ジョーカー・ゲーム

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738514

感想・レビュー・書評

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  •  面白かった!
    軍の話なんて暗ーくて残酷だったら、と不安に思いながら読みはじめる。
    あっというまに終了。
    「いかなるものにも、決してとらわれるな」
    「死ぬことなど誰にでもできる。問題は死んだからといって失敗の責任を負うことにはならない」
    繰り返し出てくるこの言葉は時代劇ファンには耳が痛い。

     ラストの結城中佐、惚れるー。

  • 昭和初期の陸軍にも秘密裏に結成された、スパイ養成学校「D機関」が舞台の短編集。
    時代背景に、最初は戸惑うものの、古典的なスパイ小説に仕上がっていて、なかなか面白い。

  • 大日本帝国軍のスパイ育成機関「陸軍中野学校」を知るキッカケになった。スパイとしての人生は孤独で非人間的なもの。隠れた存在であるスパイにとって殺人や自殺は1番してはいけないこと。帝国軍幹部の火消し役として使われる一方、卒業生は少数だが戦史に与えた影響は計り知れない。調べてみたい。
    堕落した帝国軍の描写が現在の国会議員と重なった。権威主義による思考停止、敗戦は何を意味するのだろうか。

  • 映画を見にゆきたかったのに家族と大げんかして
    ポシャったのでせめて原作を楽しもうと借りた本書。

    映画ではアクション活劇のような側面が強く印象に残り、
    スカッとしたくて観たかったのですが…。

    原作はむしろ淡々としたタッチの文章。
    スパイミステリは大好きですが海外物を読み慣れていると、
    この作品では食い足らない感じがしてしまうのです。

    本書はD機関と呼ばれる旧帝国陸軍内に設置された
    スパイ特務機関の活躍を描くのですが、連作短編で
    あっという間に終わってしまうので、慣れていない人には
    読みやすい好書といわれているのでしょう。

    しかし各話に収録されたスパイたちの誰かを他の話の
    登場人物に入れ替えても、特に問題がなさそうな感じ。

    そこが残念。

    私的には、上海を舞台にしたお話『魔都』の本間と
    最後に収録されている『XX』の飛崎くらいが
    印象に残るだけです。

    本間はD機関の人間ではなく憲兵隊員ですし
    飛崎もD機関から脱落して一帝国軍人に戻される人物。
    D機関の人間ではないと括れば、ある意味人物が紋切り。

    D機関の最初の教えである、スパイならば―。
    死ぬな
    殺すな
    見つかるな
    目立つな

    という考えに従えば、紋切りは優秀さを
    示すのかもしれません。

    でも私達は小説の読者ですから、各話の主人公や
    上司役の結城にもっと感情移入できたほうが面白いです。
    そういう意味で本間や飛崎のほうが印象的だというのは
    作者様には非常に皮肉ですね。

    スパイ小説の面白さは、政界財界軍組織などのエリートや
    スパイそのものになって、組織の人物としての感覚を味わう
    部分もありますが、描写が淡彩なのでそこまで入り込んでの
    なりきり感は楽しめません。

    その部分でもちょっとミステリ慣れしちゃった方には
    物足りないけも知れないです。

    ただし、ミステリや読書そのものに慣れていない方。
    自由に肉付けし、物事を立体的に見せたい映画というものの
    原作として読めば、確かに良い入り口や題材かもしれません。

    『謎解きはディナーのあとで』を読んだ時にも思いましたが
    こういう、さっと読めればっていう本が増えてしまったのは
    いいことかもしれないけど読者側の読む能力の衰えを感じて
    ちょっと切なくなります。

    これが面白かった方、続編お読みになったあと、ぜひ
    ミステリ専門の文庫などにも手を伸ばして下さい。
    これを書いてらっしゃる作家さんだって、絶対に!
    分厚いのを読んでます。面白かったら分厚くても、
    あっという間に読めちゃうものです。

    そしてそれでもこれが好きだったら、このシリーズの
    二次創作なんか、できたら素敵じゃないですかね。
    そこまで行けたら最高ですよ。きっと。

  • 中佐の声が聞こえてくる、「とらわれるな」

    概念・常識・思い込み・信条・信念・思想等々、およそ事実以外の全ての事にとらわれる事を良しとしない。決して陽のあたる仕事ではないスパイの、柔軟すぎる思考と行動の数々。

    読んでいて、自分がいかに多くのものに「とらわれて」生きているかを痛感した。とらわれるのは楽だ。思考を他に依存して、考える事を放棄できる。考える事は疲れるから、そこから解放されてストレスフリーで快適に暮らせる。しかし、いざという時に自分の力では何もできなくなってしまう。常に何かに頼って生きているから。

    スパイには、そんな甘えを一切許さず己の力だけで道を開ける者がなれる。何かを頼る者にとって、スパイはとても悲しい仕事に見えるだろうが、そうは見えない者がやっているのだから問題はない。僕には到底真似できないが、「とらわれる」事の危険性はすごぶる感じた。

  • 日本が戦争中の話。
    スパイとして潜入していた敵国にばれ、拷問をうけて、スパイとしてはやっていけなくなった結城中佐がスパイ養成所を立ち上げた。
    養成所の生徒たちが潜入捜査を行っていくのも面白かったのですが、「軍人でなければ人にあらず」や「武士道とは死ぬことと見つけたり」といった考えを正しいと考える軍人と完全なリアリストである結城中佐らの対比によって戦中の異常さが浮き上がって怖面白かったです。

  • こんなに面白かったなんて!
    遅ればせながら読んでよかったです。
    戦時中、密かに作られたスパイ養成所があり「D機関」と呼ばれていた。
    登場するスパイたちの仕事ぶりがすごーい。
    クールに書かれる諜報や罠や真相に夢中になりました。

    日本陸軍もたびたび登場。
    天皇の赤子、皇軍の一員として、個々人が命を棄てて戦争に赴くことを命じる組織。
    「D機関」の面々はそんな価値観を一蹴。
    精神論が幅を利かせる馬鹿げた陸軍の愚かさや組織の面子や幹部の保身などが容赦なく書かれているのは溜飲が下がり痛快でした。

    「ダブル・ジョーカー」も楽しみ。

    • たまもひさん
      私もこのシリーズ大好きです(ってこの前もこう言ってたような…)
      スパイ達のスーパーぶりが痛快で、クールな筆致のかっこいいこと!
      この前出...
      私もこのシリーズ大好きです(ってこの前もこう言ってたような…)
      スパイ達のスーパーぶりが痛快で、クールな筆致のかっこいいこと!
      この前出た新作「パラダイス・ロスト」も良かったですよお。
      2012/06/26
    • tsuzraさん
      たまもひさん、こんにちは。
      シリーズものの楽しみがふえました。
      嬉しい限り(^ ^)。
      パラダイス・ロストは予約が混んでいてしばらく先になり...
      たまもひさん、こんにちは。
      シリーズものの楽しみがふえました。
      嬉しい限り(^ ^)。
      パラダイス・ロストは予約が混んでいてしばらく先になりますが、いっぺんに読むともったいないのでちょうど良いかも。
      ほんとにD機関の面々は現実離れしてるほどスーパー!
      みごと、小説の世界にもっていかれました。

      2012/06/26
  • 面白いけど…そんなに上手くことが進むか?と登場人物の天才っぷりに「これならどんなストーリーもOK」になっちゃいそう…と凡人の脳みそでは若干ついていけずに苦笑い。
    時代背景もちょっと苦手…。拷問シーンは精神的に読むのが辛い。

  • とにかくカッコいい。
    何事にもとらわれない
    自分ごときにはできない生き方だけど、
    カッコいいです

  • 現場の情報だけでなく、ターゲットの経歴や愛憎欲を把握しミッションをこなすスパイの凄さに驚きました。あらゆる知識に精通し孤高のプライドを持って、臨機応変に動く姿は圧巻でした。広く長い視野を持って判断することの大切さを学べました。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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