道化師の蝶

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062175616

作品紹介・あらすじ

無活用ラテン語で記された小説『猫の下で読むに限る』。正体不明の作家を追って、言葉は世界中を飛びまわる。帽子をすりぬける蝶が飛行機の中を舞うとき、「言葉」の網が振りかざされる。希代の多言語作家「友幸友幸」と、資産家A・A・エイブラムスの、言語をめぐって連環してゆく物語。第146回芥川賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 話としては読んでいけるのだが一体何を読まされているのかよくわからない、そんな感じ。

    松ノ枝の記はまだ少し理解できてる気がする。

    自分の読書力不足であろうか。

    伊藤計劃氏の本で度々名前を見ていた円城塔氏の本はどんなのだろうと手に取ったのだが他の本もこんなのかしら?

    それとも最初に取る本を間違えたのかしらん?

    またいつか別の本も読んでみよう

  • 読んでいる途中で思ったが、「友幸友幸」は円城塔氏本人だなと。
    言語、文字、あらゆるジャンルの文献に精通し、自身の文章の中で使いこなす様は円城氏そのものである。(円城=塔だし)

    ちなみに2009年に出版された「烏有此譚」をみると「道化師の蝶」と「松の枝の記」を随所に見る。
    短期間で引越しをくリ返すことについて。
    脚注にある、生物の性転換について。
    参照されている文献の筆者も多種多様な年代や国が網羅されている。
    人の始めの言語は音楽であった。
    など。

    「松の枝の記」には少女と祖父のが登場するが、「これはペンです」にもやはり少女と祖父が登場する。

    「道化師の蝶」と「松の枝の記」は過去の作品を意図的にブラッシュアップさせたものか、意図せずして同じテーマが繰り返されるのか。非常に気になる。

    人も、性別も、言語も、文字も、時間も変化しながら循環する。
    それを大きな流れの中で情緒的に捉えている。

    ありきたりな文章ではなく、数理的な美学、情緒でこれらを描くので美しく、また数理的な部分のみを数理的な理解がないままに読むとなにがなんだかわからない。
    「その模様(文体の幾何学的美しさとそれへの理解)は羽を閉じている間だけ現れる」。

    この作品をわからない、つまらないと感じる人は、数理的な部分のみを数理的な理解がないままに読み、それに自分で気付かないのだろう。
    小説とはこれこれの起承転結があるものという、色眼鏡を外せば、美しい道化師の模様(この作品の価値)が見えるのに。

    章ごとに不思議な変化を見せるこの作品は「正に道化師(アルルカン)」。

    まさに文学界の「道化師の蝶」。

  • 著者の円城塔氏がどう言うか知らないが、「ソフトウェア工学」のカテゴリにしてしまった。いやこれ是非ソフトウェア工学の研究者に読んで欲しいな。自分の経験してきたことと色々重なってすごく面白い。

    確かに筋は難解です。一回読んだだけでは繋がりがちゃんと追えたとは思っていない。でも所々のキーワードがいちいちソフト屋の心に引っかかってくる。網(しかも銀糸だ)、織物、無活用ラテン語…

  • 好き嫌いがはっきりするので多分絶対に他人には勧めないと思うが、個人的には非常に面白かった!もともと芥川賞は結果で、その芥川賞は意味がわかんないものが多いんだから、意味を考えると拒否反応が起きて当たり前。
    この本は螺旋的構造とかパラレルワールドとかじゃなくて、4次元的作品なので、そこを意識すれば、主体とか客体とか時系列とか関係なくなり、まさに沈没するように世界に入り込める。
    破壊と同時に創造され、誕生と同時に死が存在し、拡散しながら収縮していることが当たり前の世界を純粋に抽出すれば、世界はこのように澄み切って混濁している。もともと人間は考えてるふりをして、本当は考えてないのだ。
    文法の前に単語があり、単語の前に、文字があり、文字の前に形があり、形の前に線があり、線の前に点があり、点は想像を起源として…。世界をナノレベル、分子レベル、原子レベル、素粒子レベルを超えて、集合体無意識に向かわず、あえて殻で包まれているというところが逃げてなくて潔い。
    本を読むという私達の暗黙のルールを軽々と越え、文字を追わせることに集中させ、その裏で一つのテーマを背骨とする著者は、ある一つの芸術の域に達してしまった。初めて本を読んでデジャブを意識的に認識できた衝撃的な一冊。その衝撃は木製バットが左後頭部に事故的に当った小学生の時のような、感覚、衝撃、そして認識の永遠の一瞬以来のトリップ。

  • 表題の道化師の蝶は難解。知ったかぶりして、解釈なんて試みてはいけない。そこにある文字を追いかけて、迷宮に彷徨う感覚を楽しむのが良いと思う。絵画的な印象を受ける作品だが、計算され尽くした言葉のフラクタルを延々と見せられ、その色彩に目が離せないうちにページが終わっている。精緻な計算は、ときに芸術なのだろう。

  • ブクログで相互フォローしてる人の本棚で見つけて「おもしろい」って評判だったので、図書館で借りて読んでみた。

    なかなか好きな小説。
    表題作も良いけど、その後に載ってる小説のほうが、もっと好きだった。

    言葉そのものについて表現された小説、というか。
    形而上の小説。

    この話の元ネタは、ビットコインを創造したナゾの人物サトシ・ナカモトをめぐるミステリーだと思う。
    作者に聞きたい。
    ズバリ、そうでしょ?

    オレは小説とかあまり読まないから知らないけど、イタリアとかドイツとか、ヨーロッパで、すでに、こういう言語についての形而上学的な小説は書かれているのではないだろうか?

    日本という閉ざされた島国でこれを書けば、どこまでも観念的な、記号的な、戯れのフィクションに過ぎないとしても、様々な言語が交錯する大陸であれば、このような言語をめぐる抽象的な話は、現実的な出来事であるから。

  • 円城さんの小説を読むと、文字って美しいなと思う。日本語が、言葉が、ではなく、文字って美しいな、と。
    これはペンですでも思ったけど難解。クセが強い。石原慎太郎氏が激怒したのも少しわかる。でもこの小説は素晴らしい。とにかく美しい。行間とか、文字の繋げ方も、切り方も。すべて計算されているかのような。リズムもある。円城さんの頭の中どうなってるのだろう。未知。これは好きとか嫌いとか、ありとかなしとか無理とかではなく、面白いつまらないでもない。この世界観を理解できるか出来ないか。この空気に馴染めるか馴染めないかなのだと思う。
    わたしの感想は、この本を手にとった瞬間から読後まで美しい、に限ります。

  • 円城塔の作品は、読む者を、言葉の盲信から解き放ってくれる。

    「分かる」という不確かな現象について、それが単なる思い上がりかもしれないことをユーモラスに提示し、崩壊させる。それはときに爆笑を伴う。

    難解だと言って腹を立てる人の気持ちも分からなくはないが、それはまず作品にではなく、自身の「読む」という行為に矛先を向けてみるべきか。

    なぜなら、丸や三角や四角が、すべて異なる形状であるという公理に基づいたリアリティは、思っているほど、もう公理ではないからである。

    作中の言葉を借りるなら、「なにごとにも適した時と場所と方法があるはずであり、どこでも通用するものなどは結局中途半端な紛い物であるにすぎない」ということ。

    今作はQRコードを読み取るカメラの気持ちが少し分かるような、美しく謎めいた話だった。

    大変面白かったが、分かったかと聞かれれば、僕は半分も分からなかった。

    そして、それでいいのだと思う。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    小説世界と現実世界、現在と未来、生と死
    あらゆるものが入り混じる小説世界。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    第146回芥川賞受賞作!
    無活用ラテン語で記された小説『猫の下で読むに限る』。
    希代の多言語作家「友幸友幸」と、資産家A・A・エイブラムスの、
    言語をめぐって連環してゆく物語。
    SF、前衛、ユーモア、諧謔…すべての要素を持ちつつ、常に新しい文章の可能性を追いかけ続ける著者の新たな地平。

    ⚫︎感想
    現実と虚構が入り混じるだけでも読み進めるのが難しいのに、その上時間設定も循環していて溶け合っているため、論理的に読ませてもらえない。でもわからなすぎて読んでしまう。一つ一つの細かな設定やエピソードは着想が面白くて惹かれた。

    石原慎太郎氏は「こうした言葉の綾とりみたいなできの悪いゲームに付き合わされる読者は気の毒というよりない。」と積極的に芥川賞授与に反対し、酷評であったが、「綾とり」という言葉は、比喩的にこの小説をよく表していると思った。
    1、立体的であるところ
    2、いつ橋渡しをした糸(エピソード)が完成のために繋がっていくのかわからない
    3、かかっている糸を部分的に見てみれば、静止しているが生きている糸、活発に動いている糸もあり、また違う糸が動き出すところ

    「着想を網で捕まえる」という設定がおもしろく、また
    着想ってどこからくるんだろうか?と考えてみたら、着想って頭の中で生まれるから、現実、虚構、過去、現在、未来、矛盾、なんでもありの世界だよなぁ…と。この物語自体が「着想」そのものだと思えた。

    結局、この本を興味深く読んで、
    抽象的なことしか考えられないので、
    わからないけど最後まで読むに限る!

  • 「文字渦」が良かったので、この作品も読んでみました。
    表題作と「松ノ枝の記」の2作品が収録されています。2作では、「道化師の蝶」が視点をクルクルと変えながら、繊細なだまし絵の世界を漂っているような雰囲気が魅力的でした。「松ノ枝の記」も面白かったですが、こちらは今ひとつ作品の世界に入り込めませんでした。

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著者プロフィール

1972年北海道生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベー
スボール」で文學界新人賞受賞。『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊
藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞

「2023年 『ねこがたいやきたべちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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