氷川清話 (講談社学術文庫)

著者 :
制作 : 江藤 淳  松浦 玲 
  • 講談社
3.84
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061594630

感想・レビュー・書評

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  • 世間は生きている。理屈は死んでいる。
    胸のすくような言動の、そのコアは清明心。
    勝海舟の肉声が聞こえてくるよう。
    きっと、そのフカシっぷりも含めて、面白いおじさんだったんだろう。生死のやりとりを経た、肝の座った。
    これだけ読んでいて小気味の良い本もない。

    ところで、新井白石と勝海舟はそれぞれ18,19世紀を代表する江戸の傑物である。2人は同時代であれば、共存できたか。必ずやお互いの間に激しい応酬が生まれたに違いないと想う。そんな妄想も楽しい。

  •  勝海舟 (1823-1899) は、旗本の長男として江戸に生まれた。剣道と座禅の修行をし、また蘭学を学んだ。1868年、幕府側を代表して朝廷側の西郷隆盛と会談し、江戸城の無血開城に合意した。その結果、幕府は倒れ、徳川家は駿・遠・参の七十万石の一大名に格下げとなった。幕臣からは「腰抜け」「大逆臣」「薩長の犬」と罵られ、慶喜からさえも「汝が処置はなはだ果断にすぐ」と文句をつけられた。
     『氷川清話』は、彼が人生、政治、人物などを語ったものである。これを読むと、海舟が人間として一つの頂点に達していたことが分かる。例えば江戸城の無血開城について、彼はこのように言っている。
     「三百年来の根底があるからといったところで、時勢  が許さなかったらどうなるものか。かつまた首都というものは、天下の共有物であって、けっして一個人の私有物ではない。江戸城引き払いのことについては、おれにこの論拠があるものだから、だれがなんといったって少しもかまわなかったのさ」
     また、勝の人生は浮き沈みの激しいものだった。幕臣としての勤務の間にも、何度か免職を食い、謹慎閉門の生活を送った。これを、勝はこのように見ている。
     「自分の相場が下落したとみたら、じっとかがんでおれば、しばらくすると、また上がってくるものだ。大奸物・大逆人の勝麟太郎も、今では伯爵勝安芳様だからのう」
     勝はまた、非常な胆力を有していた。現在の日本の政治家に、次のような言葉を発することのできる人物がいるであろうか。
     「いやしくも天下の難局に当たる以上は、暗殺ぐらいのことを恐れては、何事もできるものではない」
     勝は、この胆力の出所を次のように言っている。
     「座禅と剣術とがおれの土台となって後年大そうためになった。瓦解の時分、万死の境に出入して、ついに一生を全うしたのは、全くこの二つの功であった」
     彼は二十回ほど敵の襲撃にあい、このために胆がすわったと言う。何度も暗殺の危機に遭遇しながら生き延びた要因を、彼は次のように述べている。
     「危機に際会して逃げられぬ場合と見たら、まず身命を捨ててかかった。しかして不思議にも一度も死ななかった。ここに精神上の一大作用が存在するのだ」
     若者たちへのアドバイスも、次のように気合がこもっている。
     「かえすがえすも後進の書生に望むのは、奮ってその身を世間の風浪に投じて、浮かぶか沈むか、生きるか死ぬるかの処まで泳いでみることだ」
     本書の刊行は明治三十一年 (1898年) のことである。勝は、日本の将来を次のように予言している。日本は1895年に日清戦争で勝利したが、1945年に太平洋戦争で中国に敗れている。
     「日本もシナには勝ったが、しかしいつかまた逆運に出会わなければなるまいから、今からそのときの覚悟が大切だよ。------今日のなりゆきを察すると、逆運にめぐりあうのもあまり遠くあるまい」
     また、勝は、当時の幕府側、薩長側の要人の大半と関わりを持った人物である。1862年に彼が設立した神戸の海軍局からは、薩長同盟の立役者となった坂本龍馬と、後に外相となって条約改正に功のあった陸奥宗光が出ている。坂本龍馬は、姉への手紙に「今にては日本第一の人物勝麟太郎と云ふ人に弟子入り致し」と伝えた。1864年に勝に初めて会った西郷隆盛は、大久保利通への手紙に勝について「実に驚き入り候ふ人物にて、------どれだけ知略これあるやら知れぬ」と知らせた。このように見てくると、勝海舟がいかに大人物であったのかがよくわかる。世には、様々なかたちで必読書百冊なるものが出ている。しかし、そのいずれにも、この『氷川清話』を入れたものはない。しかし、勝海舟は、まさにラスト・サムライの一人であり、『氷川清話』は万人の必読書である。

  • 処世の秘訣は誠の一字。
    勝海舟がそう言っているので奥が深いです。
    また、相当、西郷さんを高く評価していることが感じられた。

  • 読みづらいが、内容は所々示唆に富む。
    これも若田光一氏が宇宙に持っていった本と知って読了。勝海舟がベタ褒めの西郷隆盛の事を知りたくなる。

    自分ごとと感じたのは以下のパートかな:

    市中 
    青柳の神さんが大晦日に苦しい台所事情を隠して世間に見栄を切り、のちのち繁盛する話

    維新前欧米軍人との折衝
    頼りない日本人と海舟の対応が今の国際ビジネス交渉に瓜二つ

  • 「生きている幕末」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/detail?rgtn=072732

  • 勝海舟に関しては周りの本が面白いから。

  • なぜ買ったか忘れたが、勝海舟の談話を記録したもの。

  • 素晴らしい本。
    勝海舟と言う人物を知るには、最適な本ではないだろうか。
    凄くバランスの取れた人物と感じる。幕末にこの人が居なかったら、歴史は変わっていたのではないだろうか。
    べらんめえ口調が魅力。

  • 斎藤孝の本か何かに読むべしと書いてあったので読んでみた本。
    まさか歴史上名高い勝海舟のインタビュー本のようなものが
    あるとは思いもよりませんでした。

    この本は基本的に口語体で書かれており、勝海舟が喋ったように
    書いてあるので親しみやすく、勝海舟が歴史上の人物から
    身近な人物(テレビの辛口コメンテーターのような存在)に
    なったような気がします。

    そして、幕府を畳む大仕事を成したその人が語る深い言葉が
    心の奥にまで響いてきました。
    日清戦争を批判している下りなど、その後の日中戦争による
    躓きと第二次世界大戦の敗戦が勝海舟の目には既に見えていたようにも感じました。
    先見の明があるというか本当に時局の分かる人だったのだなぁと感じました。
    その勝海舟が本文中の至る所で褒めちぎっている西郷隆盛も
    色々なエピソードが語られる中で魅力的な人物だと思いました。

    この本の惜しむらくは最初に「氷川清話」を記した
    吉本襄という人が様々に改竄したという話が節々に出ているところ。
    初めて「氷川清話」を読む人にとっては流布本が悪編されていたとしても
    この本がそうでなければ関係ないのでそういった指摘が煩わしかったです。
    これこそ自分の功をひけらかす海舟が戒めていることではないでしょうか。

  • 京極夏彦に触発され、斉藤孝に背中を押されて読んでみた。面白いところは面白いが、全体的に自分がこのステージの端に指もかけられていないことを痛感した。
    いつか、読み直したいなぁ。

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