彼女が死んだ夜 (角川文庫 に 9-1)

著者 :
  • KADOKAWA
3.45
  • (24)
  • (60)
  • (121)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 430
感想 : 57
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043540013

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  西澤保彦のデビュー作『解体諸因』に登場した匠千暁、通称タックが初めて取り組んだ事件。タック・シリーズの時系列的には第一作目だ。ノベルス版では「匠千暁第一の事件」とサブタイトルがついていた。

     箱入り娘のハコちゃんこと浜口美緒は、珍しく大学の友人たちと遅くまで飲み会を楽しんでいた。その日は両親が外出して家に誰もいない日だったので羽を伸ばしたのだ。そんなハコちゃんが夜遅く帰宅すると、何と家の中に見知らぬ女性の死体!ハコちゃんは飲み会で一緒だった男性陣を呼び出して、「死体を運び出して」ととんでもない依頼をする。実はハコちゃんは翌日にアメリカ旅行を控えており、それを台無しにされては困ると言うのだ。
     とんだ事件に直面してしまったタックこと匠千暁、ボアン先輩こと辺見祐輔、タカチこと高瀬千帆、ウサコこと羽迫由紀子のキャンパス4人組はなるべくこっそり事を運ぼうとするが、やがて問題は大事件に発展していくのだった。

     見知らぬ女の死体や、無残に切られた髪、それが詰め込まれたストッキングなど、謎めいた小道具が事件を怪しく展開させる。不可解に見える現象が実は大きな意味を持っている。それらのヒントは実はちゃんと読者の前に提示されている。
     タック・シリーズの特徴は、そんな謎解きの面白さだけでなく、キャンパスを舞台とした主人公たちの成長する姿にもある。人間関係の暗部を見つめ、傷つきながらもそれを乗り越えていく様子は、ほろ苦い青春小説としても良質なものだ。本書でもその特徴がしっかり発揮されている。なんだかおっさんくさいタックと、豪快なボアン先輩の漫才みたいな掛け合いに、タカチが鋭く切り込む。それを楽しそうに見ているウサコ。楽しくキャラが立ちまっくている4人だけに、ところどころにギャグを織り込みながらもやがて明らかになっていく真相は痛切でやるせない。
     またこのシリーズのもう一つの特徴である「お酒」も存分に登場。そもそも事件の発端が飲み会後のことである。飲んだり酔っぱらったり吐いたり酩酊しながら脳みそをフル回転させるタックたち。飲酒シーンがやたら多いのがこのシリーズだけど、そのシーンが妙に美味そうなので読んでいるこっちも飲みたくなってくるのが困りどころ。

     匠千暁をはじめとする西澤作品の登場人物たちは、状況と残された証拠からあくまで論理的に真相へたどりつく。この論理の積み重ねが西澤作品の醍醐味だ。
     どんでん返しが待つラストにもびっくり。「彼女」が死んだ夜、彼らの運命が大きく変わり始めた。そして彼らは成長していく。心底そんなみんなを応援したくなる。

  • 箱入り娘のハコちゃんこと浜口美緒が家に帰ると、なんとそこには見知らぬ女性の死体が! 
    大学のキャンパス仲間を巻き込んで、事件は二転三転する。

    時系列順での、匠千暁シリーズ第一作。
    いやぁ、後味の悪いミステリーであった(笑)。
    キャンパス仲間同士の他愛ないおしゃべりは、軽い語り口でとっつきやすいのだが、扱っている内容は結構後ろ暗い。真相が判明するまでに、かなり人間の欲望だとか歪みが描かれている。それだけに、ラストのどんでん返しには驚いた。ここまでしてさらに、という感じであった。

    個人的には、タカチのキャラクターがよかった。冒頭の、彼女がタバコを吸うシーン、彼女のキャラクターを説明するとても上手い描写だったと思う。
    それだけに、ボアン先輩を別にして、その他のメンバーのキャラクターが少々印象が薄い気がした。しかしこれはまだシリーズ1作目だそうだから、そこは続編に期待したい。

    なんだかんだ言いつつ、ミステリーとしてはよく出来た作品だったと思うので、☆3つ。

  • 事件の真相と思っていたものが何度もひっくり返る、というより重要な部分を上書きされてる感じです。楽しんで読めました。それはそうと、どれだけタックは酒好きなんだか。

  • 2011/02/10読了

  •  出だしがなかなかショッキングなのでどうなることかと思って読み始めたけど、途中からタックシリーズだな、という展開になっていく。つまり、突飛な状況や出来事があって、どうしてそんなことになったのかを「想像」するという流れだ。「推理」と言いたくないのは、証拠とかそんな「些細なこと」にとらわれず、想像力が天まで届いていくからだ。快感である。

     もっとも、その「想像」が正解であるのは、あとから事実と合致するところが出てくるからであって、別の想像が正解であっても別にかまわない気がしないでもない。読んでいる時には、登場人物の絶妙なバランスのおかげで、自然に納得してしまうのだけど。

     今回の事件、実はかなりシリアスだ。現実にこれが起きていたら、やっぱり主人公たちの立場にはなりたくないな。

    2008/3/21

  • 友人である女子大生の自宅に撲殺されたらしき見知らぬ女性が転がっていて、それを運び出したら更なる事件に発展したという話。
    タックシリーズ第一弾。

    まだシリーズお決まりの人間関係が築ききれてない状態。
    なかなか最低な人間が出てきて救いもないんだけど、コミカルに進行します笑。

  • ハコにいらいらした。
    この作者さんの本を読むのは何度目かだけれど、なんだか文章がやけに読みづらかった。
    謎を解く人物の想像(推理)が、本当推理というより想像で、よくそんなことが思いついた(そして大体にしてあっている)なぁとちょっと都合がいいかなぁと思った。

  • タック&タカチ・シリーズ

    両親が留守中に発見された見知らぬ女の死体。発見者であるハコちゃんは旅行の計画が中止になることを恐れガンタに死体の始末を依頼。発見された死体。消えた同級生・宮下。ハコちゃんの家に招かれた客の消えた財布と強盗。タックの推理。宮下を追う男と恋人の謎。

    削除

  • 大酒飲み安楽椅子探偵シリーズ・第1巻!
    巷では(?)「タック&タカチシリーズ」と言われてるようです。

    ボアン先輩・タック・タカチ・ウサコのキャンパス四人組が
    酒を飲みまくりつつ事件を推理、
    二十歳前にしてすでにアルコール依存症気味の主人公・タックの
    一人称によって進められる本格ミステリです。

    推理の鮮やかさとラストの衝撃をぜひ楽しんでもらいたいです!

    (まじめなレビューになってしまった…)

  • 2004年12月15日読了

全57件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西澤保彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×