虚無への供物 (講談社文庫 な 3-1)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (666ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061360044

感想・レビュー・書評

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  • 牟礼田ちゃっちゃと喋らんかい
    犯人何言ってんだかわかんないよ

    読んでる間は面白かったです

  • たぶん二十年ぶりくらいで再読。今はもう講談社文庫からは上下巻の装幀も新しくなったのが出ているけれど、私が持っているのは昭和57年の重版ですでに黄ばんでシミだらけ。しかし読み終わってしみじみこの表紙眺めると、微妙に真犯人をネタバレしている・・・?という気もする。でもこっちの表紙のほうが新しいのより好きだな。

    あらためて大人になって読むと、若いころは唯一の女性主要キャラということで視点として読んだと思う久生さんが、かなり面倒くさい(苦笑)牟礼田さんと蒼司さんの関係が怪しすぎる(笑)

    その面倒くさい久生さんを筆頭に、複数の探偵役のミスリードと、真犯人を知っている人間(これも複数)が犯人を庇うためにつく嘘のせいで、どれが妄想でどれが本当のことか混乱して収集つかない(でもそこが面白いんだけど)

    シャンソンは全くわからないけれど、会話のはしばしに出てくる他のミステリーや文学作品、登場人物たちの名前のパロディ、さらに三島がモデルの藤間百合夫なんていう人物がちらりと出てきたり、氷沼家の曾祖父や祖父が作者自身の祖父や父の経歴をモデルにしていたり、細かい部分で遊びが多いのも楽しめる。

    しかしその分、解説で出口裕弘が言っているように、真犯人の動機が純文学的、つまり動機が弱い、という印象はやはり否めないですね。洞爺丸事件など実際におきた事件を多く取り入れいるのは時代の雰囲気を感じられて良かった。解説によると三島などはあえてそういった時代を象徴するものを排することで長く読まれるようにと配慮していたそうですが、逆にここまで時代の風俗を細かく描写してあるものはそれはそれで貴重な気がする。

    若いころはもっと想像力が柔軟だったせいか、コンガラ童子だのセイタカ童子だの、アイヌの蛇神だのをとてもリアルに想像したようで、まるで彼らが実在して犯罪に加担したかのような印象が残ってたのだけれど、読み直したら全然そんな重要な要素じゃなかったのが新しい発見でした。

  • 推理小説である。密室トリック連続殺人事件。すべてが殺人と思っていたが、最初のは、本当に事故からの病死。それと周りの人々(ナゾを解こうとした人)が犯人を追い詰めた結果、殺人を犯すことになった。不思議。

  • 推理小説(たぶん)なので、あまり筋立てには触れませんが、3大奇書という評価の通り、たしかにこれはあまり経験できない味わいの本。

    合理的な推理による解決→スッキリ、という読み方が出来ない。
    一応の、推理小説らしい犯人追及があり、トリックと動機の自白がありますが、ある「共犯者」の存在が示唆されながら、物語は終わる。

    良くも悪くも現代的な小説で、全能的な探偵も登場しない。被害者も犯人も探偵も共犯?本作とはまったく関係ないけれど、ピランデッロの「作者を探す六人の登場人物」というタイトルを思い出した。

    ちょっと整理がつきません。
    相当楽しめたのは間違いありません。

  • 東京の不動尊が5色あったなんて知らなかった

  • 夢野久作『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、そしてこの、中井英夫『虚無への供物』は日本三大奇書と言われる。あるいは、日本三大アンチミステリ。そう称される作品の中で言えば、おそらくこの作品がいちばん読みやすい。
    薔薇や不動、密室、きらびやかな謎に彩られた「氷沼家殺人事件(ザ・ヒヌマ・マーダー)」と、それに挑むクセの強い探偵たちの、どこか歯車がずれているような、ともすれば滑稽と言っても過言でないような推理。ほのかな衒学趣味を漂わせるそれらは、奇書特有の、読者の理解を超越しようとする「凄み」のようなものを確かに感じさせるけれど、この作品にはそれ以上に、膨大な情報を余さず読者へと伝えようとする意志がある。つまり、ギリギリのところで読者の理解を超えない。
    圧倒される感覚を求めると、少し物足りないとも思う。しかし絶妙な匙加減は、読者に考える事を放棄させない。作中の探偵たちがそうするように、読者もまた、「氷沼家殺人事件」の真相を考えながら読み進めていく。だからこそ、事件の真相が明らかになった瞬間に、読者もまた、作品世界の住人となる。いや、作品世界が現実に侵食してくると言ったほうが正しいか。思えばこの作品は、最初から現実と地続きのところに立とうとしているのだ。その感覚は喩えようもなく甘美で苦々しく、様々な感慨や業を突きつけてくる。
    カーテンが開いて始まった絢爛豪華で精緻な舞台。知らず舞台は広がり続け、自分の足元も舞台の一部となって、読者の枠を超えて立つ。そして最後には、静かにカーテンが閉まって終わる、その瞬間を見届ける。
    私がこれまで読んできた本の中でも出色の読後感であり、確かにこの本は奇書であるのだなと、思わずにはいられない。

  • 今年も12月10日がやってきたので再読。

  • ミステリーとしてもすばらしいのですが、単純に全体の雰囲気が好きです。

  • 20年ぶりぐらいの再読。10回20回と読み返す人が珍しくないような作品なので2回読んだだけの僕が言うこともあまりないのだが、初読ではあまりピンとこなかったことも、震災後の今になって読むと感慨深さがまるで違って、60年以上前に本書が構想されたときから変わらない人間の業みたいなものに当てられ、しみじみとうなだれてしまう。他方で、ミステリー好きとしては読んでいる間の多幸感が何物にもかえがたい。繰り返し読む人が多いわけだ。

  • 何回読んでも、また読みたくなる本。
    短編集なども含めて中井英夫作品は好きですが、
    やはりこれが一番思い入れがある。
    読後感に読み手がひっくり返されるような展開は基本的に好きなので、
    その手のものが好きな人にはたまらないものがあるのではと思います。
    タイトルがすべてを物語っているとも。

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著者プロフィール

中井英夫(なかい ひでお)
1922~1993年。小説家。また短歌雑誌の編集者として寺山修司、塚本邦雄らを見出した。代表作は日本推理小説の三大奇書の一つとも称される『虚無への供物』、ほかに『とらんぷ譚』『黒衣の短歌史』など。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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