無花果とムーン

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.38
  • (60)
  • (133)
  • (169)
  • (61)
  • (14)
本棚登録 : 1347
感想 : 188
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041103210

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • <18歳の夏。えいえんに大好きなお兄ちゃんが死んだ。>

    紫の目と狼の牙を持つ美少女、前嶋月夜はもらわれっ子である。UFOが来るという噂のある街、無花果町に住み、高校3年生の夏を迎えた。小学校で教頭をしている父と、地銀に勤める兄貴・一郎と、そして1つ年上のお兄ちゃん・奈落と4人で暮らす。母親は月夜がもらわれてきた頃、入れ替わるように出て行った。
    重度のアーモンドアレルギーを持つ奈落は、その夏、誤ってアーモンドを口にし、突然この世を去る。しかし、月夜にはどこかにまだ奈落の気配が感じられる。
    奈落の友だち、高梨先輩。奈落とつきあっていたイチゴ先輩。月夜の友人である女の子集団。一郎の後輩でもある月夜の担任の先生。異国から来た季節労働者、密と約。
    さまざまな人を交えて、月夜の「幽霊の夏」が始まる。


    多分、このお話と主人公・月夜を大好きだと思う人がいる。反対に、大嫌いだと思う人がいる。
    そしてその手前に、このお話自体に入り込めない人がいる。
    入り込めない理由は、現実離れした設定かもしれないし、登場人物の凝りすぎた名前かもしれないし、月夜の一人称視点で繰り広げられる語りかもしれない。

    自分はどうかといえば、入り込めない1人だった。
    理由は、「生活感のなさ」である。幽霊がどうとかではない。その手前だ。
    人は霞を食っては生きていけない。
    ファンタジーに無粋なことを言っても仕方がないが、3歳の子を犬の子を拾うようにもらってきて、母親が出て行って、教師をしている父親が涼しげに切り盛りしてきたなんて、控えめに言っても「想像がつかない」。UFOよりも幽霊よりも、お話の舞台がそもそもファンタジックすぎる。
    そんなふわふわとした設定で生と死について何か言われても、「え? そこはほんとなのか??」とたたらを踏んでしまう。
    うーん。

    挿入される「月紫鏡」の話は、どこかで聞いたような話だが悪くなかった。無花果が実の中に花を隠しているという話もよかった。縄文柴が混じった雑種の犬もいい味を出していた。全般に雰囲気も嫌いではなかった。
    しかも、ほんとを言うと、最後はちょっと泣けたのである。

    うーん。
    いっそ、舞台が例えば「魔界」とか、思い切り現実から離れていたらよかったのかな・・・?
    嫌いではないが、ちぐはぐな感じが残る。
    この作者が自分に「合わない」のかどうかまでは判断がつかない。機会があればまた別の作品に手を伸ばすかもしれない。


    *あと、酒井駒子さんの表紙はすてきだけれど、この少女は18歳よりずっとずっと幼く見える、と思う。

  • 18才と19才の壁

  • 喪失を認めること、受け入れることは難しい。真っ向から向き合って悲しむことを避けていると、何処かに歪ができて、修正することがどんどん難しくなっていく。
    愛する、兄を失った月夜だけでなく、弟を失った一郎や、息子を失ったお父さんが、その喪失を受け止めるまでの物語だった。

  • 想いを残して死んだ兄(奈落)と、兄への思いを断ち切れない妹(月夜)。
    読み進めるうちに、ファンタジーなのか、月夜の妄想なのかがわからなくなり、結末が読めなかった。
    月夜

    残された者は悲しい。
    だけど、前に進まなくてはならない。

    月夜だけじゃなく、父も兄貴も友達も、気持ちの整理に必死だった。
    月夜以外の登場人物の、サイドストーリーがあれば読みたいと思った(客観的に見た、月夜の行動がみてみたい。)

  • 自分のせいで兄が死んでしまったと思い兄の死に固執する奈落。一方、他の家族は死んだ兄のことを忘れようと努める。死んだ兄にとって奈落の行動は嬉しかったんじゃないかなと思う。ただ、いずれは死を乗り越えて前に進んでいかなくてはならない。でも、それは死を忘れるということではなく、死を肯定的に受け止めて自分の中で消化することにほかならない。

  • 頭で分かってた事が心で分かるその時の瞬間がもうなんか泣けました。
    イチゴ先輩が好きです。
    お互いに大嫌いって遠慮なく言い合ってそれでも険悪という訳でもなく、子犬がじゃれあってるようなあんな関係がいいなぁって思いました。
    無理して好きだよーって言い合ってるよりは精神衛生上よっぽどいいですよね。
    一番身近な異性がすごくイケメンだとかそれなんて夢展開って思うけどただの悲劇でした。

  • 最愛の継兄の死、月夜が抱えた秘密。
    そして継兄の気配と、自らが継兄の面影を乗り越えていく月夜の姿を幻想的に、そしてそこはかとなく暖かに描いていました。
    面白かったです。

  • 昔ほどのこちらの身を切られるような痛みや悲しみ、絶望感、喪失感はなくなってきたなあと思いました。
    作品自体はラノベ作家時代に戻っている感じです。伏以降から桜庭さん本人が大量にインプットしてきた古今東西の文学の気配が薄れてきたように思います。
    イチゴ先輩が好きです。

    ときに、私の男では「おとうさん」、ファミリーポートレートでは「おかあさん」、今作では「おにいちゃん」
    次は何なんだろう。

  • 血の繋がらない兄が死んだ女の子の不思議体験。

全188件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜庭一樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×