カソウスキの行方

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062145374

感想・レビュー・書評

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  • 3作とも恋の話。ちょっと表現があけすけなところがあって少し苦手。
    津村さんの話は色恋が絡まない方が好きかもしれない。

    2作目のeveryday I Wright a Bookが良かった。とはいえ主人公が読んでいる茉莉のブログは、キラキラしさが見ていてツラい。そんなの読むのやめときなよ、と主人公に言いたくなった。

  • 郊外へと左遷されたイリエは、一時的なものなら一緒に住もうと誘ってくれた友人の結婚に伴う引越しで、薄ら寒い一人暮らしを始めることとなった。
    仕事でもプライベートでもやり切れない毎日に、同僚の森川のことが好きだと仮定して過ごしてみることにしたのだが━━

    こういう日常を切り取ったお話って好きだなあ。
    世界的には取るに足らないなんてことないけれど、人生の主人公たる自分にとっては大事件なんだよね。

  • 短編3編。他の作品に比べてやや恋愛要素強め。『アレグリア…』ほど社内の状況に対し強くきれているわけでなく、『ポトスライムの舟』ほど悩みや横の繋がりが深く強く描かれてもいない。芥川賞候補だったようだけど受賞しなかったのはその辺かなと思ったりも。芥川賞の選評を見ると「小説はもっと仕掛けるものでは」(池澤夏樹)「(生活の無為性や無劇の劇性が)人間の最も芯にあるものに触れてくるなら結構だが、それもまた稀薄な作品ばかりだった。」(石原慎太郎)とある。たまたまヘビーな本の後に読んだこともあってか(世の中こういう部分もあるよね)とふっと一息。表題作のタイトルは好き。「カソウスキ」うまい使い方だと思う。山田詠美には不評だったようだが。

  • '21年9月8日、読了。津村記久子さん、三冊目。

    3作とも、とても良かったです。

    「カソウスキの行方」
    28歳、OL、独身…後輩のセクハラ被害を上司に訴え、左遷で地方の倉庫へ。思考があっちこっちにフラフラする。何のために生きてる?何が欲しい?幸せって、何?
    何を求めているのか、本人にも解っていないまま、それでも何かを求める…

    「Everyday I Write A Book」
    う〜ん…野枝(のえ)さんの、恋愛小説?ただのOLの、微妙な日常。でも、僕は好きみたい。

    「花婿のハムラビ法典」
    うーん…ちょっとエロティックな始まり。「結局、何が言いたいの?」と、読後に一番考えさせられました。

    芥川賞の候補作、らしいですね…。

  • カソウスキ=仮想好き。
    左遷先の倉庫で、同僚の独身男性を好き(仮)ということにして仕事を頑張ろうとする主人公。なんと健気な。

    仮想の好きだけど、相手と良い人間関係を築けたようで、ラストは嬉しい気持ちになった。
    津村さんの本に出てくる人たちは、大抵めんどくさい人なんだけど、他人を巻き込む嫌なめんどくささじゃなくて、自己完結型の人たち。
    だからすごく愛しい。

    津村さんのエッセイによれば、津村さんはショッピングセンターが大好きだそうだ。
    ショッピングセンターって、どこも似ている。
    この話に出てくるショッピングセンターも、きっと読む人の記憶の中にあるショッピングセンターに脳内変換されていることだろう。

  • 短編3作品。なんとも言えない読後感。
    こうして大人の日常は流れていくのだなあ。

    どれも環境や心情は妙に現実的なのに、出来事がどうもあり得ないことで、不思議な世界観だ。
    登場人物が、生きづらいようでいて、どこか飄々としている様が面白い。

  • 『なぜオフィスでラブなのか』で紹介されていたので読んだ。
    仮想好きの発想が面白い。

  • 表題作プラス2作品。どの作品も登場人物たちがどこか不器用で、でもなんか良いなぁと思う関係性を築いていて、読後感がどれもよかった。

  • 「カソウスキの行方」「Everyday I Write A Book」「花嫁のハムラビ法典」の3編からなる150頁にも満たない短編集です
    本の紹介文に曰く「恋愛“しない”小説」。確かに。何せ、カソウスキ=仮想好きですからね。

    主人公たちのテンションが奇妙に低いのです。どちらかと言えば私が苦手にしているちょっとヌルッとした文体で綴られる主人公たちは、何か事が有ると思わぬリアクションをする。落ちる、変な方向に曲がる、裏返る、でも決して跳ねない。それに同意したり納得する訳じゃないのですが、どこか可笑しい。これが津村さんの作品の魅力なのかな。
    2008年に発表された作品で、この時、津村さんは30歳。ほぼ主人公と同年代で、自らを投影したものかもしれません。

  • 3編を収めた短編集です。

    表題作の「カソウスキ」は「仮想好き」。
    同じ職場の同僚を好きになったと仮定して暮らしてみることにした女性が主人公です。
    津村さんの描く、自分の生活を一歩引いた目線で見る人々には、いつも自分に近いものを感じてしまいます。
    "カソウスキ"のお相手を見るときの視線が好意ではなくて観察に近い感じとか、わかるなぁ…。

    「Everyday I Write A Book」はあまり好きじゃない相手のブログやSNSを、ついつい見ちゃう心理に共感。
    それが、久しぶりにちょっと気になった男性と結婚したキラキラ系女子だったらなおさら気になるよなぁ…。
    ちょっとの羨ましさや憧れがないまぜになった感覚、決して私も無縁ではないな…と思ったり。

    「花婿のハムラビ法典」は個人的にはあんまり…。
    世の中の夫婦は相手の美点も欠点もひっくるめて一緒にいるんだ、ということ再確認した感じです。

    3編とも物語の終わり具合がちょうどよいのです。
    多すぎず、少なすぎず。
    この塩梅が、私が津村作品を好きな理由の1つです。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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