「みんなの意見」は案外正しい

  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047915060

感想・レビュー・書評

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  •  政治と民意の乖離が叫ばれて久しい。そもそも「『民意』は正しいものなのか、信用に足るものなのか」について考えてみたく、本書を手に取った。
     本書は、優れた個人の識見よりも、集団の叡智が優る事例を幾つも示しているが、いずれの場合においても、個人の意見の多様性、すなわち、個人が持つ私的情報が個々に特化したものであっても、それらを集約できれば、多岐多様な観点から物事の考察がなされたことになることと、個人の意見の独立性、すなわち、個々の意見は他に左右されないこと、の二点が少なくとも担保されていることが分かる。
     本書の例はいずれも日本以外の国の例である。「声が大きな者勝ち」の日本社会、「年功序列で若者が意見を表明すると生意気だと抹殺される」日本社会には、全く馴染まないというのが、私の率直な感想である。

  • 仕事上再読。集合知を扱う数少ない本でありながら、最もまとまっている本。
    事実を知る認知、他人とのやり取りを行う調整、分配を決める協調の三つを行うには、集合知が欠かせない。特に答えが明らかな認知の問題では、専門家よりも集団の知恵の方が良い。なぜなら極端な意見は多様性と意見の独立性が確保された集団の中では相殺され、真実に近いものが浮かび上がるからである。ただその意見をまとめあげる仕組みは作るのは難しい。
    調整と協調は、より良い答えを探すのは難しく(そもそも好みの問題の部分が大きい)、経験/文化などで解決されているものである。そこには慣習化され、それが壊されるだけの閾値までに達しない非合理的な物も残ってしまっている(例えば、テレビの視聴率の計測法)。

  • その名が示すように“みんなの意見”は“案外”正しい。
    賢い個よりも凡百の集合知、絶対ではなく案外。最終的に語られる民主主義がまさにそこに行き着く、独裁ではいけない、多数決でもない、あらゆる知の集結が最良を生む可能性がある。
    あくまで可能性、失敗もすれば、とんでもない方向へも行く。

  •  ある集団が、ある賢い人間だけのグループより賢くなる場合はどんな時であるか。それは以下の4つの要件を満たしていることであるという。

    1)意見の多様性
    (それが既知の事実のかなり突拍子も無い解釈だとしても各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている)

    2)独立性
    (他者の考えに左右されない)

    3)分散性
    (身近な情報に特化し、それを利用できる)

    4)集約性
    (個々人の判断を集計して集団としてひとつの判断に集約するメカニズムの存在)

    似た者同士の集団より、多少能力が低く、スキルがかけていても、新しいメンバを迎えたほうが集団としてのパフォーマンスは向上することになるという。集合知の有効的な活用の研究は今後も進むことだろう。

  • 「Web進化論」で引用されていたので読んでみた。「Web進化論」ではgoogleをはじめとするWeb2.0系新興企業が 「集団の知恵」をビジネスにうまく取り込んで急成長しているという文脈で語られているけれど、 その裏付けとして紹介されていたのがこの本。

    本書では全編にわたり、多くの文献を引用しながら「集団の知力というのがいかに素晴らしいものか」を語っている。 確かに出てくる事例では集団の出す結論の精度は驚異的だ。でも、 それらがどう科学的に裏付けされているかについては全く触れていないので、 科学書としてははっきり言って失格。 ただ著者はコラムニストということでもあるし、 後半などはどちらかというと組織論や社会学の話題が中心なのでまあよしとしよう。

    とにかくこの本が言いたいのはひとつ。「集団で出す結論は、その中のどの一個人のものよりも常に優れている。 ただしそのための条件が揃っていれば。」

    「そのための条件」についてはここでは書かないが、要するにいろいろな意見がないとダメだとのこと。優秀な人間が集まる集団は、 「優秀」という偏りがあるので集団の知力は期待できないのだとか。それもケースバイケースだろうけどなあ。 とにかく実験結果や社会的事例をいっぱいを出して「ほらね!」と言われても、逆の実験結果は出ていないのかい、 再現性はあるのかいと突っ込まずにはいられない。

    逆に言うと・・・なんというか、 精神論的には勉強になる(笑)。たとえば職場の同じチームの中に、 どうもピントがずれてる人間とか、考えが浅い人間とかいるとする。 普通は腹が立つところだけど、本書の考えに従えば、 「彼らが居るからこそ集団としての知力が高まってるのだ」と考えられるわけだ。素晴らしい。

    そういう(著者の意図と少し違った)意味で、本書はすごい面白い。エンロン事件などの社会的事件や交通渋滞などの日常的現象を 「個人と集団の知力」という視点で分析したりして、とにかく話題が豊富だ。その分どうも発散気味だけど、知的興奮を味あわせてくれる。



    ということで、結論。

    著者の希望に反して、「集団>個人」の説得力はかなり弱い。事例が多いので納得させられそうだけど、引用してるだけ。 唯一の根拠は「集団で平均を取れば、個人の判断の誤差が吸収される」こと。これは統計学的にも明らかなので大して目新しくもないし、 それが通用する条件はかなり限られる。
    一方、集団の知力から展開される「集団における調整」「集団における協調」の話題になると、俄然面白い。 そこには企業や市場での組織- 個人の関係や、渋滞における個人間の行動など、 これまた多くの事例を引用しながら俯瞰的な視点で諸説を分かりやすく解説してくれている。このあたりがコラムニストらしく素晴らしい。

    ただし、いろいろなネタがぎっしり詰まりすぎているので、後で読み返したいと思ってもピンポイントで読み返すのが難しい。 結局、 知識として消化しきれずに(そこは大いに自分の力量不足なのだけど)「面白かったけれど役に立てにくい本」 になってしまいそうなのが残念だ。

  • 3分の2くらいまで読んだが、時間対効果を考え読むのをやめた。
    速読が出来るわけではないので、まるまる読むのは時間がかかる。
    エッセンスだけをまとめた簡潔なまとめ本でもあれば十分。

  • 2011 12/13読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りた。
    集合知についての著名すぎるくらいな本。
    我ながら何故今更・・・と思い手にとってが、手に取って読むだけの価値はあった。
    構成員の自立性、多様性、独自の判断(独立性)という要件を満たした集団の知恵(集合知)はおおむね正しい場合が多い(集団の中で最も正解に近い回答を出せる者に、個々の事案では正確性で劣ることはあっても、複数の事案がある場合の全体では集団の知恵の方が合っている場合が多い)、という主張を多くの事例を取り混ぜつつ紹介していく本。
    逆に言えば上記3要件が成り立つ場合でなければ集合知が正しいとは限らない、ということを主張する本でもあり、「集合知」という言葉がかなり知れ渡った現在ではむしろそっちの方が重要かも。自分もそこ間違って認識してたし。

  • 第12章
    民主主義 公益という夢

  • 少数精鋭主義を好む僕とは相対の意見を述べている本ですが、確かに、集団で決定した意見こそが結果的によかったということはよくあります。「みんなの意見」、つまり「集団の知恵」が世界を動かしたと言ってもおかしくはないですね。そう考えると、「多数決」ってスゴイ仕組みに感じますね。

  • 沢山の実験や事例が出てきて楽しめます。
    集団の論理や「社会的証明」等腑に落ちました。

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著者プロフィール

「ニューヨーカー」の金融ページの人気ビジネスコラムニスト。

「2009年 『「みんなの意見」は案外正しい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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