- Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048739306
作品紹介・あらすじ
身に覚えのない幼稚園の同窓会の招待状を受け取った、葛見隆一。仕事と恋人を失い、長い人生の休暇にさしかかった隆一は、会場でミライと出逢う。ミライは、人嫌いだったという父親の行方を捜していた。手がかりは「厭人」「ゴリ」、二つのあだ名だけ。痕跡を追い始めた隆一の前に、次々と不思議な人物が現れる。記憶の彼方から浮かび上がる、父の消えた70年代。キューブリック、ベトナム戦争、米軍住宅、そして、特撮ヒーロー番組"宇宙猿人ゴリ"-。
感想・レビュー・書評
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この作家さんが好きで図書館で借りたが、やはりとても面白かった。おもわぬ角度から60-70年代のベトナム戦争前後の、昭和の空気感、歪つさと素晴らしさを知ることになった。これはいまの60代、70代が思春期〜青年期を過ごした時代です。この空気感を知ると、その後にバブルがやってきて、その人たちが子育てをしていた昭和の終わりから平成があり(私たちがこどもだったころ)令和のいまこうなっているという、時代の流れ、空気感がとても納得できた。
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中島京子の初期作(?)の典型的な雰囲気だと思った。なにか劇的なことが起こるわけではないけどすらすら読める、市井の一個人の内面と過去を掘り下げる話というか…。何度読んでも不思議と詳細を思い出せなくなるので、また数年後に読み返しているかもしれない。
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厭人家だった父がどんな人だったのか?人づてに出てくるエピソードは思いもしないように転がる。わざわざ話題にしたこともないけどもしかしたらうちだって…と思ってみたり。いるのが当たり前で若いときのエピソードなんて興味もないけど、いざいなくなった時思い出す記憶があるとないとじゃ違うんだろうなぁ…と我が身を振り返ってみたり。
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この作者の本を読むのは、初めて。
話の中心の蔵橋親子が、スゴくフワッとした雰囲気で、「よしもとばなな」の小説の登場人物を思い出させる。
でも、ストーリーはもっと現実的で、ミライのために隆一がテキパキとナゾ を追い求めていく。
語りを小説家にさせているので、たまに“誰が話してる??”って思う箇所があって、少し混乱したけど面白かった。
たしかに「エンジン」が厭人だとは想像もしなかった! -
タイトル見て「読みたい」「読みたい」と思っていて、やっと読めた。
思ってたより深いし重い。
でも、根底にある純粋なやさしさに救われた。 -
よくわからなかった。
ただ、家族との思い出は、絶対必要というのでは無いかもしれないが、豊かなものだ。 -
本当にありそうな、でもなさそうな
不思議な話だったな。 -
この作者の描く話は、今いる人たちが昔の誰かを探し、調べるというつくりになっていることが多いみたいだ。
調べたからと言って何かが劇的に変わるわけでもなく、でも調べなかったらこの今はないだろうという「今」がいい感じだ。 -
独特な文章構成で、誰かが隆一から話を聴いているようなのだが、その人物が途中まで明らかにされず、その曖昧さや、誰なのか分かった時のスッキリ感が面白かった。
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自分の父を知らないミライの出生の記憶を探る物語。
70年代の社会状況が描かれるので少しノスタルジックな雰囲気も感じられる。
ミライの視点ではなく、ひょんなことから手伝うことになった隆一の話を聞いた小説家が語るという形式なので、ドライなのがよかった。
ただ小説家と出会うきっかけは少し不自然な気もしたけれど。
ミライの母、礼子が理想を詰め込んだ幼稚園、トラウムキンダーガルテンの教育法はシュタイナー教育みたいなものかな。
アウトサイダーアートなど、なんとなく興味深いテーマが散りばめてあった。
なんだか物足りないような、でも涙ながらのハグを求めたわけじゃないので、これでよし、な気もする。 -
これはあんまりだったなぁ。
エンジンを巡る物語なんですけれども。
エンジンて字の感じだけ見ると猿人やら厭人には
全然結びつけられなかったなー
両親を巡る話なんだけど、
いろんな人のエピソードが出てきすぎなのかも。
そしてどうしてこんな形を取ったのかな、って思いました。
この小説家の目線が面倒臭くてー
だらだらと読んで、あんまり残るものもなく終わってしまった。 -
わかりません。
ナゼ書きたかったのか。それがナゼここなのか。 -
まったく予備知識なしに読み始めたので
エンジンがエンジンではなく、猿人でもなく、厭人という
意味からどうやって話が展開するんだろうと興味深かった。
エンジンとは蔵橋ミライの父親であり、蔵橋礼子の
夫である。そしてミライが生まれる前には失踪していて
今もどこでなにをしているかわからない。しかもエンジンの
妻である礼子は若年性アルツハイマーで記憶がおかしい。
ミライは自分の出生のことを知りたくて、礼子が昔1年だけやっていた
ドイツの理想的保育所を模した幼稚園のようなものの卒業生の
(本人には記憶なし)葛見隆一を同窓会と称して呼び寄せる。
いろいろな登場人物が出てきてなぞがなぞを呼び
またなぞがどんどん解けていく話の展開が面白かった。
唐突にスペクトルマンとか出てくるし、いったいどこへ
この話は行ってしまうのーと一生懸命追いつきながら読んだ。
最後劇的な謎解きがされるわけではないけど
でも途中で飽きさせない話の展開とすっきりしないようで
実はすっきりとした終わり方で読んで良かった。 -
父を探す女性とその将来の夫。そして小説家の狂言回しで楽しく読みました
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冒頭でつまずきそうになったが、なんとか読み進めていくと最終的には結構面白かったです。
でもどういう物語か説明し辛い不思議な話。 -
これは、表紙がなんかオシャレだったのと、直木賞受賞作家だったので買いました。
内容は、なんか不思議でノスタルジーな感じでしたね。 -
んー…。へんな作品。
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2010/08/25
エンジンは、あっくんで、厭人で・・・。 -
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身に覚えのない幼稚園の同窓会の招待状を受け取った、葛見隆一。仕事と恋人を失い、長い人生の休暇にさしかかった隆一は、会場でミライと出逢う。ミライは、人嫌いだったという父親の行方を捜していた。手がかりは「厭人」「ゴリ」、二つのあだ名だけ。痕跡を追い始めた隆一の前に、次々と不思議な人物が現れる。記憶の彼方から浮かび上がる、父の消えた70年代。キューブリック、ベトナム戦争、米軍住宅、そして、特撮ヒーロー番組“宇宙猿人ゴリ”―。
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ミライの願いは、父親を探し出して会いたいということではなく、「自分の誕生の記憶を持ちたい」ということだった。若いころ行ったドイツで影響を受け、夢の幼稚園=トラウムキンダーガルテンをたった一年だけ開園していて、いまは認知症が進みかけている母のこと、父と思われる人物の若いころの行ない、両親の出会い、などを隆一が調べていくことになる。その過程で、父らしき人物と知り合いだった人が見つかり、キーワードにもなっている『宇宙厭人ゴリ』を書いた作家の「わたし」を偶然見つけ、さらに弟と名乗る人物も見つけ出し、父の輪郭が少しずつ明らかになっていく。本人はまったく姿を現さないのだが、彼が生きた時代背景と関わった人たちの断片的な記憶から再構築されるようで興味深い。ただ、父親が戦争やら反戦運動といったことが色濃くでる時代を駆けぬけたということもあり、出てくる事実には重いものもあり、すっきり爽やかな父親探し物語、というわけではない。含むところの多い一冊である。