- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022645241
感想・レビュー・書評
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ラストの十数ページ、涙が止まりませんでした。
単なるミステリーかと思って読み始めましたが、犯人探しや謎解きの類ではなく、いかにも技巧を凝らしましたというような文章でもないのに、何とも表現できない寂しさ、心の空白、まっすぐな気持ちなどを感じさせる作品。
誰もが悪人になりうるし「誰も被害者にはなれない」。
絵に描いたような善人や理想的な人物が登場しないからこそリアルに心に迫るものがあるのでしょう。
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そもそも「悪人」とはなんなのか考えさせられました。人を殺めたのだから、確かに悪人と呼ばれるのかもしれないが、彼そのもの全てが悪人かと問われれば決してそうではないと思う。人の心はひとつの要素ではなく色々なものが絡み合っているし、周りの人たちの受け取り方も様々だ。悲しいラスト。
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読了して改めて題や副題の秀逸さを理解した。
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悪人とは一体誰だったのか
本当にあの人は悪人…
何をもって悪人と言えるのか…
最後まで考えさせられるような物語だった。 -
色々な視点から1人の人間を見てみると、悪人に見えたり、一方で憐れに見えたり、善人に見えたり、日々生活している中で見えてる景色も、1面でしか見れてないこともあるのかもしれないなと思う。
自分のためなのか、相手のためなのか、
自分のためにしたことが、結果相手のためになったのか、
被害者に両方はなれない。片方しか。 -
一気読みでした。
読後はモヤモヤ。
皆さんの感想を見て、納得。
なるほど。そういう観点か。圧巻。
興奮が続いてます。
ストーリーとして普通に楽しんで読んでいたのに
最後にテーマを問いかけられた。
ストーリー性も、内容の充実もあり、高い満足度。
「悪人」とは?
これをテーマした100点満点の小説で、
「悪人」は誰かにとっては善人かもしれない
というメッセージ性で小説を書け、の模範解答。
100人中99人が悪人だと言えど、
1人にとっては、善人であるかもしれないんだ。
私の生活に身近なところで言うと、これからは
事件のニュースの見方が変わりそう。
容疑者、犯人が絶対的「悪人」として報道され、
受け取る側も当たり前に罪を犯した悪人としか認識する他なかった。
しかし、これからはもっと見えないところを考えてしまうな。
この人は誰かのために悪人となった善人かもしれないと。
吉田修一さんも、そういう報道に疑心感を持ったのでしょうか。
それが本作が生み出されたきっかけなのかなぁ、と思ったり。
とにかく、面白かった。魅せられた。
好きでした。 -
正直誰が悪人だったのかわかりません。人を殺めたことで悪人のレッテルをはられるのであれば清水祐一が悪人ということになりますが。「どっちも被害者になれんたい」という祐一の心情、祐一と光代との逃避行、誰もが幸せになれなかったことが切ない。舞台が九州であったことが、なんとも言えない雰囲気を醸し出していました。