蘭学事始 (講談社学術文庫)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061594135

作品紹介・あらすじ

1815年、八十三歳の杉田玄白は蘭学の草創から隆盛に至るまでを思いを込めて書き綴った。『解体新書』公刊の苦心や刊行後の蘭学界の様々な動向など、まさにその現場に身を置いた者ならではの臨場感あふれる筆致は迫力に満ちている。初めて「長崎本」を用いて、現代語訳・原文、さらに詳細な解説を付した、文庫オリジナル版全訳注。

感想・レビュー・書評

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  • 司馬の『胡蝶の夢』と手塚の『陽だまりの樹』を読んで以来、市井の人々の近代の受容というテーマに大変興味を持っていた。白石の『西洋紀聞』もそうだが、文化と文化の出会いと、それが起こす価値転倒はいつでもドラマティックだ。
    それで、先に菊池寛の『蘭学事始』を読み原著に当たりたくなった。現代のようなドラマ性をもたせたものでなく、淡々と事実を執筆しているが(そもそも本著の目的は蘭学の起こりを正確に残しておくことだった)、未知のオランダ語の世界を丸裸で探検する青年たちの艱難辛苦と、不気味な記号が徐々に色を帯びて、大きなおおきな絵画となる、その時の喜びは十分に伝わる。これは『福翁自伝』『まんが道』と並ぶ青春自伝文学だ。やる気がみなぎる! 
    ところで、福沢によれば『蘭学事始』は焼失し、多くの洋学者の悲しむところとなった。ところが、ある学者が偶然に露天で売られている写本を発見。急いでそれを写し、さ らに明治になって福沢が出版。こうして奇跡的に現代に伝わることになった。逆に、歴史から消えてしまった良書もたくさんあるんだろう。
    中央公論の日本の名著22にて読む。他にも司馬江漢や平賀源内の著作も収蔵。平賀源内の筒井康隆的な発想、センスには驚いた。個別で読んでみよう。現代語訳されていることが唯一残念だった。江戸時代なんだから、そのままでいいだろうに。

  • 外国の書物を翻訳をする難しさを感じた。私は翻訳は日本語の同じような意味に当てはめて落とし込んでいく作業だと思っていた。しかし日本語にはない概念や言葉は新しく作らなくてはいけない。衝撃的だったのが、腑分け(解体)してみたら五臓六腑が間違っていたということ。なんと、膵臓がなかった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740215

  • 岩波版所有

  •  蘭学事始、という題名のように、彼が蘭学を学び進めるに当たり、ゼロからのスタート故に多くの苦心をしたことが玄白の当時の胸中細かに書かれている。齢83にしてこの作品を書き記したとあるが、江戸時代中期の出来事や蘭学に対する人々の捉え方の変容を語っており、長い人生で培った知見の豊かさを感じられた。とくに良沢と「ターヘルアナトミア」に感動し、執筆を志すに至るシーン、そして捗らない翻訳にもあれやこれやと工夫を凝らすシーンからは本人の臨場感とユーモラスをもってゼロからアルファベットと向き合う様子が描かれており、非常に面白かった。
     洋書と出会い、その正確さに心打たれ、さらに医学の発展の為に、解読するように一つの書を翻訳した。生涯をかけて蘭学発展に寄与した彼の熱意や、解体新書執筆にあたり苦心の中にも生き生きとした使命感があったことを感じられ、何事も事始は不慣れであるが心持ちの有様は彼の姿を見習うべきであると感銘を受けた。
    解説にもあるが、随所の例えが秀逸で説得力があり、非常に共感的で理解のしやすい内容であった。

  • 押さえておこうシリーズ。
    「私はこうやって蘭学を始めました」って本。まあそのまま。
    関わった人の説明とかが多いし、一般人が知っておくとネタになりそうなことが書いてあるわけではないな。

  • 時代背景がわかればもっと楽しめたのかもしれない。この本だけでは物足りないが、前野良沢が重要人物であることを知らしめた点において重要な意義がある。列挙されていた人物の活躍をもっと知りたくなった。

  • 解体新書を見に行く前に予習として。

    教科書等で枯れた爺の状態の杉田玄白しか見たことなかったから解体新書出したのもこの歳ぐらいなのかなと思っていたけど、それが全然若い時で、かなり瑞々しい情熱的な書き方してるからかなり玄白さんのイメージが変わった。

    「明日の腑分けでこのオランダの解剖の本が正しいのかわかるぞ!楽しみすぎてもう心がおどりあがりそう!」ってな感じ。

    知識を得ることのこの興奮って、程度に差はあるだろうけどとても共感できるなぁ。
    あとこの時代の「書物」の力って莫大。値段もすごい。

  • 東大京大教授が薦めるリスト100選抜

  • 翻訳:片桐 一男

    外国の言葉を始めて翻訳するという事の難しさが分かった。例えば、「酔う」と言葉を様々なジェスチャーや文例から、これは酔うという意味らしいとあたりをつけて日本語に置き換えるという。

    また解体新書=杉田玄白と思っていたが前野良沢が翻訳の中心で良沢は自分の名が出ることを遠慮したので、杉田玄白著となっているという事情も分かった。

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