうるし「誰も被害者にはなれない」。

    絵に描いたような善人や理想的な人物が登場しないからこそリアルに心に迫るものがあるのでしょう。

  • そもそも「悪人」とはなんなのか考えさせられました。人を殺めたのだから、確かに悪人と呼ばれるのかもしれないが、彼そのもの全てが悪人かと問われれば決してそうではないと思う。人の心はひとつの要素ではなく色々なものが絡み合っているし、周りの人たちの受け取り方も様々だ。悲しいラスト。

  • 読了して改めて題や副題の秀逸さを理解した。

  • 上巻はなかなか入り込めなくて少し我慢して読んだ。バスジャックとか高齢化した集落の暗さとか健康食品詐欺とか出会い系とか老老介護とかお母さんに捨てられたとか…致命的ではないけどリアルな悲しい話のオンパレードで。。

    でも下巻に入ったらあっという間に読んでしまった。

    犯人の祐一自身の語りはあまり無いが、周りの人のインタビューのような話が散りばめられている。無口でこれといって印象がない祐一をいろんな人の目で語られることで、どんどん肉付けされていき、最後はなんとか彼に救いがないものか、と祈るような気持ちにさせられた。

    おばあちゃんのスカーフ買って勇気出して詐欺師の事務所に行くくだりは泣いてしまった。

  • 悪人とは一体誰だったのか
    本当にあの人は悪人…
    何をもって悪人と言えるのか…
    最後まで考えさせられるような物語だった。

  • 色々な視点から1人の人間を見てみると、悪人に見えたり、一方で憐れに見えたり、善人に見えたり、日々生活している中で見えてる景色も、1面でしか見れてないこともあるのかもしれないなと思う。
    自分のためなのか、相手のためなのか、
    自分のためにしたことが、結果相手のためになったのか、
    被害者に両方はなれない。片方しか。


  • 一気読みでした。
    読後はモヤモヤ。
    皆さんの感想を見て、納得。
    なるほど。そういう観点か。圧巻。
    興奮が続いてます。


    ストーリーとして普通に楽しんで読んでいたのに
    最後にテーマを問いかけられた。
    ストーリー性も、内容の充実もあり、高い満足度。



    「悪人」とは?
    これをテーマした100点満点の小説で、

    「悪人」は誰かにとっては善人かもしれない
    というメッセージ性で小説を書け、の模範解答。



    100人中99人が悪人だと言えど、
    1人にとっては、善人であるかもしれないんだ。





    私の生活に身近なところで言うと、これからは
    事件のニュースの見方が変わりそう。


    容疑者、犯人が絶対的「悪人」として報道され、
    受け取る側も当たり前に罪を犯した悪人としか認識する他なかった。

    しかし、これからはもっと見えないところを考えてしまうな。
    この人は誰かのために悪人となった善人かもしれないと。




    吉田修一さんも、そういう報道に疑心感を持ったのでしょうか。
    それが本作が生み出されたきっかけなのかなぁ、と思ったり。

    とにかく、面白かった。魅せられた。
    好きでした。

  • 2008年。(第5回)。4位。
    双子の光代と祐一は、出会い系サイトで会い、恋に落ちる。二人で逃避行。
    誰が悪人かと言われると。心情的には、祐一の祖母を脅して無理やり何十万もの健康食品の契約をさせた会社、ボンボン大学生の増尾だなぁ。おつむ悪くて殺されちゃった娘の父が増尾に会い、娘を失った父をネタに笑っているところを見て、「ずっとそうしていればよい」と持っていたスパナ投げたところが良かった。殺す価値なし。最後の章は悪人がいっぱい出てくる。祐一は確かに殺人犯したが、人的には悪人ではないんだよなぁ。

  •  善悪ははっきり線で区分できるものではなく、人それぞれが持つ物差しの尺度と立場によって変わってしまう。祐一は悪人とは言えず、かと言って善人とも言い切れない。悪人とは健康食品会社の社員のように、悪行を日常的に行い、他者に多くの不利益を与える人間のことを指すと思うが、家族にとっては普通の良きパパの顔もあるかもしれないし…と悶々と考えさせられる。石橋佳乃にも非はあったが殺されて当然でもないし、増尾は悪人寄りだが決定打は下していない。祐一の祖母と佳乃の両親が不憫でならない。
     映画は未鑑賞だが、岡田将生君は本当に善人面した悪人役が似合う。

  • 正直誰が悪人だったのかわかりません。人を殺めたことで悪人のレッテルをはられるのであれば清水祐一が悪人ということになりますが。「どっちも被害者になれんたい」という祐一の心情、祐一と光代との逃避行、誰もが幸せになれなかったことが切ない。舞台が九州であったことが、なんとも言えない雰囲気を醸し出していました。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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