荒城に白百合ありて

著者 :
  • KADOKAWA
3.46
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本棚登録 : 488
感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084335

感想・レビュー・書評

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  • タイトルとジャケットから想像したものと全く違っていました。
    赤くたぎるような熱情とは正反対の、会津藩の鏡子と薩摩藩の伊織。
    幕末の慌ただしく時代が動く中で、それぞれが生きるべきと思う人生を、心のないまま生きるふたり。
    相手を同じ生きものだと感じて、惹かれ、怖れ、手を伸ばして、逃げる。
    会津が燃える時、鏡子が人生の終焉を迎えようとする時に、ふたりは囚われから自分自身を放ちます。
    人生の最後に、初めて思うがままに生きるということを選択するふたり。自身の中にあった熱いものに従うふたりを、愛おしく感じました。
    最終章で、今までとは全く違った言葉遣いで伊織に話しかける鏡子に、やっと本音で言葉を発せたのね、とほっとしました。
    他の登場人物も魅力的な人が多く、それぞれの生き方に思いを馳せ、余韻を感じさせてくれるお話でした。

  • 2020.7.14

  • ★3.5
    会津藩の武家の娘・鏡子と、薩摩藩の青年・伊織。二人の行き着く先が見えているとはいえ、個々の視点から綴られる幕末の世が興味深い。そして、御家訓を何よりも尊ぶ会津と、薩摩隼人たれとされる薩摩。一時は道を同じくするものの、辿る結末の真逆さが何とも物悲しい。改めて、「こうあるべき」とされる事柄が多すぎて、生き辛い時代だったのだとつくづく思う。そんな中でも異色だった、鏡子と伊織が余計に生き辛いのは明白。悲劇だけれどラストには安堵しかなく、夢が目前に迫りながら絶えた伊織の微笑が、切なくて可笑しくて愛おしい。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    薩摩藩士の岡元伊織は昌平坂学問所で学ぶ俊才であったが、攘夷に沸く学友のように新たな世への期待を抱ききれずにいた。そんな中、伊織は安政の大地震の際に、燃え盛る江戸の町をひとりさまよい歩く、美しい少女を見つけた。あやかしのような彼女は訊いた。「このくには、終わるの?」と。伊織は悟った。「彼女は自分と同じこの世に馴染めぬいきものである」と。それが、伊織の運命を揺るがす青垣鏡子という女との出会いであった。魂から惹かれあう二人だが、幕末という「世界の終わり」は着実に近づいていて―。激動の時代に出会いし二人の、悲劇の幕が、いま開く。

    令和2年5月28日~6月1日

  • 同じ魂を持つものどうしがお互いに欲しあい
    恋愛とは違うもっと深い魂で結びつく。
    それは冷たく澄みしかし熱く激しい。

    実在した人々が多く描かれているなか
    竹子や雪子の後の生涯を知るとやるせない。
    幕末の会津は辛すぎる。

    本書のおかげで私の頭の中で今までごちゃごちゃしていた幕末が
    上手く整理されて一本の筋が通った。
    歴史小説としてもお勧め!

  • 幕末期の時代背景がかなり細かく記載されており、想像よりも物語部分が少なかった。

  •  鏡子さんの孤独が、うまく共感できないのは、なぜだろうか。

  • 擬態。母親やが見抜いてた事に脱帽。
    幕末モノは大好きだが、体育会的マッチョ思考を押し付けられるのは勘弁願いたいので、あの時代の男に生まれなくて良かった。

  • 20/03/22読了

  • 幕末にスポットを当てた小説は、それこそ枚挙に遑がない。

    けれども、
    視点を変える事でいくらでも…
    その表現の可能性は無限なのだなと改めて思った

    女性ならではの幕末。

    安政の大地震、友と共に水戸の上屋敷へ走る薩摩藩士・岡元伊織は、朱色の炎と轟音の中、あやかしの如く涼しげで優雅… そしておぞましく美しい娘・鏡子に出会い魂を鷲掴みにされる。

    人に知られざる自分…
    「人として欠落している何か…」がお互いを鏡の様に映し出す。

    鏡子の命の恩人として青垣家に歓待され、父や兄から婚姻の話まで出るが、断ち難い因縁に気づきながらも気持ちと裏腹にすれちがってゆく。

    鏡子が会津の上士に嫁ぎ二人の子を為し、決定的に行く道を違えた二人に見えたが・・・

    幕末という時代の奔流に弄ばれ、再び…

    終焉の共有…
    そこに命を掛ける意義…
    これこそ女性の視点なのか。

    ラストの
    「あなた、またなの」

    そして…

    「仕方ないわね」

    に、何故か涙が溢れて仕方なかった。

    ◯青垣鏡子(森名)・・突出した美貌と頭脳を持ちながら、「心」を持たず人生を演じる会津藩中士の娘。
    伊織との因縁を振り切って上士・森名篤成の後添いに入り、長女・幸子、長男・虎之助を産むが、幕府滅亡に伴う東征軍との戦いで夫を喪い、その後の会津攻めで敵の迫り来る中、幸子と共に自決しようとするが…

    ◯岡元伊織・・昌平坂学問所で学ぶ俊才の薩摩藩士。鏡子との邂逅により己の本質を突きつけられその虜となり終生・・・。
    藩主・久光にも重用されるが、幕末、藩の総意が一気に倒幕へと傾く流れに乗れず大久保・西郷らと袂を分かち冷遇される。
    政府軍の東征において、鏡子の住む会津攻の参謀を務めるのだが…

    ◯青垣万真(かずま)・・鏡子の兄。幼くして書の才に秀で、会津藩士の模範であろうとするも「尊王攘夷」思想の持つ妖しげな魅力に抗えず二律背反に苦しみながら若くして散る。

    ◯中野竹子・・気性激しく、武芸・学問・書… 悉く男を凌ぐ。
    鏡子にとって親友であり、「まっとうな人間」の模範となる存在。  後に幸子の師となる。

    ◯池上四郎座衛門・・伊織の心の闇を知りながらも、その才能を心底認めていた年下の薩摩藩士。伊織の鏡子への断ち難い想いも本人以上に…。
    最後は伊織の命を断つ。

    ◯森名篤成・・鏡子が嫁いだ夫。会津藩・上士。政府東征軍との戦いで死亡。

    ◯森名通子・・篤成の母。
    前の嫁をいびり殺した?鬼とも会津女の誉とも評される姑。



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著者プロフィール

『惑星童話』にて94年コバルト読者大賞を受賞しデビュー。『流血女神伝』など数々のヒットシリーズを持ち、魅力的な人物造詣とリアルで血の通った歴史観で、近年一般小説ジャンルでも熱い支持を集めている。2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、17年『また、桜の国で』で直木賞候補。その他の著書に『芙蓉千里』『神の棘』『夏空白花』など。

「2022年 『荒城に白百合ありて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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