- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041027097
感想・レビュー・書評
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設定がしっかり作りこまれてる気がする。引き込まれる。百年が経って死ななければならない人たちのそれぞれの考えが面白い。
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よくできてるなぁ、というのが上巻の感想。
個人的には死が見えてる未来より死ねない未来の方が怖いんだけど、そう思うのはまだ死が身近ではない年齢だからだろうか。
登場人物の気持ちや、心境の変化など、すごいわかりやすくて非現実的な設定ながら結構入り込めた。
でも、寿命が長くなってきたこのご時世、所々通じるものもあるような。
2018.10.19 -
HAVIという不老技術によって、人がほぼ永遠の命を手にいれた時代、HAVIを受けてから100年後(+α)に死ななければならないという生存制限法が施行された社会を舞台にした、重いストーリー。循環しない社会の淀みや鬱屈、倦怠感、不気味さがリアリティを持って描かれている。
生にしがみつく人々を、自己中心的で醜いと感じるものの、自分だったらどうかと言われると、なんとも。潔くいたいとは思うが。
凄い設定でグイグイ引き込まれるが、要するに現代の姥捨山をやるとすればこうなるんだろう。少子高齢化の現代社会も、ある意味同じ不安を抱えており、働き手がいないぶんさらに悪いといえるかもしれない。 -
近年読んだエンタメ小説の中ではピカイチ。近未来ものはあまり得意なジャンルでは無いのだけれども、ページをめくる手が止まらなかった。
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上下巻、数日で一気読みしました。エンタメSF的な設定が好きな人には間違いなくおすすめ。
人類が永遠に生きられる技術が開発された、近未来の日本が舞台。
社会が停滞するため、法律で制限を付けようという官僚たち、自分の生命を法律で決められたくない国民たち、議員たち…百年を超えても生き続ける拒否者たち…
個と、行政と、国民という集団の選択、百年法派反百年法派という対立する立場のそれぞれの思惑、ミクロな視点とマクロな視点から「百年法」という制度が考えられていて、面白かった。 -
『人はみな、各々の思い込みの中で生きている。意識の光の当て方で、いかようにも変化する世界。心の中にだけ存在するファンタジーの世界だ。
だが、いかに意識を変えても、変化しない世界もある。永遠不変。それが真実の世界だ。しかし人々は、ふだんは真実の世界のことなど考えもしない。まるでそんなものなど存在しないかのように振舞っている。だがそれは、人々の意思に拘らず、厳然と存在する。誰も否定はできなない。
嫌でもそのことを思い知らされるのが、死の瞬間だ。死という圧倒的真実の前には、いかなるファンタジーも無意味と化す。だが同時に、死があるからこそ、ファンタジーは命を保てる。』
めちゃくちゃ面白い。
(上)の最後の部分、ぞわっとくる。 -
子供の頃、藤子不二雄の「モジャ公」という漫画があった。宇宙冒険するまんがだが、その中に、不老不死の星の話があった。
死ぬことができないその星の住人は、虚ろで覇気のない生活をしていた。他の星から来た主人公たちは、この星では起こらない「死」を持っていて、一大イベントとして危うく処刑されるところだった。
そんな話だった。ずっとその話が頭から離れなかった。
この本では、不死ではないが、不老処置HAVIにより永遠に生きることができる世界を描いている。ただ、百年法によってHAVIを受けてから百年後に必ず死ななければならない。
本当に不老になった時、どのようなことになるのか、じっくりとシミュレーションしている。少し強引なところもあるが、概ねこうなるのだろうと思える。
この世界、どのようになるのか。下巻が楽しみ。 -
不老不死を実現させた人類に訪れる存亡の危機.これぞ小説の醍醐味だろう.読むほどにこの世界に沈み込める.早く下巻を読もうっと.
以下あらすじ(背表紙より)
不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならない―国力増大を目的とした「百年法」が成立した日本に、最初の百年目が訪れようとしていた。処置を施され、外見は若いままの母親は「強制の死」の前夜、最愛の息子との別れを惜しみ、官僚は葛藤を胸に責務をこなし、政治家は思惑のため暗躍し、テロリストは力で理想の世界を目指す…。来るべき時代と翻弄される人間を描く、衝撃のエンターテインメント! -
終戦後、アメリカから不老技術”HAVI”を導入し不老不死となった日本。しかし人口調整のためHAVIを受け入れた者は100年後に死ななければならない通称”100年法”も制定された。そして2048年、最初の100年が迫ろうとしていた。
100年法をめぐっての政治家の暗躍に国民それぞれの揺らぎ、そして国家を飲み込むうねりというものがとてもよく表現されていたと思います。壮大な設定ながらリアリティを持って読み進めることができました。
上巻では第一部、二部、三部の一章までが収録されているのですが、その構成が巧いなあ、と思いました。と言うのも第一部は100年法が執行間近の2048年、
第二部では時代が飛んで2076年、第三部はそれからまた20年ほど後、と時代は飛び飛びながら、
最小限の描写で読者に時代の大きな変化を理解させるあたりが(特に48年から76年の間で社会に大きな変化が訪れています)非常に巧いと思いました。いくらでも書きこもうと思えば書き込めるところだ思うのですが、そこをダラダラと書き込まないことで、
世界観の説明に終わらず、各登場人物たちの死へ向けての葛藤がしっかりと書き込まれていたと思います。
死にたくないけど永遠に生きたくもない、そんなセリフが小説内に出てくるのですが、読んでいる自分もその言葉に最も共感できました。
単に人口が多くなるから、という理由だけでなくやっぱり老いであったり死という区切りが無ければ、世界や人間関係にいつか我慢できなくなってしまうのではないかと思います。
でもこういう風に思えるのも自分がまだ若くて死が実感できないからであって、作中のように若い肉体のまま死を強制させられる立場になるとまた変わってくるのでしょうか。
そう考えると老いや病気やけがで体が弱ってしまうのは、死に対する覚悟や心の準備のための期間なのかもしれないな、とも思います。
政治部分の描写で恐ろしく感じたのが、自然な流れで独裁政治が完成してしまっていることでしょうか。これも100年法の設定を生かしたものなのですが、とても綺麗な流れでそうした政治体制が出来上がってしまいます。
作中の官僚の言葉で、民主政治でも国民は間違うことがある、といった趣旨の言葉があるのですが、それが非常に実感を持って思い出されました。
そしてその官僚が続けて言った言葉が、間違うことがある国民を正しい方向に誘導するのが政治の仕事とあります。では果たしてこの誘導が正しかったのかどうか、それはまた下巻でのお楽しみ、といったところでしょうか。
第66回日本推理作家協会賞
第10回本屋大賞9位