失はれる物語

著者 :
  • KADOKAWA
3.71
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本棚登録 : 4345
感想 : 617
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048735001

感想・レビュー・書評

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  • 切ない。
    calling youとしあわせは子猫のかたちは、好き。
    他は、短編だと物足りない感じだった。

  • 表紙に惹かれました

    切ない

  • 数年前、書店であまりの美しさに一目ぼれしたこの本。

    私は、「しあわせは子猫のかたち」「手を握る泥棒の物語」「失はれる物語」
    この3作がすごく好きです。

    しあわせは子猫のかたちを初めて読んだとき泣いちゃいました。それでも読み終わった後はすがすがしいようなすっきりしたような気持ちになりました。
    切ないのに切ないだけじゃない。
    どのお話にもどこかしらに救いがあって、その救いに逆に涙腺を刺激されちゃいました。

    何度読み返しても飽きのない本だと思います。

  • 読むたび思うのは、装丁の美しさ。失はれる物語が写りこむ仕掛や
    裏側の楽譜が表に透けて見える表紙、とてもレベルが高いと思う。
    切ない系乙一の地位を確立した作品であると。
    『幸せは子猫のかたち』とか割と泣いたもんね。
    『Calling You』スピンオフの『君にしか聞こえない』に至っては、
    映画号泣したもんね。試写会で配られたハンカチでは足りんかった。
    人を想う気持ちに弱い。笑
    よい作品は、物語を知っていても、何度読んでもよいと思える好例。

    『Calling You』
    「ぼくはきみを迎えにバス停へ行く。止めても無駄だよ。」

    クラスでひとりだけ携帯を持たないリョウは、頭の中で理想の携帯を想像する。
    バスの中で鳴り止まない着信音。頭の中の携帯が着信を示す。
    「本当につながった・・・」
    横浜のリョウと、1時間前の北海道のシンヤとを繋ぐ携帯電話。
    直接会うため、空港へ向かうリョウ。
    バスを降りて歩道を歩くと、制御を失った車がリョウの方へ向かう。

    「きみはいつも真剣に人の言葉と向き合っているのだと思う。人の言葉に対して、ひとつずつ意味をある答えを返そうとする。だから、多すぎるうそに傷ついていく。でも大丈夫。その証拠に、ぼくとはちゃんと話しているじゃないか」

    『失はれる物語』
    「ゆび YES=1 NO=2」

    会社員の夫と、元・ピアノの教師の妻。
    夫は交通事故で右腕の触感以外の感覚を失った。
    わずかに動く右指だけが夫の持てる最大の表現方法となった。
    毎日見舞いに来ては、右腕を鍵盤に見立て演奏する妻。
    演奏を通じて、年を経るごとに増す疲弊したイメージ。
    肉塊と成り果てた夫は、己の存在という妻の重荷を解き放つため
    ある行動に出る。

    一人で無音の暗闇に取り残されていた時間、自分は、ついに自殺する方法を思いついた。

    『傷』
    「傷の深さも、痛みも、半分ずつ。二で割って、はんぶんこだね」

    特殊学級に入れられたオレは、
    傷を共有できる不思議な能力を持つアサトと出会う。
    アサトの能力を使って街で傷つく人を助け、
    傷を病院で「捨て」、小遣いを稼ぐ二人。
    アイスクリーム屋のシホと出会う中で、
    顔の大火傷を3日だけ移すことを約束し、シホは二度と姿を現さなくなった。
    裏切りと自分の存在に傷ついたアキトは、全ての傷を抱えて死ぬことを決意する。

    親父の腕は、綺麗だった。

    『手を握る泥棒の物語』
    自分のデザインした腕時計が鳴かず飛ばずの男は、
    第二段の作成資金に、叔母の鞄の大金を盗むことを目論む。
    叔母が映画のロケへ向かったのを確認し、壁に穴を開ける男。
    鞄を掴んだは良いが、唯一無二の腕時計を部屋に落としてしまう。
    犯行がバレることを恐れた男は再度手を突っ込むが、
    部屋にいる叔母の娘を握ってしまう。

    『しあわせは子猫のかたち』
    見えないけど確かにそばにいる雪村の存在は、暖かく、心にそっと触れるものがあった。しかし、彼女や子猫の存在は、だれにも言わずにいた。

    大学生のぼくはいわくつきの物件でひとり暮らしを始めた。
    暗い心を持ち、ひとりきりを望むぼく。
    前の家主は、美しい世界を切り取る写真家の雪村サキと白い子猫。
    その日から、ふたりと一匹の共同生活が始まる。

    ぼくが見る幸せな夢と、幸せな夢を望んではいけないと想うぼくとのギャップに打ちひしがれる姿がグッとくる。これが間違いなく、本作のベスト。

    『マリアの指』
    鳴海マリアは電車に身を投げた。細切れになったマリアの葬式を終えた後
    恭介は自宅の庭に迷い込んだマリアの飼い猫がくわえる、白い指を見つける。

    私はね、死んだ後のマリアの魂まで殺したかったのよ。

  • 短編集。独特の世界観でせつない話ばかり。現実ばなれした設定、決してハッピーエンドではない内容。読みにくい要素満載なはずなのに、そういう印象を与えず、読み終えた後、すっきり感が残る。これが著者の魅力だろうか。
    どの作品も良いが、タイトル名のお話が一番印象に残った。

  • 身体の一部分から物語が立ちあがってくる光景に感動。そして、なにかフェティシズムめいたものを感じる。

  • 『幸せは子猫のかたち』がいいと聞いて読み始めました。
    でも本当は失踪ホリデーで読んだはずなんだよね私(笑)
    流し読みだったからなぁ失踪ホリデー以外の話は。
    で、もう一度トライ。
    中身は短編集。優しい話ばかりでしたが、表題作品はどうしようもなく悲しかった話でした。読破後少し引きずってしまいました。
    私が一番よかったのは幸せは子猫のかたち。
    人とあまり関わりをもちたくない主人公と死んでしまったけど明るくていいこだったいう幽霊の女の子と幽霊の女の子になつくネコ。可愛い話でした。

  • 8つの短編が入っているのにどれもハズレがない。
    物語に惹き込まれるように読み終えました。
    全体的に暗い印象が漂う作品ばかりですが、その作品に登場する人物は魅力溢れる人達ばかり。
    心が繊細で壊れやすい人物達。
    それってたくさんの感情を持ち合わせているから、人間らしい。
    紙の上でも彼らは生きてるんじゃないかと思うぐらい鮮明で愛おしい。
    短編の中でどれが一番良いかと言われたら、どれも良くて選べない。
    ただ、思わず涙を溢してしまった作品は
    「しあわせは子猫のかたち」という物語。暖かく悲しい。
    でもこの暖かく悲しい感情は、8つの短編全てに通づるものがあると思う。
    久々に読んだ珠玉の短編集だと感じる。
    読んで良かったと素直に思えた短編集です。

  • 表題作が切なすぎます…「ジョニーは戦場へ行った」を思い出しましたが自分から家族のために暗闇の孤独を選んだ決意に泣けました。「傷」と「Calling you」も優しさと切なさに感動しました。「しあわせは猫の形」は「暗いところで待ち合わせ」と雰囲気にてるなあと思ったら著者のなかで「Calling you」も含め三部作だったんですね。どうりで。

  • 素敵な短編集。切なくて素敵。

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著者プロフィール

1996年、『夏と花火と私の死体』で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー。2002年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞を受賞。他著に『失はれる物語』など。

「2022年 『さよならに反する現象』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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