1000の風1000のチェロ

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784034351208

作品紹介・あらすじ

ひとりひとりの物語がちがっても、きもちを重ねあわせれば歌はひとつになって風にのる。そしてきっとだれかにとどく。小学初級から。

感想・レビュー・書評

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  • 1000の風1000のチェロ
    2000.11発行。字の大きさは…中。

    阪神淡路大震災復興支援チャリティー「1000人のチェロ・コンサート」を題材にした絵本です。

    今年で大震災から25年が経ちます。
    忘れてはいけないことですが、日々の中で忘れていたことを、いせさんがやさしく思いでしてくれます。
    文章を読みながら後半涙が出て来ます(涙) 
    そして、絵を見ていくと、いせさんの透明な、やわらかい、やさしい、筆遣いが私の心をしっかりと捉えます。

    【読後】
    いせさんが「1000人のチェロ・コンサート」に参加された体験をもとに描かれた絵本です。
    心の中に留めて置かなければと、あらためて思います。
    2020.11.27読了

  •  1995年1月17日その日は朝のニュースで阪神淡路大震災を知り
    ました。遠く離れた関東からは大災害もTVの中のニュースでしか
    知りえませんでした。多くの人が肉親を知人を失い、深い悲しみに
    包まれていたと思います。

     そんな被災地をいせさんも歩き、何の記憶のスケッチも残せなかっ
    たそうです。
     忘れてはいけない風景だが、描いてはいけないものかもしれない
    と後書きに書かれていました。

     震災の3年後に開催された「1000人のチェロコンサート」は1000
    の悲しみと、1000の物語をつないで、一つの大きな音楽を奏でた
    のですね。

     いせさんの亡くなった愛犬グレイもチェロの演奏と一緒に出てき
    ます。人の声に一番近い楽器、チェロ。心の歌を奏でるのでしょうか。

    自宅近くで開催されるガスパール・カサド国際チェロコンサートにも
    行ってみたくなりました。11月/22日から八王子で開催です。
    http://www.cassado-cello.jp/about/

    古いCDからYo-Yo Maのチェロの音が聞こえています。

  • 喪失の悲しみを背負って生きる人の心に響きわたる1000人のチェリストが奏でるメロディ、ひとりひとりが祈りをこめて心を重ね合わせれば、歌はひとつになり、天空の1000の風にのって、きっと誰かにとどいてくれる ― みずからチェロを弾く作者が、阪神淡路大震災復興支援チャリティーの「1000人のチェロ・コンサ-ト」に臨んで生まれた、忘れられない風景と忘れてはいけない風景を語った、こころにしみる感動の絵本です。

  • 阪神淡路淡路大震災の復興のチェロ演奏会にまつわる話。今にも消えてしまいそうな淡い色彩が掴めそうで掴めない被災者の方たちの思いのようでもある。あれから25年、四半世紀たって、東日本大震災等、災害が増えた気がする。改めて復興というのはどういう状態、どのようにするのを指すのかを考えなくてはならないと思った。

  • 冒頭は少年と少女の出会いである。
    少年はチェロを習っている。
    教室に新しく女の子が入ってくる。
    女の子のチェロはとても上手だ。
    けれど、女の子はどこか、怒っているように聞こえる。

    タイトルとここまでのお話で、はじめはよそよそしかった2人が、音楽を通して仲良くなっていくお話かな、と思う。

    淡い優しい色彩。風をはらむ髪や服の揺れ。動きを捉えた確かな骨格。
    絵のうまさにも引き込まれつつ、物語は進む。

    2人は徐々に友だちになる。ある日、ある集まりで、2人はおじいさんと知り合う。
    おじいさんもまた、チェロを弾く人だ。
    3人に共通しているのは、チェロだけではない。
    皆、何かを失っている。
    失うものを抱えながら、3人はチェロを弾く。

    人はときに、大きな不幸に見舞われる。
    人はまたときに、深い喪失を抱える。
    それでも人は生きていく。
    なくしたもの、もう会えない相手、遠いあの日。
    二度と手には入らない思い出とともに、生きていく。

    著者のいせひでこさんもまた、作中の人たちと同様、チェロを弾く人だ。
    いせさんは、チェロを「人間の形をした楽器 人間の声で歌う楽器」という。

    冒頭の印象を越え、はるかに深い物語である。
    人は、それぞれの喪失を語りながら、それでも1つの希望のうたを歌うことができる。
    鎮魂はまた、自分が立ち上がって歩き出す、再生ともなりうるのだ。

    物語の最後で、1000人のチェロ弾きたちが奏でる音楽が聞こえる。
    1000の風のように、それぞれの思い出を乗せた音楽が、きっと聞こえる。

  • まず、絵がとっても素敵。目には見えない、音楽と気持ちをすくい取る、水彩が超絶の域に達しています。

    そして、物語。誰しも抱えている、消しようのない悲しみをお互い持ち寄り、演奏を通して、空に飛ばしていくような様に、涙がとまりません・・・。

  • 今、日本の人に読んでほしい本

    震災から半年ほどですが、
    東北や関東の復興は、まだまだこれからなんだと思う

    いろいろな痛みを抱えて、それでも頑張り続けている人たちに
    少しでも希望が届けば嬉しいと思った

  • 阪神淡路大震災の3年後に開催された復興支援「1000人のチェロコンサート」に参加する少女と少年、おじいさんのお話。神戸から引っ越して来たばかりの少女はチェロの音が怖かった。しかし復興コンサートの練習を重ねていくうちに優しい音色に・・・。それぞれが思いを抱え奏でるチェロの音色が淡い色彩で描かれ、その音色に包まれ偲ぶ情景が素晴らしい。

  • 第一印象は、絵の力強さ。読んでみると、ストーリーもすばらしかった。チェロをみんなで弾いてるところは、音が聞こえてくるようだった。

  • 絵も内容も良かった。

  • 1000のチェロ。1000の想い。どんな音だったんだろう。

  • チェロを弾く様子がとても素晴らしい.

  • 小学校高学年から上くらいの人に読んでもらいたい絵本。
    特に、大人にはぜひ。

    阪神淡路大震災の復興支援のためのチェロコンサートに参加することになった少年たちの物語。
    被災した少女とおじいさんが登場するのですが、被災したことに関しては簡単にしか触れられていません。
    それでも、こちらに訴えかけてくるような雰囲気のある絵が、被災によって失ったものの大きさや、悲しみを表現しているように感じました。

    我が家のちびちゃんにはまだまだ難しい絵本ですが、大きくなったら読ませたい一冊です。

  • 大人向けの絵本。
    阪神淡路大震災の復興支援コンサート「1000人のチェロ・コンサート」に参加することになった少年が、震災の日に神戸にいた少女とおじいさんと共に練習を重ね、コンサートの日を迎える。

    文章を読むだけでもじんわりと胸に迫るものがあるのですが、それにもまして、語りかけてくるような絵が登場人物の心境を訴えてくるようで切なくなりました。

    鉛筆のラフ画に水彩で色をつけたような絵なのですが、それがとってもよい雰囲気を生み出しています。

  • チェロのきょうしつに、あたらしいせいとがはいった。そのこは、こうべからひっこしてきたらしい。ふたりでおおどおりをあるいていると、チェロをもっただんたいとであい──。
    再読。阪神淡路大震災復興支援チャリティーコンサートの体験を元に描いた作品。被災者である女の子と、音楽仲間の形見のチェロを受け継いだおじいさん。その二人と共にコンサートに参加する男の子。この男の子の視点で描かれていたので、共感しやすかった。コンサートを通じ、一人ひとりの震災への思いが、ひとつの曲となる様子がとても良かった。また、後書きのエピソードが印象的。地震から2ヶ月後に神戸を訪れた際、スケッチ帖を白紙のまま帰宅した理由について「忘れてはいけない風景は 描けないのではなく 描いてはいけないのかもしれない 描くことで 安心してしまうから 目と手が記憶してしまったあと どこかにしまい忘れることもあるから 」という言葉に考えさせられた。でも、人は嬉しいこと悲しいことを忘れてしまう生き物。だからこそ、大切なことを語り部や書物などによって後世へ伝えようとする。気持ち全てを形にするのは難しいけれど、その行為は心の整理や追想、風化防止に繫がるはず。東日本大震災の発生前の作品だが、震災について考える本として読了にピッタリだと思った。

  • 僕よりもチェロが上手く怒ったような印象の演奏をする転校生のあの子。
    あの子と僕は阪神淡路大震災の慰霊演奏会に参加する。

    温泉宿の絵本コーナーで読んだ。
    絵柄が印象に残った。

  • 素敵な話
    感動で泣いちゃうね

  • 読んでよかった。

  • 六年生の読み聞かせに、図書館の司書さんから勧められました。同じ作者の「にいさん」は読んでいて自分でも(;_;)してしまうが、これなら大丈夫かも?

  • 神戸の震災から3年後の春に1000人のチェロ・コンサートがあったのですね!?

    私はいせひでこの絵が好き。
    図書館で借りた絵本だけど、やっぱり手元に欲しい。

  • 主人公の通うチェロ教室に新しい女の子がやってきた。
    どんな難解な曲も弾くけれどその演奏は怒っているよう。
    帰りに女の子に呼び止められ一緒に演奏するうちに、神戸の震災のチャリティーコンサートに参加することになった。
    それはチェロが弾ける人で練習に来れるなら誰でも参加出来るものだった。
    そこで知り合ったおじいさんも女の子も神戸の出身であった。
    コンサート当日、各地から集まってきたチェロ弾きたちは1000人以上になり、それぞれの思いを乗せた音が曲となって会場にあふれる。

    デッサンに色を軽く塗っただけだけれどすごい上手な絵。
    おじいさんが震災のときを語る場面の背景は実際の写真で痛々しかった。
    少しジブリ作品を彷彿とさせる。
    作者自身もチェロを弾き、実際にチェロのチャリティーコンサートに参加したそうだ。

  • 阪神淡路大震災の復興支援コンサートを題材にした絵本。子供の視線で描かれているので、高学年だったら十分理解できる内容になっています。それぞれの思いをのせたコンサートはどんなふうだっただろう?と想像するしかありませんが、大人にも読んでもらいたい本です

  • 高学年に。テーマは心の復興ですが、音楽会の後で、連合運動会を前にした5年生にしました。音楽の力を感じて欲しいです。(9分)

  • 作者のあとがきのなかに
     「ひとりひとりの物語がちがっても きもちを重ねあわせれば 歌はひとつになって 風にのる。そして きっとだれかにとどく」 とある。
     阪神淡路大震災の復興支援のコンサートの様子を絵本化したものだが、東日本大震災から2ヶ月余りの昨今にも同じく語り、響く。
     何処から、何から手を付けてよいのかわからない現実に立ち竦むのだが、ひとりひとりの小さく微かな希望でも、重なり合わされた時に大きなひとつとなって届くのだと励ましてくれる一冊。

  • 読みたい絵本リストを持って図書館に行ったところ、唯一あった絵本がこの1冊でした。
    まさか、阪神大震災関連の本とは。唯一あったのがこれだとは、東日本大震災の被災地帰りなのでちょっと運命感じちゃいました。
    なので、評価は感情に左右されていると思います笑

    1000人のチェロ弾きが集まったチャリティーコンサート。
    被災者や被災しなかった人、一人一人違うストーリーを持って、それぞれが異なった音を奏でる。異なった思いを奏でる。
    それがひとつの楽曲となる。すごいエネルギーとなる。
    けど、聴衆にどのように伝わったかはわからない。

    今回自分が参加したボランティアも同じようなもの。
    地元の人もいれば遠くから来た人もいる。
    皆違うストーリーを持ち、違う理由で参加していた。
    それらの重いがひとつとなる。すごいエネルギーとなる。
    けど、それがどの程度役に立ったのかは実感しにくい。

    理由は様々だけれども、
    自分が今できることをやる。
    それが結局自分のためであっても。
    行動すること。
    その思いが広がればいいですね。

  • チェロを習っている子供が、阪神淡路大震災の追悼チェロコンサートに参加する。
    亡くなったチェリストのチェロを弾く人をはじめ、多くの人が悲しみの中チェロを弾く。千人の弾くチェロの音色はきっと多くの悲しみを抱えた家族や友人たちの心に届いただろう。
    絵も素敵で、音楽が聞こえてきそうな絵本。
    この時よりも多くの人々が亡くなった東北大地震直後に読んだので、胸が詰まった。

  • チェロ教室に通う少年の視点から、阪神大震災の復興支援チェロコンサートを描いた絵本。


    表紙の色使いにひかれて読んでみたところ、静かな迫力に最後まで眼が離せませんでした。
    特に、灰色の世界と、チェロを抱える色のあるおじいさんのページから。

    この絵は、鉛筆と水彩によるのでしょうか。
    にじんだ樹の緑、かすれた筆運びが彷彿とさせるメロディー。

    そういうのがとてもすてきなこの絵本は、色の中にあえて残された白に、描かれない雄弁さが凝縮されているような気がします。
    色とデザインが生み出す動きにも驚かされました。


    チェロについて、
    人間の形をした楽器
    人間の声で歌う楽器
    と、著者のいせ ひでこさんがあとがきで書かれていて、それがとても残っています。

  • 神戸大震災復興支援コンサート、チェロのコンサートの絵本です。
    いせさんの水彩絵から、柔らかな音楽が響いてきそうです。

  • 1998年11月29日神戸ワールド記念ホールにて阪神・淡路大震災復興支援と世界平和を祈念して“第1回1000人のチェロ・コンサート”が開催された。当時ベルリンフィルハーモニーのチェロ奏者で「ベルリンフィル12人のチェリスト」の創設者でもあったR.ヴァインスハイマー氏が、1996年に来日した際に提案されたそうだ。コンサートの感動と成功から、国際チェロアンサンブル協会が設立され、演奏会が続くことになる。そして今年、第4回公演を迎えるそうだ。

    第1回公演の演奏者として実際に参加した作者。
    その経験も交えて完成したのがこの作品。
    コンサートのシーンは、とても臨場感あふれ、流れるような躍動感が伝わってくる。
    「1000のチェロが、1000のものがたりをかたっている。それでいて、ちゃんとひとつのきょくになっている。1000のおとが、ひとつのこころになったんだ」

    阪神淡路大震災、それは1995年の1月17日に発生した。
    今日、2010年1月17日でちょうど15周年になる。




    第1回公演の動画:「チェロのためのレクイエム」
    http://www.youtube.com/watch?v=L3OCMOaII1Q&feature=player_embedded

  • チェロの音は人の声とほぼ同じ音域だと言います。  そしてチェロを弾くための構えは後ろからそっと楽器を抱きしめる・・・・そんなポーズになります。  だからいせさんのこの絵本のあとがきの中の

    人間の形をした楽器 人間の声で歌う楽器ーチェロ
    チェロを弾く人の姿は 私には
    人が自分の影を抱きしめているようにみえてならない

    という部分を読んだだけで、KiKi は「ああ!この絵本は好きになれるに違いない!!」と確信してしまったのです。  この物語が阪神淡路大震災復興支援チャリティコンサートの物語であることは、ちゃんとあとがきに書かれているのにその部分はほとんど印象には残っていない状態でレジに並んでいたことを白状しておきます。

    そんな状態で初めてこの絵本を読んだとき、KiKi は「新しくチェロ教室に入ってきた女の子は、ぼくよりもずっと難しい曲をペラペラと弾くのに、なんだか怒ってるみたい。」だったその女の子が震災の被害者であることを知ったとき、ちょっとショックを受けてしまいました。  くどいようだけどチェロは「抱きかかえる」ようにして弾く楽器なだけに、KiKi には単なる楽器ではなく、「愛情を注ぐ相手」に見えちゃうことが多いんですよね~。  そうであるだけにこの女の子が「難しい曲をペラペラと弾くのに、なんだか怒ってるみたい」なのは、一般的な技術先行の弾き方・・・・というよりは、この女の子の心の中の喪失感、絶望感、虚無感が音に出ちゃったような気がしてならないのです。

    でも、そんな女の子の音が「1000人のチェロ・コンサート」の練習に参加しているなかで「優しく」なっていき、ぼくの犬の鳴き声みたいだった音にも変化が表れる過程が描かれており、この物語は音楽を愛しているいせさんだから描けたもの・・・・との想いを強くしました。

    (全文はブログに)

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著者プロフィール

[著者紹介]いせひでこ(伊勢英子)
画家、絵本作家。1949年生まれ。13歳まで北海道で育つ。東京藝術大学卒業。創作童話『マキちゃんのえにっき』で野間児童文芸新人賞を受賞。絵本の代表作に『ルリユールおじさん』『1000の風 1000のチェロ』『絵描き』『大きな木のような人』『あの路』『木のあかちゃんズ』『最初の質問』『チェロの木』『幼い子は微笑む』『ねえ、しってる?』『けんちゃんのもみの木』『たぬき』など、単行本・エッセイに『旅する絵描き』『七つめの絵の具』『わたしの木、こころの木』『こぶしのなかの宇宙』『猫だもの』『見えない蝶をさがして』『風のことば 空のことば』など多数。


「2022年 『愛蔵版 グレイがまってるから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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