光降る丘 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041043585

作品紹介・あらすじ

「汗と土が生んだ、こいつが俺らの宝石だ!」2008年6月14日、栗駒山中腹の共英村は凄まじい揺れに呑み込まれた。崩れる山、倒壊する家々、故郷の危機に胸引き裂かれる智志。そして祖父・耕一が行方不明に……。いつ終わるともしれない捜索活動の中、智志を奮い立たせたのは、かつて祖父が話してくれた、戦後開拓時代の物語--シベリアからの帰還、開拓初期の苦難、仲間の死、はじめて電気が灯った日、起死回生のイチゴ栽培……土と汗と涙と、笑いに満ちた「あのころ」のパワーが「いま」を明るく照らす、あたらしい日本の成長物語!執筆途中に3.11を体験した著者が世に問う、現地にいたからこそ描ける、復興にかけた人々の汗の結晶の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 宮城県にある実在する市をモデルに描かれた一冊。
    戦後、地区を開拓した祖父、
    二代目 三代目と続く父親、息子の話。

    開拓一世になる祖父たちのなんと力強いことか。
    東京生まれ東京育ちの私には想像もつかないけれど、
    自らの手で生活を築き上げてきた主人公たちは
    想像以上に、一日一日を丁寧に生きていってるのだろうな。

    震災を受け、遭難した祖父を救出しにいくシーンでは思わずウルっときてしまった。

    やはり日本に住んでいる以上は、地震や其の外の災害は避けられないのだな、と再確認。

  • 2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震で大きな被害を受けた栗原市耕英地区を舞台にした祖父と父親と息子の三世代を描いた物語。

    岩手・宮城内陸地震の翌年から東日本大震災を挟んで連載された物語は、多くの被災者に希望の光と生きることへの勇気を与えてくれる内容だった。直下型の地震に見舞われ、苦闘する父親と息子の現在と、祖父の開拓民としての苦難に満ちた過去が交互に描かれる。

    開拓移民団として満州に渡った大友耕一は苦難の中、日本に引き揚げ、栗原市の共英地区に新たな開拓の地を求めるが…

    ここからは蛇足。

    あの日は土曜日だった。下から突き上げるような大きな地震にベッドから飛び起きたのを覚えている。自分の被害の大きかった栗駒山から離れていたので停電にはならなかったが、新幹線が止まり、高架橋から乗客が避難するのを目撃した。次第に明らかになる地震被害の大きさ、馴染みのある厳美渓から栗駒山に向かう道路の橋が落橋した姿に驚いた。その3年後にまさかあのような東日本大震災が起きるとは全く思っていなかったのだが、岩手・宮城内陸地震をきっかけに水や食糧などを家に備蓄したことを覚えている。

  • 苦労の度合いが違いすぎる!
    明日を少し前向きに!って思える


    桃子ちゃん、かわいい

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/568950

  • 開拓地という単語は聞いたことある程度でさほど興味を持ったことがなかった。
    が、この本を読んでみて開拓地の背景や開拓することの壮絶さに絶句し、ただただ敬意の年でいっぱい。現代の生ぬるい生活にどっぷり浸かって何にも感謝できないような世代に、最近の若いもんはと言いたくなる気持ちよくわかる。この世代のパワーすごいです。

  • 戦後開拓民たちの生き抜く事への貪欲さと力強さにただただ圧倒。そして何世代にもわたり命をかけて築きあげた自分たちの居場所をいとも簡単に崩し去ってしまう自然の猛威。なんとも虚しい…が、そんな状況の中でも最後に開拓一世の瞳に輝く未来が映った瞬間、全てが救われた気持ちになった。

  • 本作の単行本刊行年月から東日本大震災の話と思っていたら、モチーフになっていたのはその3年前に発生した宮城県内陸地震の模様。

    その後の震災(東日本と熊本)の印象が強くてすっかり記憶から抜けていましたが、本作を読んであのときのニュース映像などを思い出しました。

    そうした現代の地震を題材にした話と思って読んでいたら、第二章で唐突に昭和初期、満州開拓の話になったので、少々戸惑いました。

    智志とその祖父耕一が、それぞれ現代パートと昭和初期パートの主人公として交互に話が展開されるのですが、地震の話が軸と思っていたので、祖父の宮城県での開拓の話は必要?と思いながら読んでいました。

    しかし、読み進めていくと祖父のパートは救助対象者の個性深堀の為にあるのではなくて、被災した人たちがいかにその土地に根ざして生きているかを表したかったのでは、と思うようになりました。

    最終章で智志が地元で生きていく決意を新たにするところ。耕一にいたってはさもそれが当たり前のように山に戻る話をする場面を読んで、特にそう感じました。

    あとがきの最後に、それを書いている最中に熊本で地震が発生したことが記されていますが、タイムリーなことに熊本でのボランティア活動の帰りに本作を読了しました。熊本の町で倒壊した家屋を見るたびに、ここに住んでいた人たちも智志や耕一と同じ気持ちなのだろうかと考えてしまい、胸が苦しくなりました。

    宮城県在住の作者としては様々な対策において、地元に住まう人たちの気持ちを優先してほしいということを訴えたいのかな、とふと思いました。

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著者プロフィール

1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2000年に『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、04年に『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞。宮城県気仙沼市がモデルの架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」シリーズのほか、青春小説から歴史小説まで、幅広い作品に挑戦し続けている。近著に『我は景祐』『無刑人 芦東山』、エッセイ集『いつもの明日』などがある。

「2022年 『孤立宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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