悪貨 (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062162487

感想・レビュー・書評

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  • 野々宮の死で結末を迎えるが、野々宮の秘書・鉄幹の「あなたはただ父殺しをしたかっただけなんじゃないですか?」という言葉が印象的だった。

    養父のような存在であった池尻を殺してしまったあたりから崩れて、転落はすごい早さだった。

    早くに亡くした母親のこと、母のことを助けもせず自殺をした父親のこと、野々宮という男を形成しているものは肉親への強烈な思いだったのかな。

    エリカが真性のマザコンだと野々宮を評していたけど、少年のまま止まってしまったような人だったのかな。エリカが野々宮に惹かれたところって、結局のところ母性本能的なそんなものかなと感じた。

  • 金に殺された両親のため国に復讐する。
    偽札500億を中国で印刷、左翼的なユートピア思想の宗教団体を通じて、日本に流通させ、ハイパーインフレとスタグフレーション、日本売りを行う。
    トンデモ話なところも多々あり。
    超絶技巧を持った印刷工、並外れた目を持つフクロウ、人目を惹く美人刑事。
    キャラを立てたはずが、あまり活躍の場がないまま退場。
    錨を抱いて海に放り込まれた男。思いを遂げたのか?警察に捕まったほうが良かったのでは。何がしたかったのか分からなかった。

  • 通貨の信用をテーマにしていておもしろいが特に残る物はない。$$通貨信用不安を巡る混乱や政府内銀行内の混乱などはほとんど触れられておらず物足りない。$$また唐突に米国が信用不安になっていたという状況に設定がなっていたり説明無く状況が変わっていたりする。

  • ホームレスの足元にある日突然100万円の入った袋が置かれる。散髪し、服を買い、寿司を食べ、人生の再起を誓う彼だったが、散髪屋の男の友人に襲われ、お金を奪われてしまう。

    ホームレスからお金を奪った散髪屋一味はキャバクラで散財する。そのお金は、当日に店を辞めることになっていたキャバクラ嬢に渡される。

    キャバ嬢は夜行で実家に帰る。実家の借金の返済がこれで出来ると安心していたが、銀行で驚愕の事実を知らされる。

    お金は贋金だった。

    作った本人ですら騙されるほどの完璧な贋金は日本経済を揺るがし、スーパーインフラを引き起こす。その引き金となった野々宮の元には警察からスパイが送り込まれようとしていた。

    最後に野々宮は海に沈められてしまう訳ですが、彼もかわいそうな人ですよね。お金で本物の愛情は買えないのだと思いたいです。

  • あっさり読める。高校生がお金の意味を考えるのにはいいかも。今、村上春樹の1Q84読んでいるけど、こうしたユートピアみたいなな社会主義共同体というのは資本主義に駆逐される運命なのかしら。

  • 読み始めると止まらない面白さがあった。しかしそのわくわくも後半はなんとなく尻すぼみな感じがしてしまう。全体の感想としては面白かった、と言ってもいいけど物足りなさも残る作品でした。

  • 前半は面白かったけど後半はなんだか…

  • 5年ぶりの島田雅彦。無限カノン3部作に幻滅したが、これすごく面白かった。
    贋札を用いた金融テロのエンターテイメント小説。
    島田のインテリジェンス(読者がうらやむアッパーミドルやハイソサエティの細部の描写、文学や芸術や哲学に裏打ちされたアフォリズム、少し小ばかにしたくなる彼独特のナンセンスユーモアなど)と彼にしかない文体がこちらの帰巣本能をくすぐる。「ああ、これこれ」と彼の文体は読み心地がよかった。やっぱり文体を持つ作家は強い。
    そして優しいサヨクとしての立ち位置もぶれずにいて、頼もしい。金融テロ、彼岸コミューンから見据える国家体制、資本主義への批判的精神。
    島田の文体と思想。ぶれずに健在。それでいてエンターテイメント。面白い。

  • 悪くはないが、それほどのめり込むわけでもない。
    恋愛の描写が稚拙。

  • いろいろな登場人物とシーンが細かく平行して
    展開していく。
    「浮浪者が100万円を拾った」
    から始まるお金から物語がつむがれていく。
    浮浪者の一瞬の夢、強盗、キャバクラ、有機野菜の失敗、ユートピア、資本主義貨幣経済への反抗、中国、偽札・・・

    なかなかと面白かったです!

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著者プロフィール

作家

「2018年 『現代作家アーカイヴ3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島田雅彦の作品

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