物の怪 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061827998

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代物かと思ったらしっかり現代物。

    妖怪・・・。昔のひとは理解できない恐怖を理解しようとして生み出された物。

    結局本当に怖いのは人だというようなお話。

    とても分かりやすいし、猫田さんと鳶山さんの会話が面白い。

  • 生物の知識に精通した<観察者>鳶山久志と植物写真家・猫田夏海が遭遇した3つの事件。
    「眼の池」「天の狗」「洞の鬼」の3編収録。

    久しぶりのトビさん!本当に嬉しいんですけど~。
    しかも扱われているテーマがそれぞれ河童・天狗・鬼!
    これらの物の怪が起こしたとされる事件を、トビさんが生物の知識を総動員して解明してくれちゃうという。
    久しぶりだからかな?より舌鋒鋭く、より生物の見識も深まったような。

    どのお話もあやかしがテーマらしく、不穏な余韻ただようラストがとっても好みでした。
    それも「眼」「天」「洞」と進むにつれラストの怖ろしさが増してくるという。
    でもトビさんネコさんのやりとりは相変わらず面白くって。
    特に「くそったれの鳶山久志が鳶山の近くで糞色のトビを見て~」のくだりは笑った。

    どれもよかったけど、ベストはやっぱ「洞の鬼」かな。
    短編・中編なのでどれも犯人の見当はつけやすいのですが、どれも動機が一捻りされていて楽しませてくれました。

  • “「なんだ、鳶さんが見たのはカラスだったんだ」
    「違うよ。どうしてホシガラスが天狗なんだよ」
    「だっていま烏天狗の話をしていたじゃない。日本の天狗のモデルとなった動物はカラスなんでしょ?それにホシガラスってなによ。わたしはただカラスと言っただけで......」
    わたしがまじめに説明していると、変人生き物オタクが声を荒げて遮る。
    「キミは壊滅的に愚か者だな。世界中探したとしても、カラスという種名の鳥なんかいない。カラスは科あるいは属の単位を指すグループの名称だ。おそらくキミはCorvus属のハシボソガラスやハシブトガラスを念頭に置いて発言したんだろうが、ヤツらは原則的にこんな高地には生息していない。最近ではたまに山小屋から出る生ゴミを目当てにやってくるヤツもいるらしいけどね。高地に適応したのはNucifraga属のホシガラスだ。だからボクは丁寧にキミのことばを補足して、ホシガラスと言い換えてあげたわけじゃないか」
    非難が耳に痛い。いったいどうすればよいのか。ことば足らずの発言をフォローしていただき、ありがとうございました。と礼を述べるべきなのか?わたしの困惑をよそに、鳶さんお叱責が加速していく。”

    雰囲気はQEDっぽい?
    変人が蘊蓄を垂れ流しつつ事件を解決する。
    そしてちょっとぞっとするような結末。

    “鳶山久志という人物は生き物全般に興味を示すが、例外的にヒトという生命体には無関心を装っている。人間嫌いかというとそうでもないようで、他人から相談を受けると親身になって応えてくれようとするし、孤独が好きとうそぶきつつも知人からの誘いを待っているようなところがある。単に他人との距離の取り方がへたくそなだけかもしれない。不惑の自立した男としてそれはいかがなものだろうと思わなくもないが。
    人付き合いは得意でないとしても、他の生物とはすぐに仲良くなるのが鳶さんだ。目先に生き物がいれば周囲が見えなくなるのは彼の本能のようなものらしい。”

  • 事件の真相が人の怖さや闇に繋がる。
    一番怖いのは人だという感じですね。

  • 動物学&民俗学の少し楽しい知識も学べるミステリ短編集。どの事件にも怪奇の気配がして、非常に好みです。その解決は非常に現実的ではあるのだけれど、どこかしら一抹の恐怖と不安感が残される結末もまた、非常に好みど真ん中。
    お気に入りは「洞の鬼」。もう舞台と道具立ての魅力だけでもお腹いっぱいなんですが。そこで起こる事件とその解決がまた凄い。結末の凄まじさも圧倒的です。

  • 2011/09/18読了

  • 妖怪テーマだけど、きちんと動機やトリックを解明していて面白かった。
    でも、天の狗の動機というか、目的はちょっと納得いかない。
    あの目的なら、違うところの方がいいんじゃないかなあ。

  • まず、妖怪を扱ったミステリとして、レベルが高い。妖怪と事件の謎がうまく結びついていて、事件も興味を引くものだし、解決も腑に落ちる。
    また妖怪研究としても、これまでの説を踏まえつつ、著者の本領である自然科学の知識を駆使して、一歩進んだ推測がなされている。
    ネックなのは事件の真相が明らかになっても、犯人が断罪されないところ。しかしこれは探偵役が「観察者」と名乗っている以上、仕方ないのか。
    シリーズ化して、観察者が犯人としっかり対峙しなくてはならないときが来ることを願う。

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著者プロフィール

1960年福岡県生まれ。九州大学理学部卒業。2001年『中空』で第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。主な著作に「観察者」シリーズ、「綾鹿市」シリーズなど。碇卯人名義でテレビドラマ「相棒」シリーズのノベライズも執筆。2016年『死と砂時計』で第16回本格ミステリ大賞【小説部門】を受賞。

「2021年 『指切りパズル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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