- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061962873
感想・レビュー・書評
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慣れない文語体で時間はかかったものの読了。
死の覚悟を持って特攻するも、大半がやられ、相手に与えた損害も多くないというのは、なんだか虚しい。
死ぬつもりで出航したにもかかわらず、たくさんの戦友たちもともに大和は沈み、自分は生き残っている。生の喜びよりも、後ろめたさが大きいとは、なんと複雑な気持ちかと思う…。
日本の期待を背負って作られた戦艦大和の最期が特攻作戦とは…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦艦大和の最後の出撃に参加した吉田満が、戦艦大和の出撃から沈没までを綴った作品である。(一部に創作が加えられており、ノンフィクションではない)
吉田満は、東京帝国大学(当時)在学中に学徒出陣により召集され、1944年12月に戦艦大和に乗艦。翌1945年4月、最後の出撃(天一号作戦)に参加したが生還し、終戦直後の同年9月に、ほぼ一日で本書を書き上げたという。
執筆の動機について、著者は、「敗戦という空白によって社会生活の出発点を奪われた私自身の、反省と潜心のために、戦争のもたらしたもっとも生ま生ましい体験を、ありのままに刻みつけてみることにあった。・・・今私は立ち直らなければならない。新しく生きはじめねばならない。・・・その第一歩として、自分の偽らぬ姿をみつめてみよう、如何に戦ってきたのかの跡を、自分自身に照らしてみよう」と書いている。
そして、本書には、その時に若い海軍士官達が何を考えていたのかが綴られている。敗戦を覚悟して出撃した後、艦内では若い士官達が「進歩ノナイ者ハ決シテ勝タナイ 負ケテ目ザメルコトガ最上ノ道ダ 日本ハ進歩トイウコトヲ軽ンジ過ギタ 私的ナ潔癖ヤ徳義ニコダワッッテ、本当ノ進歩ヲ忘レテイタ 敗レテ目覚メル、ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ワレルカ 今目覚メズシテイツ救ワレルカ 俺タチハソノ先導ニナルノダ 日本ノ新生ニサキガケテ散ル マサニ本望ジャナイカ」と語り、自分達の死に意義を見い出そうとしていたのである。
本書は、執筆直後にはGHQの検閲で出版が出来ず、小林秀雄が白洲次郎にGHQとの交渉を依頼したのだというが、実際に初版が出版されたのは1949年、決定稿とされるものが出版されたのは1974年のことである。
現在では一部に創作が加えられていることが判明しており、何故その必要があったのかという疑問は禁じ得ないが、日本海軍の象徴・戦艦大和の最期の出撃に参加した海軍士官の思いを知る作品としての価値はあろう。
(2010年5月了) -
よくもまあ,当時のことをこれだけ詳しく書けるものだ…と感心した。こういう本があることは知っていたが,「今さら読んでもなあ」と思い,敬遠してきた。が,最近,政治の動向がきな臭くなってきたので,なんとなく,こういうものにも触手が動くようになったのだ。
最後の解説は鶴見俊輔氏が書いている。
大和の特攻は,ムダなのか…オレらの死の意味はなんなのか…艦船上で悶々とする兵士たち。「負けて目ざめることが最上の道だ」とは,自分達の死を意味づける究極の言葉だ。「日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じじゃないか」
もっと前に,降伏していれば,大和の死もなかったのに…。
全編文語体で書かれている本書から伝わってくるのは,戦場の姿だs。
所詮,「戦う」とは,こういう姿が現れるってことなんです。 -
先年,呉の大和ミュージアムに行ったとき以来,読もうと思っていた本を読む.
大和の最後の出撃となった沖縄特攻に学徒出身士官として乗り組んだ著者の経験を基にした小説.短い文を重ねた明晰な文語での記述に,必ず負ける,生きては帰れないと知りながら出撃し,まさしく懸命に戦う人たちの姿がうかびあがる.戦後70年を振り返り,今の日本がどうなろうとしているかを考える上でも,読んでよかった.
文語文としては難しくはないが,私には読めない漢字や意味のわからない漢語は少々あるので辞書はひかないといけなかった.若い人が読めるようにルビ付き,注つきの手軽に手に入るエディションがあってもいいと思う. -
軍部は、駆逐艦30隻相当の重油を食らう巨艦大和の維持に困ったために、数千人の命と共に、大和を見殺しにしたわけですね。
何万人の社員を維持しかねている巨艦、とならないようにしなければいけません。。。 -
呉の大和ミュージアムにて購入。
こういうのは最高評価以外につけようがない。
確か再読だったなぁ。子供の頃読んだ時はこういうのの捉え方がわからなかったしカタカナ読みづらいしで困ったけど、今はすんなり読めるね。ミュージアムで駆逐艦等の知識得てからだから余計面白い。
臼淵少佐の言葉は至言。国や時代が違っても兵隊の普遍の答えじゃないかと。
そういえば終戦のローレライはこの人をモデルにしたんでしょうかね。
そして解説を「限界芸術論」の鶴見俊輔がしていて喜ぶ。同じ歳とは…。 -
凄かった。泣いた。「永遠のゼロ」で感動しているヒマがあったら是非この名著を。一読して(他の批判を待つまでもなく)これは「小説」であり「記録」ではない。余計な修飾や後付け、伝聞は目立つ。しかしそれを差し引いても圧倒的。僅か二時間の戦闘の如何に凄惨なことか。その後の脱出行の如何に無常なことか。僕はこの小説を忘れないだろう。戦争反対。