- Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062170772
作品紹介・あらすじ
1945年、終戦の年。原爆投下の練習のため、模擬原爆・通称パンプキン爆弾が日本各地に49発も落とされていた事実を知っていますか?本当にあったことを、小説で読む・知る。
感想・レビュー・書評
-
ここでいう「パンプキン」とは、模擬原爆のことを指す。ずんぐりとした形状でオレンジ色に塗装されていたことから「パンプキン爆弾」と呼ばれていた。
模擬原爆については、先日読んだ橋爪紳也氏の『大阪万博の戦後史』で初めて知った。
「大阪市東住吉区に投下された」というショッキングな一文を受けて、他の内容が頭に入ってこず。その後、別途調べてみようと文献を探していたら真っ先に本書に辿り着いたのである。
大阪市東住吉区に住む小学5年生のヒロカは、東京に住むいとこのタクミが祖父の家に来ることを知る。タクミは自由研究のテーマに模擬原爆を選んでおり、その調査のため高校教師だった祖父のもとを訪ねたのだ。
頭はいいけどとっつきにくいいとこの来訪に戸惑いながらも、行動を共にするうちに地元で起きた惨劇についてヒロカは目を向けていくようになる。
ヒロカ同様、広島・長崎の原爆は知っていても模擬原爆については名前すら聞いたことがなかった。本の袖には模擬原爆とそれを伝える碑の解説が記されている。
模擬原爆には核物質は含まれておらず、投下しても核爆発は起きない。しかし長崎に投下された「ファットマン」とほぼ同じ形状をしており、重さは約5トンもあった。
本物の原爆を投下するには技術(目視で目標地点に落とす・衝撃波に巻き込まれないよう退避する等)が必要だったため、その練習用として米軍は模擬原爆を開発。1945年7月20日〜8月14日にかけて、東住吉区を含む30都市に49発が投下されたという。
「この先も、かぼちゃを見るたびに、パンプキン爆弾のことを思い出すだろう。あのコンビニに行くたびに、慰霊碑のある場所を気にして、必ず見てしまうだろう。このことを知る前の自分には、ぜったいにもう、もどれないのだ」
小学校時代、自分も広島への修学旅行前に行われた平和学習でそんな複雑な想いを味わっていた。
多感な子供時代、視覚で入ってきたものは記憶に残りやすい。寝る前には業火のような火の手と彷徨う市民達が闇の中に浮かび上がる。この恐怖を抱えたまま日々を過ごすのが辛くて、修学旅行当日を迎えてしまった。
調べ物をしに出かけた図書館で、ヒロカがタクミにばったり出会う場面がある。
タクミの本当の来阪目的が明らかになったり模擬原爆研究へのお互いの本心を打ち明けるうちに、二人の障壁は次第に取り払われていく。ヒロカの抱いていた「複雑な想い」もそこで霧消していった。
自分の修学旅行当日を思い出す。
人々が足早に通りすぎていく蝋人形前を同級生と手を繋いで順番に目に焼き付けていた。
恐怖は消えなかったけど、同じ場所で誰かと想いを共有した時に「もっと知っていこう」と前に進めるのかな、と今になって思う。ヒロカたちの心の交流を追体験しながら、自分の心はあの頃に戻っていた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
パンプキン爆弾の事はこの本が出版された時に初めて知った。自分なりに調べて、自分の田舎も被害にあっていたことを知り、もしも歴史にちょっとした違いがあったら原爆を落とされたかもしれないと知りショックを受けたことを覚えている。
今回ようやく本を読むことが出来た。子供向けだか、大人が読んでも為になる。模擬原爆の事実を知った女の子の心の変わりようが、自分と同じようであり共感出来た。また、原爆の被害者の側面だけでなく、そうなった当時の日本の状況もきちんと書かれている点も良い。
ちょうどこれからオバマ大統領が現職大統領として初めてヒロシマを訪れる。それだけで各国の思惑が渦巻くような世界情勢であるが、いつの日かこの本の最後に出てくる「長崎ちゃんぽんみたいな世界」になって欲しいと切に願う。 -
1945年、終戦の年。原爆投下の練習のため、模擬原爆・通称パンプキン爆弾が日本各地に49発も落とされていた事実を知っていますか?本当にあったことを、小説で読む・知る。
『若おかみは小学生!』を「子どもの本を読む会」で読む機会があり、令丈ヒロ子さんの本でこの本がオススメだと聞いて手に取った。いろいろなことが学べてよかった。また、主人公二人もよかった。
パンプキン爆弾:
1945年8月9日、長崎に投下された原子爆弾とほぼ同じ形状をしている爆弾。ただし核物質をつんでいないため、投下しても核爆発は起きない。爆弾の軌道や特性を調べたり、パイロットの爆弾投下の練習として、日本全国に落とされた「模擬原爆」である。その丸い形状から、「パンプキン爆弾」と呼ばれている。7月20日から8月14日にかけて、49発が投下された。p.22
パンプキン爆弾の被弾地の地図はp.50~p.53
広島、長崎の原爆の後に投下された爆弾もある。
・せっかく作ったパンプキン爆弾が、ふつうの爆弾としても使えるかのテスト
・日本が降伏しなければ、3発目の原爆を落とすつもりだったという可能性もある。
・66発爆弾はあまっていたが、海に投機された。機密保持のため。
たくみ少年の、研究への姿勢もかかれていてよい。
ひろか「なんで模擬原爆のことをあんなに詳しく調べて文にまでしているのに、それを自由研究にせえへんの?もったいないやん」
たくみ「ぼくは自分が本当のことはなんなのか知りたいだけで、人にそれを伝えたいとか思わないからな。考察文を読んでもらうのはおじいちゃんだけで十分」
自由研究ノートのつけかた:
話を聞いてすごくおどろいたところには赤をつけたり、もっと調べたいと思ったところにシールやコピーを貼る。
・被爆と被曝のちがいについて。
・物事を知る前と知った後では世界の見え方が変わること。
・原爆を落とされた日本は被害者なのか。
など、いろいろと考えさせられた。 -
《市図書館》
恥ずかしながらこの本を読むまで、模擬原爆の存在を知りませんでした。
自分の住んでいる県にも模擬原爆が落とされていたことにも、驚きを隠せません。
児童書ではありますが、模擬原爆を投下した理由などが、明確に書かれていて、子供の目線で物語が進むので読みやすく分かりやすかったです。 -
長崎ちゃんぽんのような世界に。
日本が戦時中にしたことの描写については
議論が分かれることだと思うが、
まずは知らなかったことを「知る」。
そう言う意味では意義のある本。 -
随分前に「読みたい本」リストに追加したまま忘れていたのですが、図書館で娘用の本を探している時に見かけて、タイトルに見覚えがあって借りました。
模擬爆弾(通称パンプキン)について、小5の従兄弟同士の男女が調べていくお話。
原爆投下の前に、練習として49もの模擬爆弾が投下されたということを初めて知りました。そして、原爆は日本人だけでなく、当然のことながら当時広島長崎に住んでいた外国人も被害者となり、原爆の製造過程で被曝したアメリカ人もいて、たくさんの犠牲者を出したということも、この本を読んで認識したことでした。
戦争の話だけど、分かりやすく、子供でも受け止めやすい内容なので、小4の息子にも勧めたところ読んでいました。戦争についてだけではなく、自由研究の取り組み方の参考にもなるので、高学年のうちに読むといい本だと思いました。
【メモ】
「知らないことは、こわいことだよ。だれかの言ってることが事実とちがっていても、そうなのかなあって信じてしまう。ぼくはそれがいやなんだ。」
-
多くの方が書かれているように、この本を読むまで「模擬原爆」のことを知らなかった。
大阪弁の主人公ヒロカもさっぱりしていて共感できる。
「知らないことは、こわいことだよ。だれかの言ってることが事実とちがっていても、そうなのかなあって信じてしまう。ぼくはそれがいやなんだ」
このたくみの言葉が一番心に残った。
「あのな…。いろんなことを知っていくと、結局だれが悪いのんかも、わからへんようになるな」
こうして多くの人が、自分で考えることをやめてしまうのだろう。
最近の世の中を見ていてもそう感じる日々。
-
難しいテーマだったけど、最後はきれいにまとめてあって
暗い部分をわかりやすく未来に向けて前向きに書いてあり
、読んでよかったと思える一冊。
できればもっと沢山の人に読んでほしい本。
以前読んだ風船爆弾、今回読んだパンプキン爆弾、どちらも図書館の児童書も知った。
大人ももっと読むべきなのになと残念に思う。 -
模擬原爆についてこの本で初めて知ったので、主人公と同じ立場で読むことができました。小学5年生のヒロカの戦争に対する疑問や憤りが率直で読みすすめやすいです。
-
戦争について考えるきっかけになる本でした。模擬原爆についてよくわかりました。パンプキン爆弾は長崎に落とされた「ファットマン」とそっくりの形、重さだということもわかりました。
-
模擬爆弾の話を知らず、地図のページを見て米軍がかなり一つ一つをよく考えてるなあという雰囲気があって驚いた。調べてみたいなあって思うきっかけになったからありがたい。
『どや!』ってするために原爆落としたわけじゃないし、ソ連=今のロシアって言ってたり、何を言うかよりも何を言わないかの方が大切な事もあるなって思うけれど、その『どや!』の件に関しては言葉が足りないように見えてもやもやしてしまう。
ヒロカの性格が小学生と知っていてもどうしても受け入れられない。でも勉強を好きになる道筋って皆こうだよなあって思った。無知の恐ろしさを知らない人は嫌いで、学ばないという事を自ら選択したなら良いのだけど、流されて学ぶ機会を逃している人に見えてイライラした。でも子供には勧めるのに十分良い本で、こっちの方が原爆に興味持ちやすくなるから仕方ないけれど。自分が勝手にめっちゃこういう子受け入れられなくてイライラしているだけ……。とにかく、ヒロカのように沢山の人に興味を持つきっかけとなる本なのだと思うから是非大人も読んで欲しい。また、驚いたところや疑問点をどんどん掘り下げてみて、勉強を好きになる人が増えると思うと嬉しくなる。
ずっと思っているんだけど、戦争って怖いっていうのは誰でも知ってる。でも戦争がなくならないのは個人の利益とかそんな問題じゃないし、もっと人情的に考えてもなくならない理由は沢山ある。もし戦争に何かの形で関わる時、戦争をするしかなくなっちゃう不条理な気持ちとかも調べて知っておいて、戦争に関わる中で自分の選択の幅を広げておいて欲しい。戦争やそのきっかけを悪い物って簡単に断じると、その足元を崩されるのも簡単になっちゃうのは本当に恐ろしい。 -
こんな夏休みを過ごせたらええやろなぁ。
夏の日差しと自分の興味を追うために使う時間。
大人にも欲しいな、そんな時間。 -
五年生のヒロカには、同い年のいとこがいる。
東京に住んでいるたくみだ。
たくみは調べたいことがあると言って、二週間ほどおじいちゃんの家にやってくるという。
ヒロカはたくみを駅に迎えに行ったが、もうそこにはたくみはいなかった。
おじいちゃんに電話をしてみると、
「モギゲンバクノイレイヒ」の方へ行ったという。
モギゲンバクノイレイヒ?
おじいちゃんに言われた通りの場所に石の板のようなものがあり、たくみはその板に顔を近づけていた。
ヒロカはその板に書かれた字を読み、その場所が「模擬原子爆弾投下跡地」だと初めて知る。
自分の住んでいる近くに落とされた「模擬原子爆弾」で人が亡くなったこと、その形から 別名「パンプキン爆弾」と言われていること、どんな目的でなぜ落とされたかということ… ひろかは、わざわざ東京から調べにきたというたくみに刺激を受けながら、「パンプキン爆弾」が心に引っかかり無視ができなくなって、自分でも調べていく。
4年前初めて読んだのだが、それまでパンプキン爆弾について全く知らなかった。そして、自分が住んでいる県も含め日本中に落とされていたことや残っていた爆弾は海に投棄されたことなどを知り驚いた。
そんな惨たらしいことをしたアメリカに対し、ひろかが怒りを発する場面がある。そこでたくみが日本が中国や朝鮮台湾などに行ったことや、無差別攻撃をしたことなどを伝える。とても印象に残る場面。
そういったことも子どもたちが知り、日本軍側からだけではなく多角的に考えるきっかけになればと思う。
挿絵も親しみやすく、読みやすい。
ヒロカの作った壁新聞も最後に載っていて、今のヒロカの考えも書かれていてわかりやすい。
たくさんの子たちに読んでもらえるといいなと思う。
-
犠牲者の方が"数"で個人の話がないのが残念。
-
大人が読んでも模擬原爆についてよくわかり、戦争について考えさせられる本です。
自由研究の方法についても詳しく書いてあり参考になります。夏休みの読書におすすめです。
小学校高学年くらいから。 -
模擬原爆というものをご存じだろうか。
1945年8月頃,本物の原爆を落とす前後に,日本のあちこちで,ナガサキ型原爆とほぼ同じ大きさの爆弾の投下実験が行われていたという事実を。
本書は,ある小学校5年生の少女が,地元に残る戦争の傷跡や模擬原爆について考えていくことをとおして,戦争の愚かさを考えるようになっていくドラマ仕立ての内容となっている。単に,模擬原爆の解説書ではないところが,おもしろい。
「あのな…。いろんなことを知っていくと,結局だれが悪いのんかも,わからへんようになるな。」といとこのたくみに愚痴る主人公ヒロカ。
これまで,おそらく〈善悪〉でしか判断してこなかった少女の,この一言が,戦争の愚かさを物語っています。