天使の囀り (角川ホラー文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041979051

感想・レビュー・書評

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  • 面白く読めたが、気持ち悪い描写も多いので人は選びそう

  • 少年パートも挟むので、前半のペースがやや鈍重な気もする

    だけど、綿密かつ多方面の取材が必要だっただろう知識の物量はすごい……
    かつ、それを生理的嫌悪感を催すホラーに丹念に編み上げているんだから、スゴイですよね

    ただ、最後は賛否分かれるところで……
    感涙する人も、自己満足だと言う人もいるのかもしれませんね。
    自分は、主人公の自己満足だと思います。あの少年だけを選んだのも、最もかわいそうと思ったとかのエゴなんでしょう。
    だけど、それでいいと思います。いいじゃないですか、人間らしくて……

  • 時代が移り変われば恐怖の対象も自ずと形を変えていく。進化していく細菌やウイルスのように。
    これだけ科学が発達して、もはや心霊や化け物のような非科学的な存在が陳腐と化した時代。科学が発達したことによって生まれたあらたな嫌悪の対象を描くことによって新しい怖さを体感させてくれた。
    寄生虫による疾患というのはもちろんのこと、最初にアマゾンで登場人物たちを感染させること(しかも気味の悪い悪魔のような生き物を食べることによって)で未知の不気味さをますます増幅させ、そもそもこの疾患の正体はなんなのか?という謎解きの要素まで持ち合わせている。
    某団体の事件のあとでもあるため新興宗教に対する多少の嫌悪感もあり、また虫や動物、不潔、醜形恐怖、先端、死といったいくつかの恐怖症を挙げることによってそれぞれ個人に当てはまる恐怖の対象も読者が自然に想像し、気持ち悪さを増大させる構造になっている。わたし自身も蜘蛛がものすごく苦手なので途中読んでてしんどかった。ああ考えるだけでもおぞましい…ガクガク。
    自分がもっとも恐れているものに殺されるという潜在的な怯えと、その原因が寄生虫という普通に考えてほぼすべての人が気持ち悪いと思うであろう生き物にあり、その上そいつらに体を乗っ取られ遺伝子までも操作されるという強烈な嫌悪感が相まって、人間が一番怖い系ホラーや影のないもの系ホラーとはまた異なった独特の気持ち悪さが演出されている。書き方が本当に上手く惹きつけられる。
    主人公が精神科医でありながら心理学に詳しいということでフロイトの夢判断のような文系的な知識が所々に垣間見られのも面白い。心理学や文学に対して精神医学、寄生虫学といった文系と理系のコントラストが奇妙にマッチして現実味を帯びているところも本作の見所の一つであると思う。

    またこの小説、ただの大衆ホラーでは終わらず、薬害や安楽死という問題にも踏み込んだ社会的な一面も持ち合わせている。強い恐怖を快感に変える寄生虫に自ら感染することによって苦痛からの解放を図った人々を見て、直接的にも出てきたペインコントロールや安楽死、尊厳死への暗喩を感じた。身体的なものでも精神的なものでも苦痛を薬によってコントロールすることは良いことなのか。あるいは死にたがっている人間を本人の意思通り死なせることは正義なのだろうか。という一貫した生命への問いかけを感じる。本来人々の命を救うために存在する医者が薬を投与し、患者の命を奪うという矛盾と違和感。薬害に関しても同様だろう。さらに恐るべき感染症や薬害による被害を予測できながらなにもしない官僚たちへの批判と皮肉(←特にこれは今まさにコロナで身をもって痛感していることだろう)。
    「線虫そのものに悪意があるわけではない」といった記述もあり、また動物実験に関するシーンも多々あるためそういった問題にも触れていると思われる。
    寄生虫という不気味な生き物を通して生命倫理、現代医療や官僚制の問題にまで踏み込んでるだと…!とまじで脱帽してしまった。ちょっと俗っぽいかな〜とか思って舐めてたの本当にすみませんでした。久々にめっちゃ楽しい読書体験だった。ova版のブラックジャックとか好きな方にはかなりハマりそう。 

  • ホラーかどうかはさておきお化けではない怖い話
    これを書くためにどのくらいの調査、学習が必要だったのだろうかと思う程沢山の知識が詰め込まれてもいる
    描写はおぞましいし、グロテスクだけど、推理小説的な要素もあって面白く読めた

  • これは現代日本のホラー小説の傑作だった。
    この作者の本はほんの少し読んでいたが、特に『黒い家』は傑出した出来で、描写力に並々ならぬものを感じていた。
    本作も、描写が素晴らしい。筆力が優れているので、迫力がある。
    生物学などの知識をかなりよく調べているし、それらを上手に取り込んでいる。
    スティーヴン・キングのような独白体の生々しさはないが、現代日本人の淋しい生き様を上手に点描していると思う。
    鈴木光司さんの『リング』シリーズや瀬名秀明さんの『パラサイト・イブ』に比肩するか、あるいはそれらを凌駕していると思う。映画化してしまうと、この作品の良さは失われてしまうかも知れない。

  • 貴志祐介の小説の中で最もグロい作品。最後の方の浴槽シーンでは、変異した体を細かく描写しているため、容貌が容易に想像でき、思わず身震いした。

    貴志祐介作品全般に言えることだが、この小説は比較的ページ数が多いが夢中になって読めるので、そこまで長く感じなかった。

  • 神話の話のところは興味がわかず読み飛ばしてしまった。。ちょっとリアリティに欠けるかな?と思うところもあったけど、常につきまとう緊張感はやはりさすが貴志祐介作品。怖いというより気持ち悪かったなあ。

  • H30.09.16 読了。

    うわー、面白い。
    貴志先生の頭の中はどうなってるのか。もうね、本当天才。天才だよこれは。

    何書いてもネタバレになってしまうネタが、とにかく気持ち悪い。
    吐き気を催す程。
    読んでいる途中で、そのネタだよね、とは薄々感づいてはいたが、想像以上に気持ち悪くてビックリ。

    グロいっちゃグロいんだけど、グロいなんてレベルじゃない気持ち悪さ。
    なのに面白い。
    最後もすっきりしていて、死角ゼロってくらいまとまっている。

    ただ、あえて悪い点を挙げるとすれば、パソコン・インターネット関連の用語の書き方が拙い。
    確かに分からない読者もいるだろうから分かり易くする為の配慮は必要なことかもしれないが、何か違和感。

  • ちょっと気持ち悪いシーンが多く、そのときの人物の感情がしっかり書かれているので、グロさが半端ない。

    全体的には面白かったが。

  • 貴志祐介さんの本で初めて読んだのがこれでした。
    読んだあと、何度もネットで、それが本当にあるのかどうか調べたのは、私だけではないはず。
    初めて読んだ作品ですが、いまのところ、彼の作品では一番気に入っている(好きと言うにはちょっと語弊がある感じ)作品でもあります。

    先入観無しに読んでぐいぐい読み進めていって、ぞっとしてほしいです。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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