- Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062137010
感想・レビュー・書評
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09/12/2~09/12/20 「人は、獣は、この世に満ちるあらゆる生き物は、ほかの生き物を信じることができない。心のどこかに常に、ほかの生き物に対する恐怖を抱えている。(略) 武力で、法で、戒律で、音無し笛で、互いを縛り合ってようやく、私たちは安堵するのだ。」 (P379)
私達一人一人が、他人と関係するとき、「どうしても分からない、届かない」と思う距離が出来る。分からなさ、届かなさは恐怖へつながることも、ある。
関係の「分からなさ、届かなさ」が、物語全体に満ちていた第二巻だったような気がする。それは、エリンとリランという個人のレベルから、相似形を描いて真王と大公という国レベルまで浸透している。
エリンと王女セイミヤの呟きが同じであることが切ない。
ただ、最後のシーンに暖かさがあって、好きだ。
「人という生物が生み出している行為の網の目」(by エリン、セイミヤ)は、これからいったいどうなっていくんだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アニメに触発されたわけじゃありませんが、
学校の図書館に入ったので読んでみました。
「守り人」シリーズのバルサのほうが
好みの主人公像をしていましたが、
エリンはエリンで興味深い主人公でした。
思いがけぬ時に思いがけない形で通じる気持ち。
最後はちょっとじんときました。
ただ、2巻完結かと思ったら、
まだ2冊続いていたんですねぇ。
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飼育係としての生活に充実していたエリン。
しかし彼女を追い立てるように陰謀が進む。
王家創設秘話とかがあっさり披露されたところとか、
若干期待はずれな展開なところ(あまり盛り上がる場面がなかった)もありましたが今後への複線なのだと考えることに致します。
王獣ってのが本当に美しい獣なんだなぁってことが印象に残っております。
それにしても獣と人を分かつものって何なんだろうね。 -
アニメから見始めたので、先に2巻を読むかどうか迷ったが、やっぱり読まなければよかったと後悔。純粋にアニメを楽しめなくなったなー。
「人の好奇心が災厄につながる」「災厄を防ぐために知識を制限する」という設定から荻原規子の「西の善き魔女」を連想したけど、西魔女がひたすらパワフルで前向きなので比べると、主題が違うにしても、こちらはぐっと重い話だった。
本はそこまで語らず終わっているけど、過去と同じことが繰り返されるようにしか思えず、あまりにも救いがない話だった。
エリンよりも「この子は自分の感情を絶対だと思っている」という霧の民や、力を持つために画策しているおじさまの方に共感してしまうのは、自分が年をとったからなのかもしれない。でも、どうしても単純に「悪人」だとは思えない。むしろ為政者としては悪くないんじゃないかなー。
王宮の奥に鎮座している真王とは違って若い頃から色々回っていたから、シュナンと同じように国の歪みに気づいて、真王に力を集中させる方向で歪みを正そうとしたんじゃないかなとか妄想してしまった。ダミヤの若い頃の話とか読んでみたいけど、誰も作ってくれないだろうな--; -
少し物足りない感じがした
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面白かったのに、ラストが尻切れとんぼな感じでちと不満。
獣と人間は心が通じ合えるのか?というのが主題でも、あれで終らせるのはどうかと思う。
なんだろう。詰め込み過ぎ? -
惹かれるものがあるだけに、あえて辛く評価する。「狐笛のかなた」でも少し感じたけれど、どうしてこの人は豊かな情景を省いてしまうんだろう。決して人にはなつかぬ獣と竪琴を弾く少女という風に、いつもこの人の作品は惹き付けられるイメージがある。アボリジニの研究も専門にしている上橋は、綿密な民族や国勢の設定など、土地の匂いが魅力的だ。そこにはいつもまっとうな想いとは裏腹に、因縁に翻弄される人々の姿がある。しかしそういったいろんな都合のせめぎ合いのどうしようもなさを描くことに力が入り、それをつつむ情景が広がりきっていない。セイミヤ王女が生まれて初めて野原を目にし泣く場面の描写が「広大で美しい」と一行で説明的なのにとてもガッカリした。くどくどしい文章ではなくとも、素晴らしいイメージを情景として広げることはこの人なら出来ると思っている。毎回壮大な物語を早巻きで見ているようで、惜しい。ストーリーに関して言えば、イアンとエリンをあれだけ惹きつけておいてまさかあのように終わらせようとするは思わなかった。続刊予定があるのにホッとしたけれど、王獣編で終わらせていたら、イアンとエリンを引き合わせたのは完全に風呂敷の広げ方を間違ったとしか読めない。あと余談だけれど、おばあさん真王が私には懐の深さは感じられず、世間知らず故の押しつけがましさが玉に瑕な王様という印象だった。文句タラタラになったけれど、エリンと王獣の交流が本当に私は好きだ。青い鳥文庫の紹介で上橋は不思議な動物の背に乗って飛ぶワクワク感を楽しんで欲しいという旨を書いていた。物語のどこに重きを置くかというので随分受ける印象の変わる物語だと思う。
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最後、エピローグくらいほしかったな・・
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「うーん、そこで終わりかぁ」
ラストどうももやっとするらしいことは知っていたのですが。
たしかにもやっと。
美しく残酷な王獣と意思を疎通することが出来る聡明な異端の娘。
かたや神性で、かたや武威で、国を治める王たち。
歪む国のありよう、建国者の意思……。
ラスト、一応のくぎりはつけられますが、一体ヒロインは、王獣は、かの国は、どう流転して行ってしまうのか……
安易に幸せな未来を描けない印象がぬぐえず。
心ふさがれるお話でした。
装画 / 浅野 隆広
装丁 / 坂川 栄治+田中 久子(坂川事務所) -
物語としては壮大なテーマだったんですが、今回収束部分を急ぎすぎたのでは?という印象です。
いかにも映像化して映えそうな、王獣の美しさや華々しさの描写はみごと。
エリンという人物に関しては、頑固で人の話を聞かない女の子、という印象。
エリンは「野生に近い状態で獣を飼ってあげたい」と願うのですが、それはしょせん叶わぬ夢、獣は獣であり、エリンも左手の指を食いちぎられることで初めてそれに気付くのです。
何度も警告を受けながら、自分の願いを優先させた挙句とんでもないところまできてしまった。
やっぱり面白かったのは言うまでもないですが、冒頭でも述べたとおり結末部分に割くページが少なすぎて、読者がちょっと置いてきぼりです。
でもファンタジー好きな人なら読んで損はありません。
上橋菜穂子もっと読みたいなあ。