キッチン (角川文庫 よ 11-8)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041800089

感想・レビュー・書評

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  • あたたかい人間味のある話だった

    うまく説明できないけど心が満たされる感じ

  • よしもとばななさんの言葉使いのファンです。
    共感してくださる方、コメントなんでも待ってます。

    「その人はその人を生きるようにできている。
    幸福とは、自分が実はひとりだということを
    なるべく感じなくていい人生だ。」
    *この本は、本文のこの言葉に尽きます。
    更に、「なるべく」と言ってるところが、吉本ばななさんの配慮とか気遣いがみれて、深いなと思います。

    「いやなことがめぐってくる率は決して変わんない。
    自分では決められない。だから、他のことはきっぱりと、
    むちゃくちゃ明るくしたほうがいい」
    *この言葉には希望を見せられます、こういう生き方過ごし方をしたいとずっと思って生きてたので、答えあわせしているみたいでした。

    「もうたくさんだと思いながら見上げる月明かりの
    心に染み入るような美しさを、私は知っている。」
    *うわー、わかるわ。と思った言葉。
    感性の豊かさを教えてもらいました。

    「くせ毛を治したくてドライヤーをかける
    ばかみたいにまじめな鏡の中の顔も知っている」
    よしもとばななさんは愛のある人なんだろうと察しました。

  • 優しい文体で綴られる、自分探しの物語

    大切な人を次々と失っていく主人公みかげ。居心地の良い場所「キッチン」が唯一の居場所。田部家に拾われてからは、その居場所がソファーに変わった。このままでは、また失いたくない人が遠くに行ってしまうのかもしれない。

    生活は満たされているが、満たされない心。その隙間を埋める代名詞がキッチンなのだろうか?美しく優しい文体が現実の厳しさと悲しさを際立たせる。

  • こんなにも透明感のある本を読んだのは
    初めてかもしれない。

    大切な人を亡くした人なら、必ず共感できると思う。
    どうしても避けられない死、どこにもぶつけようのない
    やるせなさだったり、心にあいた暗くて
    大きな穴のような絶望感を表すのがとてもうまい。

    それが、暗いだけでなく、時たまふっと笑える表現が
    挟まっているから、ただ重く悲しい話では
    なくなっている。
    だけど、決しておちゃらけてはいないというか…


    死は辛いけど、生きていかなきゃいけない。
    決して忘れるわけではないけど
    前に進まなければならない。
    そこの葛藤が、すごく共感できた。

    独特の言い回しやリズムも
    読んでいるうちにくせになります。

    キッチンもムーンライトシャドウも、
    明るさを感じさせる終わり方なのがすき。


    携帯電話が全然出てこないので、もしかしたら…
    とは思ったけど、けっこう前のお話なんですね。
    全然古くささを感じませんでした。


    あの私の幼い面影だけが、
    いつもあなたのそばにいることを、切に祈る。
    この一文がすごくグッときました。

  • しばらくぶりに再読。「満月ーキッチン2」が特によかった。自分の持てなかったものを持っている女性たちに対する視線が自分のそれと重なり、「人はその人を生きるようにできている」のだと。逃れようと頑張っても結局はそうなってしまう自分の生まれや育ちからくる人生を受け止め、歩み、時たま見られる美しいものを大切にしていくしかないのだ。「起きて、着替え、また現実の一日へスタートする。くりかえり、くりかえしスタートする。」
    もう生きてはいけないくらいどん底の状況でも、生きる。必ず。

  • 独特のリズムを持つ文体で、大切な人を失い続ける主人公の物語が綴られています。タイトルにもなっている台所が、物語の随所に舞台として登場するのは、大切な人を失い世界がどれだけ変容しようとも、相変わらず人はものを食べ、日常を送って生きることを続けていかねばならず、その「食べること」や「日常」の象徴として台所が描かれたのかなとぼんやり思いました。好みの分かれるテンポの文体が、個人的にはとても心地良かったです。

  •  読み終わってすぐキッチンを片付けて、ごはんを作りたくなった。 食べることを大切にすることは、自分を大切にすることだと思った。

  • 家族を無くした人生の孤独を感じました。
    でもそんな孤独の中で、しっかりと自分を保って、プラトニックな関係を温めていくみかげと雄一がただただ羨ましい。

    みかげさんはスクールに料理を習いにきた女の人たちを見て、『幸せを生きている人たちは本当に楽しいことを知りはしない』みたいなことを言うけれど、人生の楽しみや充足に本当とか本当じゃないとか、そんなことあるのかなと思ったりもした。
    寂しい想いをしてきた分、私は彼女たちより本当の楽しみを知っているんだ、って。そういったところに顔を出すちょっとしたささくれみたいなものが、綺麗過ぎなくて好きだけれど。

    えり子さんの手紙では、人の気を引こうとして、人の嫌がることをしてしまう人のことが書いてあって、何だか自分のことを言われているようで、胸を突かれました。

    この作品を通して感じたのは、やっぱり人間が最終的に行き着くところは、恋とか愛みたいに情熱をもって語られるものじゃなくて、家族的な穏やかさなのかな、ということでした。

    隣に寄り添ってくれる人ってありがたいものだったんですね。
    それを強く感じるのは、失ってしまってからってのが悲しいところです。

    私もいつかそういうものを失ったり、手に入れたりするのかと思うと、時間が止まって欲しいような、進んでほしいような、やりようのない感情がふつふつと沸いてくるのを感じました。

    ムーンライト・シャドウは恋愛の絡んだ話のようだったので、なんとなく、キッチンから受け取った静謐な雰囲気を壊したくなくて、読むのはしばらく後にしようと思ったわけです。
    それくらい、キッチンの読後感が良かったということかもしれません。

    もっと早く出逢えてたらな、と思った作品でした。

    ・追記

    しばらく時間をおいて、ムーンライト・シャドウも読んだら、思っていた話と全然違いました。

    四年間連れ添った恋人との死別を乗り越えるまでの悲しいストーリーに、共感を覚えました。
    離別してみるとその人との時間が急に貴いものに感じたりすることはありますね。
    どうしてもっとよくしてやれなかったんだろう、と後悔したり。
    過去の思い出が甦って心がくすんだようになってしまったり。

    死別ともなれば、相思相愛で引き裂かれるのですからつらさは倍増でしょうね。

    でも、人は皆いつかは誰かとお別れをしなきゃならない。
    すれ違いの中に生きているんだということを強く感じさせられました。

    一生添い遂げる、想い続けるみたいな恋愛がしたいと思った時期もありましたが、そんなのは幻想なのかもしれない、そんな風に思い始めた頃合いに読んだので、とても琴線に触れました。

    後悔を残さないためにも、隣でなんの気なく笑ってくれる人達を大切にしようと思える作品でした。

  • 読み終わると不思議な感覚になる。
    暖かい気持ちになるような、とてつもなく寂しい気持ちになるような・・・。
    どう言葉にするのが適切なのか分からないけど、とにかくすごくよかった。

    分かるような、分からないような。
    希望のような、絶望のような。
    笑いたいような、泣きたいような。

    何だかそんなものを感じました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「読み終わると不思議な感覚になる。」
      へぇ、、、よしもとばななって、ちゃんと読んだコトがなくて、近々初挑戦?
      「TUGUMI つぐみ」と「パ...
      「読み終わると不思議な感覚になる。」
      へぇ、、、よしもとばななって、ちゃんと読んだコトがなくて、近々初挑戦?
      「TUGUMI つぐみ」と「パイナツプリン」を読もうと思ってます。その次は「キッチン」にしようかなぁ~
      2013/07/31
  • せつない。喪失感とどうしようもない孤独。
    生きていけなくなる状況の時に、
    うちにおいでと誘われるまま居候して、
    緩やかに生きる力を吹き返す。
    とっても優しい感情に包まれる。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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