わたしが棄てた女 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061311411

感想・レビュー・書評

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  • ハンセン病の入門書として読了

  • 「恋愛というのは、いったいどのようにして成り立つのであろうか。」

    お互いに好意を持ち、愛情に発展し、その先に肉体関係がある。とほとんどの女性は思いたいのだけれど男性は生理的にそれほど純粋ではない。という普遍的なテーマからこの物語の悲しい面をとりあげていた。

    私も甲羅を経ているので、いまさら吉岡努という男性が使い捨てカイロのように、薄幸の森田ミツを捨てても驚きはしないけれど、遠藤周作の言わんとするところは、その餌食になった女性ミツの苦しみと救いの足跡なのだ。

    運命にもてあそばれて、落ちるところまで落ち、ライ病にも罹ったらしい。でも彼女は悩みながらあきらめ逆らわず、流れに身を任せ、自分以外の不幸な人に同情する、見てくれもよくなく、とりえもない平凡な女性の一生。

    文章も平明、救いの部分も宗教臭はさらっとしている、濃くない。しかしこんな聖女、現代はいないと思うよ。いないと願うよ。いや、いないということが危機なのか。やっぱり、いるかな、どっちなんだ。

  • かなり読むのが辛かった
    私には吉岡が最悪に映り、森田ミツが可哀想で、もっとわがままになってほしいと思ってしまったけれど、
    文章中で何度か繰り返されるように、吉岡は誰しもの心に潜むエゴイズムの権化にすぎず、
    ミツは生まれながらに愛徳の行為ができる、というよりそうするより他ない人として生まれてきたのだろう。


    この寂しさはどこからくるのだろう。(中略)寂しさは、その痕跡からくるのだろうか。そして亦、もし、この修道女が信じている、神というものが本当にあるならば、神はそうした痕跡を通して、ぼくらに話しかけるのか。
    (pp.308-309)

  • 遠藤周作ならでの、人物像で、図らずも最後は泣いてしまった。吉岡は、自分でもあり森田ミツは、そうありたい自分でもある

  • 吉岡のことを、悪人だとは思えなかった。読んでいて悲しい気持ちになった。

  • 「僕らの人生をたった一度でも横切るものは、そこに消すことにできない痕跡を残すということなのか」

    沈黙、女の一生が面白いという話をしたら、当時上司のだった精神科女医さんからオススメされた本。
    (人との出会いを大事にしたいと強く感じさせる本)

  • 友人にもらいましたが、怖くて読めません。

  • 二度目にして涙腺決壊。
    献身性と対象し、エゴイズムへの批判という形をとるではない。そんな単純なもんではない。
    自分が置き去りにした何でもないような出来事は、罪かもしれないし、徳かもしれない。
    ただそれは置き去りにしていいものではなく、ちゃんと対峙するべきものだと、この小説は強烈に訴える。

    神がいるなら世界の悲しみはなぜなくならないのかなんて2000年の間、人類は叫び続けたことだ。

    ただそんな非難の的があることで我々は救われるのかもしれない。子供が親の背中に顔を埋め、握り締めた拳を叩きながら悲しみをぶつけれるように、神はその背中を用意するのかもしれない。

  • 人間の嫌な部分からは目を逸らしたくなる。
    滑稽で自虐にも感じるほどの犠牲と救済。‬
    他人にどこまで捧げられるのか。たった一度きりの人生で何をして、何をしないのか。‬
    ‪胸を打たれ最後は涙した。‬

  • 文学

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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